女性ホルモンは生理や妊娠に影響を及ぼすだけではなく、女性の心身の健康にとても大きな影響を与えます。
分かりやすい例で言えばPMS(月経前症候群)があります。これは生理前に女性ホルモンのバランスが変化し、心身に様々な不調を与える病気です。
女性ホルモンは更年期を過ぎるころから極端に減少します。その急激な変化は思いもよらぬ症状を引き起こします。
女性ホルモンの減少に役に立つとされるエクオール、いったいどのような成分なのでしょうか。また腸内で作られるエクオールを増やすことはできるのでしょうか。
目次
エクオールとは何か、イソフラボンとの違い、女性ホルモンとの関係
女性の美と健康に嬉しいエクオール、これはどのような成分なのでしょうか?まずエクオールについて説明する前に、イソフラボンについて説明する必要があります。
イソフラボンとは
イソフラボンは大豆に含まれているフラボノイド(ポリフェノールの一種)です。大豆にはもちろん、豆腐、みそ、納豆、しょうゆなど大豆を加工した食品にも豊富に含まれています。
大豆イソフラボンは、女性ホルモンであるエストロゲンと非常によく似た構造をしています。
そのため、イソフラボンを十分に摂取すると、女性ホルモンの働きを助けてPMSや更年期障害の症状を軽減したり、肌をキレイにしたり、生活習慣病を予防したりする働きがあります。
イソフラボンとエクオール
イソフラボンにはいくつか種類がありますが、そのうちのダイゼインという物質がエクオールに深く関わります。
このダイゼインは人間の腸内細菌の働きにより、エクオールへと変化します。
エクオールを作れる人と作れない人
腸内でダイゼインというイソフラボンから合成されるエクオールですが、実は誰の腸内でも作れるというわけではありません。
エクオールを合成できる腸内細菌を持っていなければ合成することが出来ず、この細菌を持っているのは人口の3割から5割とも言われています。
ダイゼインは通常、腸で吸収され女性ホルモン様作用を示すので、エクオールが合成されないからと言って無駄になるものではありません。
ただしエクオールはダイゼインを初めとするイソフラボンよりも、女性ホルモンに似た作用(女性ホルモン様作用)が強く、女性の美と健康に有効に働きます。
エクオールと腸内フローラの関係
それでは腸内でエクオールを作ることが出来ない人でも、腸内環境を改善することで、作れるようになるのでしょうか。
エクオールを生産する菌は10数種類報告されていますが、残念ながら、現段階ではエクオールを生産する能力のない人を生産できるようにする方法はありません。
エクオールと腸内環境の関係は研究段階
エクオールは研究が始まったばかりの物質で、まだまだ未知のことが多い物質です。
エクオールを生産する能力(エクオール生産菌の有無)は食生活によって左右されるという想定がされています。
例えばエクオールを生産する能力を持つ人は欧米圏よりもアジア圏に多いとされています。
これは炭水化物(食物繊維含む)や緑茶、魚油の摂取量と正の相関関係があると報告されています。
ただし残念ながら比較的炭水化物を多く食べ、緑茶や魚の摂取量が多い日本人でもエクオールを生産できる人は3割から5割とされています。
特に近年、食生活が伝統的な日本のものから欧米風のものに変わったことによって、エクオールを生産できる人の割合も少なくなっています。
あくまでラットの実験ですが、イソフラボンのみを摂取させた群とイソフラボンとオリゴ糖を摂取させた群では後者のほうが血中のエクオール濃度が高いという試験結果があります。
腸内フローラがいい状態ならばエクオールも生産されやすくなることは間違いないですが、それでも、もともとエクオールの生産菌が腸内にいない人が生産菌を腸に定着させることは非常に困難です。
エクオールの検査キット
自分がエクオールを生産できるかどうか知るには、検査キットを使う方法が有効です。
郵送キットで調べることもできますし、不安な人はエクオール検査を実施している医療機関で調べてもらうことも可能です。
エクオールを生産できない体質(腸内フローラ)だからといって、悩む必要はありません。エクオールサプリメントを摂取することで、エクオールの恩恵を十分に受けることができます。
そして腸内環境は、エクオールの生産以外の部分でも健康に大きく影響します。日頃からよい腸内フローラを維持できる食事を意識してみましょう。
イソフラボンやエクオールの働きとは
イソフラボンもエクオールもどちらも女性ホルモン様作用を示す物質です。その働きは効果の強弱はあれど、ほぼ同じです。
ここではイソフラボン・エクオールに共通する女性ホルモン様作用について解説します。
女性ホルモン様作用①ホルモンバランスの改善
女性は更年期に近づくにつれエストロゲンの分泌量が減少します。その後、更年期になると極端に分泌量が減少し、更年期障害が現れ始めます。
更年期障害による症状は非常に様々ですが、代表的な症状として顔のほてりや発汗、動悸、冷え、イライラ、不安、躁鬱などが挙げられます。
女性ホルモン様作用を持つイソフラボンやエクオールを摂取すると、減少したエストロゲンを補うことができます。そのため更年期障害で生じる様々な症状を軽減することができます。
女性ホルモン様作用②アンチエイジング効果
エストロゲンには女性らしさを作る働きもあります。肌のハリツヤを保ったり、黒々とした髪を維持したり、精神的な元気を保ったりと若々しさを維持するための様々な働きがあります。
エストロゲンが減少すると徐々にこうした女性らしさも失われていきますが、イソフラボンやエクオールを摂取してエストロゲンの働きを補えば若さを保つことができます。
特にエストロゲンの不足により、肌の弾力や潤いを維持するコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンといった物質が不足しシワやたるみの原因となります。
肌の調子が気になる人にもおすすめです。
女性ホルモン様作用③生活習慣病予防効果
女性は更年期になると中性脂肪値やLDLコレステロール値など、脂質代謝が悪くなる傾向にあります。
これは脂質代謝を活性化させるエストロゲンの分泌量が減少するためです。
そのため更年期以降の女性は動脈硬化や動脈硬化性疾患である心筋梗塞や脳梗塞などの病気の発症率が上昇します。
イソフラボンやエクオールでエストロゲンの働きを補えば、脂質代謝にもよい影響を及ぼし生活習慣病や心筋梗塞な脳梗塞などの病気を予防することができます。
女性ホルモン様作用④骨粗しょう症予防効果
骨は破骨細胞と骨芽細胞がバランスを取って働いています。古くなった骨は破骨細胞によって壊され、骨芽細胞によって破壊された骨が新しく生まれ変わります。
エストロゲンは破骨細胞の働きを抑制する働きがありますが、更年期以降にエストロゲン分泌量が少なくなると骨量が低下していってしまいます。そのため、更年期以降の女性は骨粗鬆症になりやすくなっています。
イソフラボンやエクオールでエストロゲンの働きを助ければ、骨量の減少を軽減することができます。
まとめ
エクオールはイソフラボンから腸内で作られる物質です。イソフラボンよりも女性ホルモン様作用が強く、女性特有の悩みを解消するのに効果的です。
ただしエクオールを作れるかどうかは個人差があり、日本人でもおよそ3割から5割の人しか作れないとされています。
自分がエクオールを作れるかどうかは検査キットや検査を実施している医療機関で知ることができます。
エクオールが生産できればもちろんよいですし、もし生産できなかったとしてもサプリメントで補うことができるので過度な心配はいりません。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。