クルクミンとは
クルクミンはターメリック(粉ウコン)に含まれていているポリフェノールの一種です。ウコンには秋ウコン・春ウコン・紫ウコンがあり、亜熱帯アジアに分布しているショウガ科の多年草植物です。
クルクミンは秋ウコンに最も多く含まれ、乾燥させたウコンは粉末にしてカレーの香辛料として用いられています。ウコン色素とも呼ばれる黄色い色素はたくあんなどの漬物・水産練り製品・栗のシロップ漬けなど、食品の着色料に利用されています。
目次
クルクミンの歴史
ウコンの栽培はインドが発祥とされ、南アジアを中心にアジア・アフリカ・中南米の熱帯から亜熱帯にかけて自生しています。日本には平安時代中期に中国から輸入されました。
ウコンは高温多湿を好み、日本では沖縄県本島、石垣島、鹿児島本土、奄美大島で栽培されています。漢方では紫ウコンは胃腸管系の病気治療に利用され、秋ウコンと春ウコンは肝機能の改善に良いとされています。
効果・効能
クルクミンの効果、効能は以下の通りです。
- 抗酸化作用
- 肝機能改善効果
- アルコール代謝作用
- コレステロール値低下作用
- 美容効果
作用メカニズム
クルクミンの抗酸化作用のメカニズム
クルクミンには体に有害な活性酸素を除去する抗酸化作用があります。
抗酸化作用のメカニズム
抗酸化作用とは過剰に発生した活性酸素を抑制する作用です。クルクミンは体内に入り、腸で吸収されると、テトラヒドロクルクミンと呼ばれる抗酸化物質に変化し、体にとって有害な活性酸素を除去します。
活性酸素は外部から侵入する細菌やウィルスから体を守る一方、過剰に発生してしまうと細胞を酸化させたり、遺伝子を傷つけたりして、健康を害する要因となります。
大量に発生する原因は体内で有効に利用される酸素の一部が変化する以外に、大気汚染・たばこの煙・化学物質・農薬・食品添加物・ストレスなど、生活環境に由来するものも多くあげられています。
活性酸素の種類
活性酸素は主に4つに分類されています。
- スーパーオキシド:一番多い種類。酸化力は弱いが不安定のため、強力なヒドロキシルラジカルに変化しやすい
- 一重項酸素:紫外線により肌に多く発生する種類
- 過酸化水素:酸化力は弱いが不安定のため、強力なヒドロキシルラジカルに変化しやすい。殺菌剤の成分に使われ、体内に侵入する細菌を攻撃する作用がある
- ヒドロキシラジカル:最も酸化力が強く、脂質やタンパク質、糖などと反応して細胞や遺伝子を傷つける
活性酸素は体内の細胞を酸化させて、正常な細胞を傷つけてしまい、生活習慣病や老化、認知症など、現在のさまざまな病気を引き起こす原因と考えられています。クルクミンをはじめとする抗酸化力の強い成分を継続的に摂取することで、上記のような活性酸素の害から体を守ることができます。
クルクミンの肝機能改善効果のメカニズム
クルクミンには肝機能の改善を助ける作用があります。
肝臓の役割
- 胆汁の合成・分解
- 糖質・脂質・タンパク質をエネルギー源として蓄える
- アルコールやアルデヒドなど有害物を分解・解毒
胆汁は肝臓から分泌される消化液として、主に脂肪を分解して、膵臓リバーゼ(消化酵素)とともに、消化・吸収を助ける作用や、有害物質の分解・解毒をする作用があります。
クルクミンはその胆汁の分泌を促す働きや、解毒酵素(UDPグルクロン酸転移酵素、グルタチオンなど)を増加させる働きがあり、肝機能を強化しています。その結果、二日酔いの解消や疲労回復を早める健康効果が認められています。
クルクミンのアルコール代謝作用のメカニズム
クルクミンにはアルコール代謝を促進する作用があります。
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吸収されたアルコールは血液に入り、肝臓に送られる
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肝臓でアルコールはアルコール脱水素酵素(ADH)の働きにより、アセトアルデヒドに分解される
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アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素分解酵素(ALDH)の働きにより、酢酸に分解される
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酢酸はアセチルCoA合成酵素の働きで、水と二酸化炭素に分解される
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尿として体外へ排泄される
血中のアルコールが分解されて生成されるアルデヒドは非常に強い毒性をもち、頭痛・めまい・吐き気・胸やけなど二日酔いの不快症状を引き起こします。二日酔いの対策には下記のいずれかの方法でアルコールを体内から早く排出することで、症状が軽減します。
- アルコールやアセトアルデヒドの分解を早める
- 肝機能の強化
- 血中アルコール濃度を下げる
これらのうち、クルクミンにはアルデヒドの分解を促進する働きがあり、通常より約1.5倍早めることが明らかになっています。クルクミンは肝機能を強化する働きも加えて、アルコールに関連する疾患(アルコール性肝疾患、アルコール誘発性神経障害)の予防に効果が認められています。
