亜麻仁油とは
亜麻仁油はブラックシードオイルとも呼ばれ、アマ科の亜麻の種から抽出される油です。中央アジアが原産であり、カナダやアメリカでも栽培されています。
亜麻仁油にはオメガ3脂肪酸が含まれ、血管の健康の維持,脳細胞の活性,炎症抑制作用,うつ症状の緩和,肌の健康維持などに効果が高く、生活習慣病の予防と美容の目的として、人気が高まっている油です。
目次
よく似たものに「えごま油」がありますが、組成は下記のように異なっています。
亜麻仁油の歴史
亜麻仁油はアマ科の一年草であり、中央アジアを原産としています。紀元前3000年~2000年頃より、古代エジプトで栽培されていました。
日本には1600年代に中国から、薬用油として伝わり、明治に入ってから、採繊技術が発達すると、北海道で亜麻の栽培が始まりました。亜麻の繊維は柔らかく、通気性と吸収性に富み、リネン製品や高級な衣類に使用されています。
効果・効能
亜麻仁油の効果、効能は以下の通りです。
- 血管の健康を保つ
- 脳細胞の活性化
- 炎症抑制作用
- 脂質代謝改善効果
- DHA・EPA濃度の上昇
- 精神疾患の改善
- 美容・アンチエイジング
作用メカニズム
亜麻仁油の作用メカニズムは以下です。
亜麻仁油と血管の健康維持のメカニズム
亜麻仁油を構成するオメガ3脂肪酸には血管を保護する働きがあり、血液の流れの改善につながります。中性脂肪や悪玉コレステロールの増加で血流が悪くなると、血管壁に負荷がかかりますが、オメガ3脂肪酸はその負荷を緩和し、動脈硬化や高血圧などの生活習慣病の予防に役立ちます。
細胞膜はリン脂質が二つ向かい合った2重の構造を構成します。オメガ3とオメガ6の脂肪酸はそれぞれリン脂質の材料となります。
- オメガ3脂肪酸:亜麻仁油やえごま油の主成分
- オメガ6脂肪酸:コーン油,ひまわり油,紅花油,大豆油の主成分
リン脂質からホルモン様物質が作られ、肝臓で中性脂肪の合成にかかわる遺伝子の発現が抑制されます。オメガ3とオメガ6の摂取バランスを整えることがリン脂質を安定させ、血流改善につながります。オメガ3脂肪酸:オメガ6脂肪酸摂取の理想バランスは、1:4です。
亜麻仁油と脳細胞の活性化のメカニズム
亜麻仁油に含まれる脂肪酸、α-リノレン酸は体内でDHA・EPAに変化します。DHA・EPAは青魚に多く含まれるオメガ3系の脂肪酸です。脳内の神経細胞に働きかけ、脳細胞を活性させます。学習能力や記憶力、集中力の強化につながります。
飽和脂肪酸 | ステアリン酸など(肉,バターなどに含まれる) | |
---|---|---|
不飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸 | オメガ9(オレイン酸)(オリーブ油,キャノーラ油,紅花油などに含まれる) |
多価不飽和脂肪酸(必須脂肪酸) | オメガ6(リノール酸)(大豆油,コーン油,ひまわり油などに含まれる) | |
オメガ3(α-リノレン酸)(青魚,亜麻仁油,えごま油などに含まれる) |
亜麻仁炎症作用抑制のメカニズム
亜麻仁油に含まれるα-リノレン酸は炎症を抑えて、免疫機能を改善する働きがあります。ウィルスなど外敵が体内に入ると、体内の免疫機能が活性し、炎症がおこります。
炎症がおこる流れ
免疫機能発動
↓
免疫細胞(リンパ球)からサイトカインが分泌
↓
炎症性サイトカインが炎症を促す
↓
免疫細胞(マクロファージ)が集まる
↓
炎症が起きる
オメガ3脂肪酸は過剰に分泌される炎症性サイトカインを抑制し、アレルギー症状の改善に役立ちます。一方、オメガ6脂肪酸はオメガ3脂肪酸と拮抗して作用し、炎症性サイトカインを促進します。オメガ3脂肪酸はオメガ6脂肪酸の作用を抑えて、炎症症状を緩和します。
オメガ3脂肪酸は過剰に分泌される炎症性サイトカインを抑制し、アレルギー症状の改善に役立ちます。一方、オメガ6脂肪酸はオメガ3脂肪酸と拮抗して作用し、炎症性サイトカインを促進します。オメガ3脂肪酸はオメガ6脂肪酸の作用を抑えて、炎症症状を緩和します。
オメガ3脂肪酸
体内では合成できず、食事から摂取しなければいけない必須脂肪酸です。青魚,亜麻仁油,えごま油,などに含まれます。現代の日本人の食生活では不足気味です。
オメガ6脂肪酸
体内では合成できず、食事から摂取しなければいけない必須脂肪酸です。しかし、現在の日本人の食生活では摂りすぎのため、減らしていきたい脂肪酸です。 コーン油,ひまわり油,大豆油,米ぬか油などに含まれます。
科学的データや報告

