循環器疾患も予防できる?腸内環境と動脈硬化の関係

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動脈硬化動脈硬化という病態をご存知でしょうか。加齢や生活習慣などの因子により、徐々に血管が硬くなり、詰まっていってしまう状態のことを指します。 動脈硬化には自覚症状がありません。

動脈硬化は心疾患などの致命的な疾患のリスクを高めます。動脈硬化が進行する一番の要因は生活習慣。例えば食べすぎ、飲みすぎ、喫煙、運動不足などにより動脈硬化は進行してしまいます。

もちろん生活習慣を改善させれば、動脈硬化も改善させることができます。しかし近年、腸内フローラの状態も脂質代謝に関わり、動脈硬化のリスクに影響を及ぼすことが分かってきました。

日本人に動脈硬化が増えた理由

塩日本人はもともと塩分を多く摂取する食生活を送っていました。醤油や味噌といった調味料、魚の味付け、漬けものなど伝統的に食べられてきた食事を見ると塩分が多いものばかりです。

塩分を多く摂取すると、高血圧になりやすくなり、高血圧は心疾患や脳血管疾患のリスクを高めます。

もともと塩分を多く摂取する傾向にあった食生活に加えて、近代化が進むにつれて食事も欧米の影響を受けるようになってきました。

塩分に加えて脂質やタンパク質を多く摂取するようになり、高血圧に加えて脂質異常症(高トリグリセリド血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)なども多く発症するようになり、加えて肥満も増加しました。

内臓脂肪に加えて脂質異常症、高血圧、高血糖が加わったメタボリックシンドロームの状態の人が増え、動脈硬化が大きな問題となっています。動脈硬化に自覚症状はありません。

しかし知らず知らずのうちに、動脈が狭くなり硬くなり、最終的に心疾患や脳血管疾患に発展してしまいます。

動脈硬化と腸内フローラの関係

栄養素や水分を吸収するだけと思われがちな腸。なぜ腸が動脈硬化を改善する働きをするのでしょうか?

TMAとTMAO

動脈硬化と腸内フローラの関係腸内フローラと動脈硬化を結びつけるのは「TMA」と「TMAO」です。

まず肉類や乳製品、卵などに多く含まれるコリンという物質が、腸内細菌の働きで代謝され「TMA(トリメチルアミンN)」になます。TMAはさらに代謝され「TMAO(トリメチルアミン-N-オキシド)」に変化します。

TMAOは動脈硬化を進行させ、血管内壁を狭くして心疾患や脳血管疾患のリスクを高めるとされています。マウスでの実験ですが、エサにコリンを添加することでアテローム性動脈硬化が進行することが確認されています。

またコリンを添加したエサを与えても、抗生物質により腸内細菌を取り除いておくとアテローム性動脈硬化が進行しないとも確認されています。

このことからTMA及びTMAOは動脈硬化を進行させると考えられています。同時にコリンをTMAに代謝してしまう腸内細菌も動脈硬化に大きく関わっていると考えられています。

動脈硬化を予防するための腸内改善

どの種類の菌がTMAやTMAOを作り出してしまうのか、それはいまだに明らかになっていません。しかし腸内フローラを改善することが動脈硬化発症リスクを低減することが示唆されています。


腸内環境改善によりアテローム性動脈硬化症の発症リスクを低減する可能性~ビフィズス菌「LKM512」により糞便中のトリメチルアミン(※TMA)の濃度の低減を確認~


協同乳業株式会社
協同乳業株式会社と京都府立大学の研究で、LDLコレステロール値が正常値と高値の境界にいる男性に対してプラセボ群とビフィズス菌LKM512株を投与群に分けて様々な調査を行いました。その結果、以下のような結果となったと発表されています。

  • 動脈硬化の発症、進行リスクとなるTMAの糞便濃度がプラセボ群に比べて投与群のほうが優位に低かった
  • プラセボ群に対して投与群のほうがTMA生産菌が属する菌種の生存率が優位に低かった
  • 血清TNF-αの値(アテローム性動脈硬化治療の指針)が試験前に比べて優位に低くなった
  • 動脈硬化のリスクとなる肥満に関わるデブ菌(フィルミクテス門の菌)と痩せ菌(バクテロイデス門の菌)の比率が、痩身型の比率に近づいた
  • BMI値が投与群のほうが優位に減少した