クルクミンのコレステロール値低下作用のメカニズム
クルクミンにはコレステロール値を低下させる作用があります。肝臓で生成される胆汁はコレステロールやビリルビン(赤血球の代謝産物)から生成されます。クルクミンの働きで胆汁の分泌が増えることで、コレステロールの消費量が増え、その結果コレステロール値の低下につながります。
また、 クルクミンをはじめとするポリフェノールは抗酸化物質として働き、コレステロールの酸化を防いで生活習慣病の予防に効果を発揮しています。
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血管内皮に傷がつくと、白血球の一種であるマクロファージが酸化LDLを取り込んで処理する
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マクロファージは酸化LDLを処理できなくなると、泡沫細胞になり死んでしまう
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泡沫細胞は粥状になり、血管壁に沈着して血管内腔が狭くなる
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血液の通り道が狭くなり、血管の弾力性が失われてくると、動脈硬化が進んでいく
酸化LDLが増えると血流が滞って閉塞し、動脈硬化が進行していきます。その結果、脳梗塞や心筋梗塞など重症の生活習慣病を引き起こす要因となります。クルクミンの抗酸化力は過剰に発生する活性酸素を除去し、コレステロールの酸化を防いでいます。
クルクミンの美容効果のメカニズム
クルクミンには皮膚トラブルを改善する作用があります。
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転写因子NF-kB(※1)が活性化され、炎症がおこる
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皮膚の角化・メラノサイトの増殖
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色素沈着やコラーゲンの分解が生じる
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シミ・しわ・乾燥など肌トラブルを引き起こす
転写因子NF-kBは紫外線や活性酸素、ウィルスにより活性化されます。クルクミンは、転写因子NF-kBの活性を抑制し、色素沈着やコラーゲンの分解を防ぐ働きがあり、美容効果が期待されています。
~クルクミンの肌への効果~
- 紫外線による肌の老化を抑制する
- 肌の水分量をあげて、乾燥肌の改善
- 肌の潤いを増して、シミ・しわ・毛穴の開きなどの改善
科学的データや報告
アルデヒド濃度を定量化できる数理モデルを提案し、アルデヒド存在下における急性アルコール中毒と二日酔いの発生メカニズムを再現しました。そして、アルデヒドの分解を促進する有効成分クルクミンの投与を想定し、アルデヒド濃度を低く保つために有効な投与時刻を議論しています。
クルクミンには種々の薬理作用が報告されていますが、経口吸収率が非常に低い点が臨床応用上の問題となっています。そのため、研究者はナノ粒子化・表面加工技術を利用した高吸収クルクミン製剤(セラクルミン)を開発し、ヒト経口吸収試験において、セラクルミンの高い吸収性、肝機能改善効果を明らかにしています。
クルクミンによる小腸コレステロール吸収阻害およびコレステロール逆転送活性化について検討しています。
膵臓がん患者を対象としたクルクミンの第Ⅱ相臨床試験では、クルクミン単剤で膵臓がんの肝臓転移が縮小した症例が報告されています。
アテロ―ム性動脈硬化は主に高コレステロールにより引きおこします。マウスに対して高コレステロール食に合わせてクルクミンの投与を10週間行ったところ、長期にわたってクルクミンを与えると、抗コレステール薬に比べてコレステロール値の低下と、アテローム性動脈硬化の改善を示しました。
クルクミンの摂取がおすすめの人
クルクミンの摂取は以下のような人におすすめです。
肝臓の健康が気になる人
クルクミンには肝臓で生成される胆汁の分泌を促し、肝機能を高める働きがあります。胆汁は脂質や脂溶性ビタミンを分解して消化・吸収を助けています。そのため、胆汁の分泌が減少すると栄養素が小腸で十分に吸収されず、生命活動や免疫に必要となる栄養素が全身に運ばれなくなり、健康を害する要因になります。
アルコールをよく飲む人
アルコールの代謝物質、アルデヒドは有害な働きを体に及ぼし、頭痛・めまい・胸やけ・吐き気など不快症状を引き起こす原因です。クルクミンにはアルデヒドの分解を早めてアルコール代謝を促進する働きがあります。
さらに、クルクミンにはアルコールによる負担がかかる肝臓機能を強化・修復して、アルコール性肝疾患やアルコール性誘発神経障害の予防に効果を発揮します。二日酔い予防には、クルクミンは飲酒前に摂取しておくと、効果が高まります。
肌を美しく保ちたい人
クルクミンは転写因子NF-kBの活性を抑制し、色素沈着やコラーゲンの分解を防ぐ作用があります。継続的にクルクミンを摂取しておくと、肌の水分量があがることで潤いが保たれ、シミ・しわ・毛穴の開き・乾燥などの肌トラブルの改善に効果的です。
クルクミンの摂り方