18 匹のウィスターラットの新生児における、アマニ食からのオメガ‐3 脂肪酸の脳の発達への影響を評価した研究において、アマニ食を摂取させた親から生まれたラットでは、脳の重量および体に占める脳の重量比率が、共に有意に増加したことが確認されました。妊娠期におけるアマニを基にした食事の利用は、新生児ラットの脳におけるオメガ‐3脂肪酸の取り込みに影響を与え、より良い脳の発達に貢献することが示唆されました。

女性に、α- リノレン酸とリノール酸を主要成分とするアマニ油を、1日2.2g 、12週間摂取させたところ、
- 血漿中の総脂肪酸に対するα‐リノレン酸の量が6 週目と12 週目に有意に増加しました。
- ニコチン酸により皮膚に刺激を与えて皮膚の赤発の変化と血流を観察すると、0週と比べて赤発が縮小し、血流の低下が認められました。
- 6週間の補充後に経表皮水分喪失が約10%減少しました。
- 生体皮膚の表面評価において0週と12週目を比較すると、肌荒れや皮膚の薄片が有意に減少したことが認められました。
このことにより、アマニ油の摂取により肌質の改善が期待出来ることが示唆されました。

様々な脂肪酸組成を有する食用油を含む特殊餌で飼育したマウスでのアレルギー症状を検証し、亜麻仁油を摂取した後、体内で増加する抗アレルギー性物質を同定しました。結果、通常の餌に用いられる大豆油の代わりに亜麻仁油を用いた餌で飼育したマウスにおいては、アレルギー性下痢の発症が抑制されることを見いだしました。

23人の高コレステロール血症患者における研究において、α‐リノレン酸(ALA)は、その脂質低下の効果以上に、血管炎症を抑制することと内皮機能を活性化することにより、心血管疾患(CVD)のリスクを低減させることが示唆されました。
亜麻仁油の摂取がおすすめの人
亜麻仁油の摂取は血管をきれいにし、血液の流れを改善する効果を示します。以下のような人におすすめです。
血管の健康を保ちたい人
血液の流れが悪化すると、血管壁に負荷がかかり、動脈硬化や高血圧、それがさらに悪化すると脳梗塞や心筋梗塞など重度の症状を引き起こす要因となります。オメガ3脂肪酸は血管内の中性脂肪や悪玉コレステロールを減らし、血管壁への酸素や栄養の取り込みを円滑に進めます。また、血管壁に蓄積する悪玉コレステロールもとりのぞき、血液の流れを改善する働きがあります。
アレルギー症状に困っている人
現代の日本の食生活ではオメガ6脂肪酸を多くとりがちです。オメガ6脂肪酸はコーン油,ひまわり油,大豆油,米ぬか油などに含まれ、加工食品に多く使われています。オメガ6脂肪酸の摂りすぎは炎症を促進する作用があり、一方、オメガ3脂肪酸はこの炎症を抑制し、拮抗的に働いています。アレルギー症状に困っている人は、普段の食事に使う油をオメガ6脂肪酸からオメガ3脂肪酸にかえてみましょう。
肌の衰えが気になる人
α- リノレン酸とリノール酸を主要成分とする亜麻仁油の摂取を続けていると、肌荒れや皮膚の薄片が減少し、肌荒れの改善に有効的と考えられています。肌の水分量が増え、肌に潤いや張りの改善につながります。
亜麻仁油・オメガ3脂肪酸の摂り方
亜麻仁油・オメガ3脂肪酸の摂り方をご紹介します。
亜麻仁油・オメガ3脂肪酸の摂取目安量と摂り方
亜麻仁油としての摂り方
1日小さじ1程度を生のままで摂ると高い効能が得られます。亜麻仁油は熱,空気,光に弱く、揚げ物の高温調理には向きません。低温での調理に利用したり、サラダのドレッシング、野菜ジュースにプラスしたりする摂り方がおすすめです。
サプリとしての摂り方
α-リノレン酸は体内でDHA・EPAに変換されますが、α-リノレン酸は熱,空気,光に弱く、劣化の早い脂肪酸です。そのため、オメガ3脂肪酸の効能を効率よく得るには、「亜麻仁油」主体のサプリメントより、「DHA・EPA」主体のサプリメントを利用することをおすすめします。1日あたりオメガ3脂肪酸の摂取目安量は、成人男性2.1g、成人女性1.6gと示されています。(2015年版 n-3系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)より)
亜麻仁油・オメガ3脂肪酸の摂取期間
オメガ3脂肪酸は体内で合成されず、食事から摂取する必要のある必須脂肪酸です。健康と美容には継続して摂ることが大切です。
効果的なタイミング・時間帯、回数
栄養素の吸収は一緒に食べる食品の栄養素と相乗的に働いて、その機能が作用します。亜麻仁油・オメガ3脂肪酸は食事と一緒に摂るとよいです。油脂は吸収が早く、摂る時間帯はいつでも良いです。しかし、体の酸化や体内の炎症は日中に活性するため、日中の活動している間に摂る方がおすすめです。
亜麻仁油・オメガ3脂肪酸の注意点