このことから腸内フローラの改善がTMA・TMAOの生産に何らかの影響を及ぼし、動脈硬化を予防する作用があることが期待されます。

動脈硬化を予防するといっても、その方法は通常の腸内フローラの改善方法と変わりありません。

食事による腸内フローラ改善方法

発酵食品まず食生活の中で取り入れたいのが発酵食品です。ぬか漬けやピクルス、ヨーグルトなどの発酵食品には豊富な乳酸菌が含まれており、腸内の善玉菌の働きを助けます。

続いて食物繊維をたっぷりと摂取すること。食物繊維は野菜や根菜、海藻などに豊富に含まれています。食物繊維は腸内の善玉菌のエネルギー源となり、腸内フローラを善玉菌が優位な環境にしやすくしてくれます。

それだけではなく、食事に含まれる余計な脂質を吸着し体外に排出させる作用もあるため、あらゆる生活習慣病のリスクを高める肥満の改善にも効果的です。

ビフィズス菌を摂取することも有効です。ビフィズス菌は株によって様々な作用がありますが、どれにも共通して腸内フローラの改善作用があります。

ただしビフィズス菌は通常の食品にはほとんど含まれていません。サプリメントやビフィズス菌が添加された食品を摂取する必要があります。

オリゴ糖を摂るという方法もあります。糖の一種であるオリゴ糖は、腸内で善玉菌のエネルギー源となる作用が高く、善玉菌を増やす効果がとても高いです。

即効性の高い腸内フローラ改善方法なので、市販のオリゴ糖顆粒やシロップをお茶やヨーグルトなどに混ぜて食べることを習慣化するとよいでしょう。

腸内フローラだけ気を付けていればいい?

残念ながら腸内フローラをよい状態に保つと、動脈硬化を予防したり改善したりする効果が期待できそうということはわかりましたね。

それでは腸内フローラだけ気を付けておけばよいのでしょうか?残念ながら腸内フローラだけ整えておけばよい、というわけにはいきません。

近年、腸内細菌群と動脈硬化の関係性がどんどん明らかになり研究が進められています。しかし現段階ではあくまで腸内フローラの改善による動脈硬化の予防・改善は副次的なもの。それだけで動脈硬化を予防できるものではありません。

肥満や血中脂質の数値が気になる場合、家族に脂質異常症や糖尿病、高血圧の人がいる場合、家族に心筋梗塞な脳梗塞などの循環器疾患の既往がある人がいる場合、など動脈硬化のリスクが高い場合はきちんと生活習慣を改善することが重要です。

加えて、腸内フローラの改善も意識できるとベストですね。

動脈硬化予防のための生活習慣改善

日常生活の中で動脈硬化を予防したいならば、以下のポイントに注意して生活を送りましょう。

  • 1日の歩数を多くする(目標1万歩)
  • 塩分は1日に男性で8g未満、女性で7g未満
  • 主食のお代わり、大盛りはやめること。できれば少なめ。
  • 脂質の摂取量は1日で男性で50g、女性で40gほどにすること
  • 噛み応えのあるものを食べて満腹中枢を刺激すること
  • 喫煙をしているならば禁煙をする

動脈硬化は自覚症状がないため、知らないうちに症状が進行し、気が付いたときには致命的な疾患を引き起こすことがあります。

そうならないためにも日々の生活習慣と腸内フローラを意識しましょう。

まとめ

ウォーキング近年、動脈硬化と腸内フローラの関係が判明し急激に研究が進展しました。

これは肉類などに含まれるコリンを腸内細菌がTMA、TMAOに代謝することで動脈硬化を引き起こし、症状を進行させるためです。

そして腸内フローラを改善すれば、TMA・TMAOの生産量が減少するということも分かってきています。動腸内フローラを改善することは、脈硬化の予防に効果的であると言えそうです。

とはいえ、動脈硬化を発症させる一番の要因は生活習慣です。腸内フローラのみ気にしていればよいということはありません。日ごろの生活習慣を改めつつ、腸内フローラの状態も良くするように心がけましょう。



【執筆者】大見 貴秀医師

大見貴秀医師帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。

「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。

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