脳と腸の関係「脳腸相関」 腸内フローラと食欲ホルモンの相互作用とは

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脳腸相関腸は別名、第二の脳とも言われています。独自の神経系を持ち、脳と密接に関わるこの関係を「脳腸相関」と呼びます。

脳のストレスが原因で過敏性腸症候
群が引き起こされるように、脳と腸はお互いに影響を与え合っています。

今回は、腸内フローラが脳に及ぼす影響のうち、食欲に関して見ていきましょう。

食欲に関わるホルモン

食欲食欲は人体の様々な機能が複雑に絡み合い、調節されています。

胃や腸といった消化器、視床下部や副腎から分泌されるホルモン、自律神経や脳、これらすべてが食欲に関わっています。

特に、視床下部や副腎から分泌されるホルモンは食欲を亢進させたり、抑制させたりする機能があります。

食欲に関わるホルモンには以下のようなものがあります。

セロトニン

セロトニンが食欲に関わるということは1960年代から判明していました。抗セロトニン作用を持つ薬を投与されたマウスは、食欲が亢進し、反対にセロトニンの体内合成の原料であるトリプトファンを摂取させると食欲が抑制されたためです。

また人間においても、うつ病の治療薬として使用されるSSRIを服用することで、食事の摂食量が低下することが分かっています

一般的に、脳や精神への働きが知られているセロトニンですが、脳にある時は神経伝達物質として、幸福感や充足感、安心感にも関り、精神を落ち着かせる作用があります。

体内にあるセロトニンの9割近くが、実は消化管、特に腸に存在し、ホルモンとして働いています。

オキシトン

幸福感別名、「幸せホルモン」や、「愛情ホルモン」とも呼ばれる物質です。

人間関係の中での感謝や愛情、共感などを受けると体内で増加すると考えられており、セロトニンと同様に精神を安定させ、幸福感を増加させる働きがあります。

オキシトンには、食欲を抑制して、肥満を防ぐ作用があることが確認されました

オキシトンを、肥満になりやすいよう操作をしたマウスに投与した結果、過食を抑制して肥満が改善されるという結果が出ています。このことからオキシトンを末梢投与することで、満腹感を促し肥満を改善できることが示唆されています。

レプチン

レプチンは、脂肪細胞から作り出されるホルモンです。

非常に強い飽食シグナルを発し、食欲を抑制する働きがあります

また、食べすぎを抑えるだけでなく、エネルギー消費を亢進させ痩せやすい状況を作り出す作用もあります。

肥満体型の人はレプチンの抵抗性が上昇してしまいます。通常の体型の人に比べてレプチンに反応しづらくなってしまうため、意識しないと過食が続いてしまう結果になってしまいます。

コレシストキニン

コレシストキニンは、小腸を中心とした消化管に、幅広く存在するホルモンの一つです。

食欲を抑制する作用があります。ある一定の食事量を摂取した際、もしくは一定の食事時間を超えると、満腹感を感じやすくする作用があると考えられています

マウスの実験では外因的にコレシストキニンを投与したマウスは食欲が抑制されたことが判明し、人間においても静脈注射で投与したところエネルギー摂取が19%低下したとされています。

参考書籍:臨床栄養 第128巻第6号 臨時増刊 脳腸相関 各種メディエーター、
腸内フローラから食品の機能性まで P787-788

コレシストキニンには、膵液(すいえき)や胆汁の分泌を促進させ、脂質やタンパク質などの消化を助ける働きもあります。

腸内フローラの変化で食欲ホルモンが変化するメカニズム

脳に存在するセロトニン食欲の抑制には、「セロトニン」が脳へ十分に補給されていることが大切です。

脳に存在するセロトニンは、全体のたった2%です。90%は腸に分布し、残りの8%は血液中に存在しています。

通常、腸で合成されたセロトニンは、「脳血管関門」と呼ばれる脳の関所を通過することができません。

しかし腸内細菌によってセロトニンの前駆物質である5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)が作られ、これは「脳血管関門」を通ることができます。脳へ運搬されたのち、セロトニンに変化します。

5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)の合成には、腸内細菌そのものや、腸内細菌が作り出すビタミン群が重要です。腸内フローラを、よい状態に保つことで、5-HTPを合成しやすくなり、セロトニンが脳へ十分に供給され、食欲を抑制することができると考えられています。

セロトニンが十分に合成されると、オキシトンの分泌量も増加します。

更に、セロトニンやオキシトンの作用により、腸の活動が活発になり、小腸で生産されるコレシストキニンの分泌量も増加します。

同時に腸内フローラがよい状態に保たれることで、腸内細菌による短鎖脂肪酸の生産量も増加し、脂肪細胞へのエネルギーの取り込みが低下することでレプチンの抵抗性も下がります。

このように腸内フローラを改善することで、腸の働きだけではなく、脳に影響を及ぼすホルモンも活発に働くようになります。食欲を抑えたいときはまず、腸内フローラの改善を目指すとよいでしょう。

腸内フローラと食欲Q&A

満腹中枢を刺激するためにゆっくり食べる、というのは腸内フローラや食欲と関係はあるのでしょうか?

残念ながらゆっくりと食べること自体は、腸内フローラとは、ほとんど関係がありません。ただし食欲を抑える働きがあるコレシストキニンというホルモンは食事時間によっても分泌されるため、ゆっくりと食べるとその分満腹を感じやすくなります。

ゴボウや豆類など、食物繊維の多い噛みごたえのある食べ物を、何回も咀嚼するようにして食事をするとゆっくりと食べられるため食欲の抑制に効果的でしょう。また食物繊維を細かくすることで腸内細菌が利用しやすくし、腸内フローラを整えるのにも効果があります。

食欲が落ちすぎてしまうことはないでしょうか?

食欲ホルモンは「適切な栄養摂取、エネルギー摂取」に対して満腹感を生じさせます。そのため栄養素やエネルギーが不足した状態で、すぐに満腹になってしまうようなことは考えづらいです。

生まれ持っての体質としてあまり食事の量を食べられないということはあるかもしれませんが、腸内フローラの改善や食欲を抑制するホルモンの影響で健康を害するほど食欲が落ちることはまずないと思います。

まとめ

食欲腸内フローラの状態は、様々なホルモンの分泌に関わります。

特に精神の安定や食欲の抑制に関わるセロトニンの合成には深くかかわっており、食欲を抑制して肥満を解消するために重要なファクターとなります。

セロトニンは同じく食欲の抑制に関わるオキシトンの分泌を増やし、腸を活発にすることでレプチンやコレシストキニンなどのホルモンの合成量も増やします。

腸内フローラをよい状態に保つことは、食欲を抑え、適切な体重を保つために有効です。肥満で悩んでいる人は、まず乳酸菌や、ヨーグルト、発酵食品などの摂取から始めてみるのもよいでしょう。



【執筆者】大見 貴秀医師

大見貴秀医師帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。

「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。

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