亜麻仁油は他の種類の油と同様に、1gで9kcalです。健康に良い油ですが、決してカロリーは低くはありませんので、摂りすぎには注意してください。亜麻仁油は熱、空気,光に弱く、劣化しやすいため、開封後は冷蔵保存し、早めに使い切りましょう。保存容器は光にふれない遮光ビンの方が劣化を防げます。
オメガ3脂肪酸サプリメントの選び方
オメガ3脂肪酸サプリメントの選び方をご紹介します。
ポイント1:品質
オメガ3脂肪酸は劣化しやすいため、品質に信頼のおけるもの、抗酸化作用と合わせているかをご確認ください。
ポイント2:安全性
原材料の取り扱い、生産工程、販売ルートなど、信頼の高い商品かをお確かめください。
ポイント3:価格
サプリメントは即効性のあるものではなく、長期に摂り続けて効能があらわれます。毎日続けやすい価格の商品をお選びください。
オメガ3脂肪酸サプリの摂り方
オメガ3脂肪酸サプリの摂り方をご紹介します。
摂取量
各商品により、オメガ3脂肪酸の配合量が異なりますが、1日の摂取目安量は成人男性2.1g、成人女性1.6gです(2015年版 n-3系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)より)。食事で不足する分をサプリメントで補うようにしましょう。
効果的な飲み合わせ
オメガ3脂肪酸は酸化しやすい性質のため、抗酸化作用の高い成分との飲み合わせが効果的です。
(例)ビタミンE,イチョウ葉エキス,アスタキサンチン,セサミン,ナットウキナーゼなど
効果が出るまでの期間
サプリメントは2~3か月間続けてとり、効能をお確かめください。
オメガ3脂肪酸サプリの注意点と副作用
体に良い成分でも、摂りすぎは体に負担をかけます。商品の用量,用途を守ってお召し上がりください。
副作用
オメガ3脂肪酸のサプリメントは魚由来の成分が含まれています。魚にアレルギー症状をお持ちの方はご注意ください。
保管方法
冷暗所に保管し、開封後は早めにお召し上がりください。
亜麻仁油サプリについてのQ&A
えごま油と亜麻仁油の脂肪酸組成は似ていて、同じような効能があります。食べ合わせを工夫して、それぞれの油の違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。
- えごま油:シソ科植物のえごまの種子から抽出される油です。えごま油は和食に合わせやすく、ポン酢と混ぜてドレッシングにしたり、豆乳にかけたりする楽しみ方がおすすめです。
- 亜麻仁油:アマ科の亜麻の種子から抽出される油です。フォカッチャにつけるオリーブオイルの代わりにしたり、バルサミコ酢に合わせたドレッシングにしたりする摂り方がおすすめです。
オメガ3脂肪酸は髪の地肌の健康によく、髪の毛に潤いを与えます。しかし、育毛効果につながる明確な研究報告はまだありません。
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麻仁油は独特の香りがあります。ゴマ油と1:1の配合で合わせる摂り方、白ワインビネガーやバルサミコ酢と合わせてドレッシングとして利用する摂り方は匂いが抑えられます。または、サプリメントは匂いが少なく、手軽に利用できます。
オメガ3脂肪酸は肌に直接塗ると、肌の乾燥を防ぎ、潤いをあたえてくれます。市販の化粧品にかぶれやすい方は、亜麻仁油やオリーブオイル、椿油を美容液に利用される方がいます。使用する際は、少量を掌にのせて、掌全体にのばしてから、顔をつつみこむようにして肌になじませてお使いください。亜麻仁油は酸化しやすいため、冷暗所か冷蔵庫で保存し、光にあてないよう、劣化に気を付けてお使いください。
亜麻仁油は独特の香りがあります。特に、亜麻仁油は劣化するのが早いため、開封後時間がたったものは味、香りが変化しやすいです。香りや食感が苦手な方は、サプリメントを利用すると、手軽に効能が得られます。
亜麻仁油のまとめ
亜麻仁油はアマ科の亜麻の種から抽出される油です。オメガ3脂肪酸のαーリノレン酸を豊富に含み、血管の健康の維持,脳細胞の活性,炎症抑制作用,うつ症状の緩和,肌の健康維持などに効果の高い油です。熱,空気,光に弱く、酸化しやすいため、加熱調理に使うより、ドレッシングなど生のまま摂りいれる方が効果的です。
油は「健康に悪い」というイメージが行き渡り、摂取量を控えるようすすめられます。しかし、油は摂取する量だけでなく、質にも注目し、体に良く、体質改善に役立つオメガ3脂肪酸を含む油を選んでみましょう。
サプリメント
米国にて高等教育終了後帰国し、食物栄養学部を卒業。大学研究室にて秘書、翻訳を経験後、現在管理栄養士として栄養関連記事の執筆、栄養指導、英日・日英翻訳に従事。
「シンプルな食スタイルで元気になりたい」こんな思いを伝えていきたいと、日々探求しています。