クルクミンの摂取目安量
摂取目安量はもうけられていませんが、健康効果を得るために1日30mgの摂取がすすめられています。
クルクミンが含まれている食品
クルクミンは次のような食品に含まれています。
ウコン10g | クルクミン30mg |
カレー | 微量 |
ターメリックライス、パエリヤ | 微量 |
漬け物(たくあん) | 微量(着色料として) |
練り物(かまぼこなど) | 微量(着色料として) |
菓子類(栗のシロップ漬けなど) | 微量(着色料として) |
ウコン10g中にクルクミンは約30mg含まれています。ウコンは主にカレーの香辛料として使われていますが、カレーには他の香辛料も配合されているため、カレー1皿で摂取できるクルクミン量は微量です。ターメリックライスやパエリヤなどに香辛料と着色料にも用いられますが、クルクミンの含有量はほんのわずかです。(お米2合に対してターメリックパウダー小さじ1の分量)
黄色い天然色素は漬物のたくあん・かまぼこなどの水産物の練り物・栗のシロップ漬けなどの菓子類に着色料として利用されていますが、十分なクルクミンを摂取できるほどの量は使用されていません。
クルクミンは脂溶性で吸収率が悪いため、食事でクルクミンを摂るには相当な食事量になります。クルクミン30gmを摂るにはカレー約5~6皿分に相当します。食事から十分量を摂るのは大変ですので、サプリメントや栄養ドリンクを利用してみてください。
クルクミンサプリメントの選び方
脂溶性のクルクミンは水に溶けにくいため、経口摂取した際の吸収率は悪く、多くは体外へ排出されます。そのため、昨今クルクミンの吸収率をあげるための研究がすすめられ、サプリメントや栄養ドリンクなどが開発されて、より効率よくクルクミンが摂取できるようになっています。
ポイント1:配合量
クルクミンの健康効果を得るには、1日の摂取目安量は30mgが良いとされています。この分量が摂取できるサプリメントがおすすめです。
ポイント2:安全性
原産国、加工工程、品質管理が徹底している企業の製品は、購入後のサポート体制も整い、信頼性が高く、リピーターが多くいます。ハウス食品は長年にわたりクルクミンの健康効果の研究を続け、安全と安心を提供しているメーカーです。
ポイント3:価格
クルクミンサプリメントは健康維持を目的に摂取していく健康食品として、1か月2,000円~2,500円の商品を定期購入される方が多くいます。安すぎる商品は品質(原料産地、加工、配合量など)に不安があり、高すぎる商品は続けにくい点を考慮し、選んでみましょう。
クルクミンサプリの摂り方
摂取量
商品の用途・用量を守り、適量を摂取してください。健康効果が期待できる目安量は1日30mgとされています。クルクミンは食品のため安全性は示唆されていますが、過剰摂取は色素沈着がおこり、肝臓に負担をかけることがあります。
効果的な飲み合わせ
クルクミンは脂溶性で吸収率が悪いため、吸収を助けるピペリン(辛み成分)や紫エキスなどが配合されたサプリメントが吸収を高めてくれます。
効果が出るまでの期間
継続してとることで体調の変化があらわれます。まずは3か月を目安に摂り、体調変化の様子をみてみましょう。
クルクミンサプリの注意点と副作用
過剰摂取は肝臓に負担をかけるため、商品の用途・用量を守り、適量を摂取してください。妊婦や授乳中の方、お子様、服用中の方、持病をお持ちの方が摂取する場合は、医師にご相談ください。
特にワーファリンを服用される方は、薬理効果が増強する可能性があるため、医師にご相談の上、お召し上がりください。
副作用
ワーファリン(ワルファリン)とクルクミンの飲み合わせは血小板凝集作用の薬理効果が増強されることがあります。服用中の方は医師にご相談ください。
保管方法
直射日光をさけて、涼しい場所に保管してください。食品のため、開封後は早めにお召し上がりください。
クルクミンサプリについてのQ&A
カレールーには油脂が多く使われていますので、クルクミンの効能を得るにはカレー粉の利用をおすすめします。または、サプリメントや栄養ドリンクはクルクミンが摂取しやすいように成分が凝縮されています。効率よく摂取するにはサプリメントや栄養ドリンクを利用してみてください。
クルクミンは秋ウコンに最も多く含まれ、春ウコンの3倍以上含まれています。紫ウコンにはクルクミンは含まれていません。
別の植物です。クミンは地中海沿岸部を原産とするセリ科の一年草です。強い芳香と苦み、辛味があり、種子のクミンシードは香辛料としてカレー・チーズ・ソーセージ・スープ・シチューなどに利用されています。
どちらもアルコール代謝を促進し、肝機能改善と二日酔いに効果的な成分です。海産物の独特の臭いが苦手な方や貝類にアレルギー症状を起こす方はウコンをおすすめします。
クルクミンのまとめ
クルクミンはターメリック(粉ウコン)に含まれているポリフェノールの一種です。抗酸化作用・肝機能改善作用・コレステロール低下作用など生活習慣病の予防に効果の高い成分です。肝機能やコレステロール値などに悩みのある方は、カレー粉やサプリメントなどで継続的に摂取してみると良いでしょう。
米国にて高等教育終了後帰国し、食物栄養学部を卒業。大学研究室にて秘書、翻訳を経験後、現在管理栄養士として栄養関連記事の執筆、栄養指導、英日・日英翻訳に従事。
「シンプルな食スタイルで元気になりたい」こんな思いを伝えていきたいと、日々探求しています。