
大豆イソフラボンとは、主に大豆の胚芽にに含まれるフラボノイドの一種で、ダイゼイン,ゲニステイン,グリシテインなどの総称です。
大豆はアジア地域で歴史的に非常に長い間食されてきました。
そのため食品やサプリメントから適量摂取している分には大変安全性が高い成分です。大豆イソフラボンの働きには、更年期障害の緩和,骨粗鬆症の予防,循環器系疾患の予防(心筋梗塞など),美肌効果などが期待されます。
目次
大豆イソフラボンサプリメントの効果的な取り方
食品安全委員会がにまとめた「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」では、1日当たりの大豆イソフラボンの摂取目安量の上限値を70-75mgとし、そのうち、サプリメントや特定保健食品などで摂取する量は1日当たり30mgまでが望ましいとしています。
食品から大豆イソフラボンを摂取する場合は、食べ過ぎない程度に摂っていればまったく問題ありません。食品からイソフラボン50mg摂取するためには、豆腐なら半丁、納豆1パック、きなこ20gほどです。不足する場合はサプリメントなどで補うのも一つ方法です。サプリメントで補う場合は、摂りすぎには注意してください。
大豆イソフラボンの有効成分
大豆イソフラボンは女性ホルモンのエストロゲンに科学的構造がよく似ています。そのためイソフラボンはエストロゲンの受容体に結合し、女性ホルモンに似た働きをします。ただし、作用は1/1,000以下と大変弱いものです。
更年期障害のように、エストロゲンが不足状態になると、大豆イソフラボンが補助的に作用し更年期による症状を和らげるよう働きます。尿中のイソフラボン量と骨密度を調べた研究によると、骨密度が低くなるにつれ尿中のイソフラボン濃度が低くなるという相関関係が証明されました。
尿中のイソフラボン濃度は、大豆の摂取量に比例します。このことから大豆イソフラボンには骨を強くし、骨粗鬆症の予防する働きがあります。さらに、女性ホルモンには血管系の病気を予防、悪玉コレステロールを減らし、血液を流れやすくし血圧を下げる働きがあるため、エストロゲン様物質の大豆イソフラボンを摂取することで、同様の効果が期待できます。
またエストロゲンには関節リウマチの発症率を下げたという研究結果があるそうです。同じような症状で妊娠、出産などや更年期で女性ホルモン(エストロゲン)が減少することで手根管症候群(手首を通る正中神経がはれた靭帯や腱に圧迫されて起こり、ゆびにしびれや痛みを伴う症状)になりやすくなるそうです。主に女性に多いのはこのエストロゲンが関連しているからということです。こちらも大豆イソフラボンを摂取することで効果が期待できそうです。
出典:関節リウマチ患者の関節症状に対する大豆ペプチド内服の有効性評価より
大豆イソフラボンの科学的データ
ISBN978-4-88282-609-5 C3047 P466-473 大豆イソフラボンより
ナチュラルスタンダードリサーチコラボレーションは1999年に設立されたアメリカの代替補完療法に関する科学的根拠に基づく情報源である。
ナチュラルスタンダードにおける等級Aは「3件以上の適切にランダム化された対照試験からの統計的に優位な有益性の科学的な根拠がある場合、もしくは1件の適切に実施された対照試験と1件の適切に実施されたメタアナリシスからの科学的な根拠がある場合、もしくは適切に実施された試験の過半数が統計的に優位な有益性の科学的根拠を示している複数のRCTからの科学的な根拠がありかつ基礎科学や動物実験、理論での裏付け証拠がある場合」に与えられます。
Aは強力な科学的根拠があるとされ、大豆イソフラボンが高コレステロール対策に対して十分な効果があると考えられています。
ナチュラルスタンダードによる等級Bは「1件あるいは2件のランダム化された試験による有意な有益性の根拠」「1件以上に適切に実施されたメタアナリシスからの有益な科学的根拠」「2件以上のコホート/症例対照/非ランダム化試験からの科学的根拠があり基礎科学、動物実験、理論による裏付けがある場合」のいずれかを満たすときに与えられる。
Bは十分な科学的根拠があるとされ、大豆イソフラボンが更年期顔面紅潮に対してよい影響を与えると考えられる。
Soybean isoflavones reduce postmenopausal bone resorption in female Japanese immigrants in Brazil: a ten-week study.
ブラジル在住の健康な閉経後の日本人女性移民40名をイソフラボン投与群とプラセボ群に分け、骨代謝にイソフラボンが及ぼす影響を研究しました。その結果、イソフラボンの継続摂取は閉経後の骨粗鬆症を抑制することが示唆されました。
閉経後5年以内の女性を対象に1年間の大豆イソフラボン配糖体(アグリコン換算47mg)を摂取してもらいました。その結果、大腿骨近位部の骨量減少を抑制する働きが確認できました。特にこの働きはエクオールを生産できる女性に強くみられました。
大豆イソフラボンと「エクオール」
大豆イソフラボンと女性ホルモンの関係
大豆イソフラボンを摂取すると、その中に含まれる「ダイゼイン」という成分が(※)エクオール産生菌と呼ばれる腸内細菌によって代謝されることでスーパーイソフラボン「エクオール」という物質が作られます。
この「エクオール」は女性ホルモンに似た働きが強いと言われていますが、日本人でこの「エクオール」を体内で作ることができる人は約半分と言われています。
つまり残りの半分の人は効果の高いエクオールの恩恵を受けることができないのです。
「エクオール」と大豆
エクオールを作ることのできる人は欧米人で20~30%、日本人では50~60%といわれています。日本のほかに中国、韓国、台湾などがエクオールを作れる割合が多く見られています。
また若い世代で見るとエクオール産生率は減少します。40歳以上で見るとほぼ半分なのに対して、30歳未満の若い世代は20~30%となっています。
さらに大豆の摂取量の違いでエクオール産生率を調べてみると、大豆をあまり食べない人は24%、ほとんど毎日食べている人は50%という結果が出ています。
これらのことから大豆の摂取量や食文化による腸内環境の違いからエクオール産生率に差ができると考えられています。
自身が「エクオール」を作れるかどうか気になるところですが、市販されているチェッカーを使用して調べることができます。
ヘルスケアシステムズが出している「ソイチェック」というキットを購入して検査することが可能です。
「エクオール」を作れる人・作れない人
体内で「エクオール」を作ることができる人は大豆イソフラボンを納豆、豆腐、みそなど食事から摂取しましょう。
また「エクオール」を作ることができない人もサプリメントでエクオールを摂取することが可能です。
ただ「エクオール」を作れる人もそうでない人も日々の食事に大豆を多く取り入れること、そして腸内細菌のえさとなる食物繊維も多く摂取することで腸内環境を改善することが可能です。すぐに変化が現れるものではないですが日頃の積み重ねで元気な腸内環境を作っていきましょう。
エクオール菌について多くの研究がされている現在、今後どのような食生活でエクオール菌が増えるのかも解明されていくかもしれません。
出典:名古屋大学発ベンチャー Healthcare Systems
大豆イソフラボンの副作用と安全性
大豆イソフラボンは歴史的にも長い時間食されてきています。常識的な範囲で食品,サプリメントから摂取する分には充分な安全性があります。サプリメントなどから大豆イソフラボンのみを過剰摂取した場合、女性ホルモンのバランスが崩れる可能性が指摘されています。
サプリメントからは1日30mgまでが望ましいとしています。また妊婦、15歳未満の小児については、日常的な食生活に上乗せして摂取することは推奨できません。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医、サプリメントアドバイザー。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。