酵素とは
酵素とは体内で合成されるタンパク質の一種です。
食べたものを消化したり、エネルギーを作り出したり、アミノ酸を再合成してタンパク質を作り出したりと生命活動を維持するために様々な働きをする物質です。
目次
体内の酵素について
人間は体内で3000種類以上もの酵素を作り出し、化学反応を促進させることで生命を維持しています。
酵素は「消化酵素」と「代謝酵素」に大別することができます。
消化酵素
消化酵素はその名の通り、摂取した食べ物を消化して吸収できるようにする酵素のことを指します。
例えば米に含まれているでんぷんは分子量が大きいためそのままでは吸収することができません。
まず唾液に含まれる酵素のアミラーゼによりでんぷんが麦芽糖に分解されます。
その後、小腸から分泌されるマルターゼという酵素によってブドウ糖に変化して吸収できるようになります。
消化酵素はこのように外部から摂取した栄養素を吸収できるようにする働きがあります。
タンパク質も脂質も消化酵素の働きにより分解され、消化できるようになります。
代謝酵素
対して代謝酵素は食べ物の消化以外に働く酵素です。
例えば消化して吸収したブドウ糖からエネルギーであるATP(※)を取り出したり、アルコールなどの有害な物質を分解したり、摂取したブドウ糖や脂肪酸から中性脂肪を合成したり、ホルモンを合成したり・・・とその働きは非常に多岐に渡ります。
人間が一日に合成できる酵素の量は一定であると考えられています。
暴飲暴食や消化しづらい脂っこいものばかり食べている食生活を送っていると、消化酵素が過剰に必要になり、代謝酵素が減少して不調を招いてしまいます。
酵素の歴史
酵素を重要な栄養素とみなす「酵素栄養学」はアメリカの医学博士であるエドワード・ハウエル氏によって確立されました。
消化酵素と代謝酵素の体内で合成できる量が一定であり、消費され過ぎてしまうと不調や疾病の原因となってしまいます。
しかし生の食品に含まれる酵素を摂取することで、消化酵素の働きを助け、代謝酵素のほうに合成量を割けるようなります。
効果・効能
酵素の効果、効能は以下の通りです。
- 代謝の向上
- アンチエイジング
- 胃もたれ・胸やけの軽減
作用メカニズム
酵素を摂取したときの体内での働きは以下になります。
代謝の向上・アンチエイジング
生の食品を摂取することで消化酵素を始めとする様々な酵素を摂取することができます。
摂取した酵素が体内で合成される消化酵素の働きを助けるので、消化酵素の過剰な合成を防ぎます。
これによって代謝酵素の減少を防げるため、代謝が向上しアンチエイジング効果が期待できます。
代謝酵素の作用は、たとえば
- SOD酵素による抗酸化作用
- 肝臓の酵素による解毒作用
- ATP産生による疲労回復作用
などが当てはまります。
胃もたれ・胸やけの軽減のメカニズム
生の大根おろしには、でんぷんの消化酵素である「アミラーゼ」や、タンパク質の分解酵素である「プロテアーゼ」、脂質の消化酵素である「リパーゼ」といった消化酵素が豊富に含まれています。
油っぽいものや重たいものと一緒に大根を食べることによって、体内の消化酵素の働きを助け、翌日の胃もたれや胸やけの症状を軽減します。
科学的データや報告
万田酵素はリンゴや柿、バナナといった果物、ゴボウや人参といった根菜類、玄米や大豆などの穀類、黒糖などの糖類を発酵させた食品です。3種類のフリーラジカル(酸化作用を持つ物質)に対しての万田酵素の効果を検討した結果、これらの物質は消去されました。この結果からフリーラジカルが原因となる体内の老化や各種疾病などへの効果が示唆されます。
アルコールを摂取させたマウスに万田酵素を与えたところ、アセトアルデヒド(アルコールが分解され作られる有害物質)の血中濃度が半減することが分かりました。この結果から、酵素には肝臓におけるアセトアルデヒドの代謝を促進させる働きがあることが考えられます。
酵素の摂取がおすすめの人
酵素の摂取は消化の補助やアンチエイジングに対して効果を示します。以下のような人におすすめです。
アンチエイジングをしたい人
体内で様々な化学反応を促進させる代謝酵素は若々しさを保つために重要になります。
例えばSODという酵素は抗酸化作用があり、シミやシワの原因となる活性酸素を無毒化する働きがあります。
活性酸素はシミやシワの原因となったり、動脈硬化や、疲れやすくなる原因となります。
しっかりと酵素を摂ることで代謝酵素の働きを強めることで、アンチエイジング効果を期待することができます。
食生活が乱れている人、脂っこい食べ物が好きな人
酵素を摂取することで消化酵素の働きを助けることができます。
