腸内フローラに関する研究が始まってから100年近くの年月が経過しました。
腸内フローラに関わる新事実は年々発見されています。
腸内フローラの状態が免疫機能や心身の調子に関わるということは以前より知られていることです。
更に最近ではダイエットにも、腸内フローラが関係しているということが判明したそうです。
これは腸内フローラにあるヤセ菌とデブ菌による影響ということですが、では痩せやすくするには、具体的にどうすればよいのでしょうか。
目次
腸内フローラのバランスを整えてダイエット!
腸内フローラの中には様々な細菌が生息していますが、その中でも痩せ菌とデブ菌が存在することが近頃明らかになってきました。
痩せ菌に属するのは「バクテロイデス門」に属する腸内細菌、デブ菌に属するのは「フィルミクテス門」に属する腸内細菌です。
どちらも日和見菌の仲間ですが、人間を痩せやすくする、太りやすくするという正反対の性質があります。
ダイエットを効率よく行うためには腸内フローラのバランスをよくする必要があります。
痩せ菌を増やす、というよりは、デブ菌を減らし、腸内フローラのバランスを整えるといったほうが正しいでしょう。
デブ菌と、痩せ菌の細菌の割合はある程度、相関します。デブ菌が増えれば痩せ菌が減少し、痩せ菌が増えればデブ菌が減少するといったようにです。
太りやすい人の腸内フローラはデブ菌の割合が多く、腸内細菌の多様性が失われている傾向にあります。
まずは腸内フローラを多様性のある環境にするため、どのようなものを食べればよいか見ていきましょう!
ダイエットに◎ 痩せ菌を増やす食品とは?
痩せ菌を増やすには、低カロリーな食物繊維質が効果的です。
そのほかオリゴ糖もおすすめです。以下のような食品がこれにあたります。
- 根菜類
- 海藻類
- 大豆加工食品
- 甜菜
- 玉ねぎ
- はちみつ
痩せ菌はヘルシーな食物繊維をエネルギー源としています。
食物繊維も炭水化物の一種ですが、人間の消化酵素で分解することができないという性質を持っています。
食物繊維は通常、消化吸収ができないため腸内で便を形成し、体外に排出されます。
しかし痩せ菌は食物繊維を分解することができるため、エネルギー源として活用し増殖していきます。
太りやすい体質の人は腸内に痩せ菌が少なくなっていることが原因の場合もあります。
痩せ菌を増やすために、食物繊維やオリゴ糖をきちんと摂取するようにしましょう。
痩せ菌が作り出す短鎖脂肪酸とは
やせ菌は、食物繊維やオリゴ糖をエネルギー源にして増殖していきますが、その過程で「短鎖脂肪酸」と呼ばれる物質を生産します。
短鎖脂肪酸(酢酸や酪酸、プロピオン酸などが該当)は、人間の健康維持に役立っています。
例えば短鎖脂肪酸は腸内環境を弱酸性に傾けます。人間に有害な働きをする悪玉菌は酸性に弱いため、腸内フローラの環境を改善させる働きがあります。
さらに短鎖脂肪酸には肥満を予防するための様々な働きがあることが分かっています。
短鎖脂肪酸が腸内に増加すると脂肪細胞が肥大化するのを防いだり、エネルギー消費を促進したり、食欲を抑制して摂取カロリーを抑える働きがあります。
痩せ菌を増やすことで、腸内に短鎖脂肪酸を増やすことができます。
これはNG デブ菌を増やす食品とは?
脂質や糖質はデブ菌のエネルギー源と言えます。
砂糖や油脂がたっぷり入った食べ物はデブ菌を増やしてしまう原因となります。
以下のような食品がこれにあたります。
- ドーナツ
- ケーキ
- カフェラテ
- 菓子パン
- ハンバーガー
デブ菌の好物はスイーツやファーストフードなどです。
脂質や糖質は摂取してもすべてが吸収されるわけではありません。ある程度は消化されず便として体外に排出されます。
しかし腸内にデブ菌が多いと腸内の脂質や糖質をより分解し、人間が吸収できる形に代謝してしまいます。
その結果、吸収されるエネルギー量も増加し、太りやすくなってしまいます。
ダイエットを効率的に行うためにも、デブ菌のもとになる糖質や脂質の摂取は控えるようにしましょう。
痩せやすい腸内フローラのバランスにする方法
痩せやすい腸内フローラバランスを作るためには、痩せ菌を増やす、デブ菌を減らす、痩せ菌が作り出す短鎖脂肪酸を増やす、の3つが大切です。
サプリメント
サプリメントを摂取するときは乳酸菌やビフィズス菌だけではなく、痩せ菌を増やす食物繊維やオリゴ糖が含まれている点にも注目してみましょう。
食物繊維やオリゴ糖は短鎖脂肪酸を増やすのにも効果的です。
食生活
痩せ菌は高繊維質を好みます。反対にデブ菌は高カロリーな食生活を好みます。
この2つの細菌群のバランスを整えるためには低カロリーで繊維質の多い食生活が必要です。
野菜類や根菜類、海藻類、大豆加工食品などの食物繊維が豊富でヘルシーな食材を多く摂り入れるようにしましょう。
- レンコンとひじきの煮物
- 鶏肉とゴボウのあっさり煮
- 玉ねぎと大豆水煮の豆カレー
などが繊維質を豊富に取れるメニューの一例です。
「高繊維質」の食生活は、短鎖脂肪酸を増やすためにも効果的です。
更に、はちみつや甜菜、玉ねぎといったオリゴ糖が含まれた食品も短鎖脂肪酸を増やすために有効です。
運動
適度な運動を行うことによって、便の中に含まれる短鎖脂肪酸の量が増えることが分かっています。
このことから運動にはエネルギーを消費するだけではなく、腸内フローラのバランスを改善してくれるので、ダイエットをより効率的にしてくれます。
運動をする習慣のない人は1日30分程度の運動習慣をつけるようにしましょう。
禁煙には注意
禁煙は健康にとってよい効果をもたらします。できれば積極的に禁煙したいですが、肥満という観点からは注意が必要です。
禁煙後には腸内フローラのバランスが崩れ、デブ菌が増えるということが分かっています。
そのため禁煙後にはエネルギーの吸収効率が高まり、太りやすくなります。
禁煙は体にはよいことですが、腸内フローラの変化により太ってしまわないように注意が必要です。
禁煙をしてから腸内フローラのバランスが整うまでの3か月から半年程度は、普段より摂取カロリーを抑えたり、運動量を増やしたりするようにしましょう。
期間
腸内フローラのバランスはすぐには変わりません。
たとえ一時的に腸によい習慣を身に着けても、すぐに以前の習慣に戻してしまったら、腸内フローラも元に戻ってしまいます。
食生活や運動、サプリメントなど腸によい習慣を最低3か月は続けるようにしましょう。
3か月経過したからと言って、そこで終了にしてしまうのではなく。
1年2年と腸によい習慣を続けられるようにしましょう。
まとめ
腸内フローラが改善し、痩せ菌とデブ菌のバランスが整うと短鎖脂肪酸が増加し、ダイエットに成功しやすくなるようです。
痩せ菌を増やし腸内フローラのバランスを改善するためには、低カロリーで食物繊維やオリゴ糖が多い食生活が重要になります。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。