食生活が乱れている人や脂っこい食べ物が好きな人は体内での酵素を合成する力が弱っている可能性があるため、おすすめです。
大根や人参、キウイ、パイナップルなどには消化を助ける消化酵素が豊富に含まれています。
酵素の摂り方
酵素の効果的な摂り方は以下になります。
酵素が含まれている食品・サプリメントなど
酵素はタンパク質なので熱を加えると変性して効果がなくなってしまいます。そのため生の食品を食べることが重要になります。
大根や人参、レタス、キャベツなどの野菜類、パイナップルやキウイ、リンゴなどの果物、味噌やキムチ、ヨーグルトといった発酵食品などに多く含まれています。
酵素の摂取目安量
酵素は必須栄養素ではないため摂取目安量はありません。
酵素の摂取期間
酵素は年齢と共に徐々に体内での合成量が減少していきます。そのためなるべく継続することが重要です。
効果的なタイミング・時間帯、回数
酵素の摂取に決まったタイミングはありません。
ただし脂っこい食べ物を食べる際は大根おろしを添えたり、デザートとしてキウイなどのフルーツを食べたりするようにするとよいでしょう。
酵素の安全性と副作用
酵素は普通の食品に含まれているため安全性が高く、副作用も基本的にありません。
ただし食品なので、アレルギーがある人は気を付けるようにしましょう。
酵素の選び方
酵素サプリメントを利用する際は以下のポイントに気を付けましょう。
ポイント1:原材料の安全性
酵素サプリメントは基本的に自然の野菜や果物を原料として製造されます。
原材料の安全性がしっかりと確認される製品を選ぶようにしましょう。
自社工場で生産されていたり、契約農家から仕入れたりしている原材料を使っている製品が安心です。
さらに残留農薬の検査がされているものはなお安心です。
ポイント2:原材料の一覧がしっかりと表示されているもの
酵素の原料は自然の食品です。例えばリンゴにアレルギーがある人がリンゴを原料にしている酵素サプリメントを摂取してしまうと、同じくアレルギーが出てしまいます。
原材料の表示がしっかりされているものを選ぶようにしましょう。
ポイント3:放射性物質の検査がされていること
安全性試験の一環として放射性物質の検査がされている製品を選ぶようにしましょう。
酵素サプリメントの摂り方
酵素サプリメントはあくまで食品であるため決まった摂り方はありません。購入した製品の説明に従うようにしましょう。
酵素サプリメントの摂取量
酵素は必須栄養素ではないため、サプリメントとして摂取したときも摂取目安量はありません。
製品の説明に従うようにしましょう。
効果的な飲み合わせ
特になし
効果が出るまでの期間
酵素サプリメントを摂取して、効果が表れるまでの期間は個人差があります。最低でも3か月ほど続けてみるとよいでしょう。
酵素サプリメントの注意点
酵素サプリメントは自然の食品を原料として製造されるため副作用は基本的にありません。
アレルギーのある人は原材料に注意するようにしましょう。
酵素についてのよくある質問Q&A
自宅で常温で放置してしまうと発酵ではなく腐敗する可能性のほうが高いです。常温で放置するのは避けるようにしましょう。
酵素はタンパク質なので熱により変性します。加熱しないようにしましょう。また0度を下回るような低温でも変性します。そのため凍らせるのもよくありません。
食事やサプリメントとして酵素を摂取することで代謝が活性化して痩せやすくなるということはあると思います。ただしそれも食べ過ぎたり運動不足だったりすると効果がありません。あくまで補助的なものとして腹八分目と定期的な運動も併せて行うようにしましょう。
野菜や果物をジューサーでジュースにすると効果的です。細胞壁が壊れて、酵素だけではなくビタミンやミネラルも吸収がよくなります。食物繊維も豊富に摂れるため便秘の解消にも効果的です。
酵素のまとめ
酵素は生物の生体内で合成されるタンパク質の一種です。化学反応を速める「触媒」として働き、生命維持に必要不可欠な物質です。
食品から酵素を摂取することで消化酵素の働きを助け、代謝を向上させる働きが期待できます。
胃もたれが起きやすい人やアンチエイジングをしたい人におすすめです。
野菜や果物など生で食べる食品に多く含まれているほか、サプリメントとして摂取することも可能です。
体内での酵素の合成量は年齢とともに減少していくため、継続的に摂取することが重要です。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医、サプリメントアドバイザー。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。