ラクトフェリンとは
ラクトフェリンは哺乳類の母乳に多く含まれる糖タンパク質です。
母乳のほか、唾液や汗、涙にも含まれています。鉄と結びつく性質があるため赤みがかった色をしています。生まれたばかりの乳児は免疫力が低く、そのままだと様々な細菌やウイルスに感染してしまいます。
しかしラクトフェリンが豊富に含まれる母乳を飲むことで免疫力を獲得します。
乳児の腸内環境は善玉菌が90%以上と非常に多いですが、その環境を作り出しているのがラクトフェリンであると考えられています。
人間の初乳(出産後5日間くらいまでの母乳)には特にラクトフェリンが豊富に含まれています。
目次
ラクトフェリンの歴史
ラクトフェリンは1939年にオランダの科学者のゼーレンセン博士によって発見されました。
牛乳の中から赤みがかった色をしてタンパク質が発見され、鉄と結合性質があることが判明しラクトフェリンと名づけられました。
日本においては森永乳業社が1960年代から研究を重ねて、抽出する技術を開発しラクトフェリンが含有されている育児用ミルクやヨーグルトを販売しています。
効果・効能
ラクトフェリンの効果、効能は以下の通りです。
- 免疫力の強化
- 内臓脂肪の減少
- 貧血の予防
- 胃の健康維持
- 腸内環境の改善
作用メカニズム
ラクトフェリンを摂取すると以下のようなメカニズムで作用します。
ラクトフェリンの免疫力強化へのメカニズム
人間にはもともと免疫機能が備わっています。しかし不規則な生活や食生活の乱れ、ストレスなどにより免疫機能は低下してしまいます。
ラクトフェリンを摂取すると人間の免疫細胞であるナチュラルキラー細胞(腫瘍細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃する細胞)の数と活性が増加します。
その結果、免疫力の強化につながると考えられています。
ラクトフェリンの内臓脂肪の減少へのメカニズム
人間が脂肪をエネルギーにするときは脂肪酸とグリセロールに分解する必要があります。脂肪細胞に蓄えられた脂肪が分解されることで内臓脂肪が減少していきます。
あくまでマウスでの実験結果ですが、内臓脂肪にラクトフェリンを添加することでグリセロールの生成量が増えたという結果が確認されています。
この結果からラクトフェリンを摂取することで脂肪が分解されやすくなる効果があることが示唆されます。人間でも同様の効果が期待できるでしょう。
ラクトフェリンの貧血の予防へのメカニズム
貧血で最も多いのは鉄分の摂取量や吸収量が減少することで起こる「鉄欠乏性貧血」です。
鉄分はもともとあまり吸収率がよくないミネラルですが、ラクトフェリンはタンパク質と鉄が結合した物質であり、吸収率が高いです。
そのため貧血を予防する効果があると考えられています。
胃の健康維持へのメカニズム
胃がんや胃潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリという菌がいます。日本人はヘリコバクター・ピロリの感染率が徐々に改善されてきていますが、それでも70歳を超える高齢者には50%ほどの感染が認められています。
ラクトフェリンは鉄と結合しており、この鉄がヘリコバクター・ピロリに対して高い抗菌性を持っています。
ラクトフェリン中の鉄分がヘリコバクター・ピロリを抗菌することによって、胃がんや胃潰瘍の予防効果に繋がります。
腸内環境の改善のメカニズム
ラクトフェリンは、腸内で善玉菌のビフィズス菌の増殖を促進させる「プレバイオティクス(※)」の効果があります。
その結果、ビフィズス菌が増え、反対に悪玉菌の増殖は抑制されて腸内環境が改善し、便秘の解消などが期待できます。
プレバイオティクスとは、オリゴ糖や食物繊維など腸内にもともと生息している善玉菌のエネルギー源となる物質を摂取することで、腸内環境を改善することを指します。一方で乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を直接補給して、腸内環境を改善することをプレバイオティクスと言います。
科学的データや報告
ラットの脂肪細胞にラクトフェリンを添加したところ、用量依存的にグリセロールの生成量が増加しました。
この結果から、ラクトフェリンには脂肪細胞の分解を促進させる働きがあると考えられます。
BMIが25以上の30歳から62歳の男女30名に対してラクトフェリン摂取群とプラセボ群に分け、2か月摂取してもらいました。
その結果、ラクトフェリン摂取群では腹囲や体重の有意な減少が確認されています。
この結果から、ラクトフェリンを摂取することで人間に対して脂質代謝を改善する働きがあることが明らかになりました。
ピロリ菌保菌者にラクトフェリンを添加したヨーグルトを8週間摂取してもらったところ、胃の中のピロリ菌の数の指標であるUBT値が減少しました。
ラクトフェリンの摂取がおすすめの人
ラクトフェリンの摂取は脂質代謝の改善や腸内環境の改善に対して効果を示します。以下のような人におすすめです。
健康診断の結果が気になる人
中性脂肪値、コレステロール値、血圧などこれらの数値は肥満を解消すれば改善されることが多いです。
健康診断の数値が気になる人がラクトフェリンを摂取することで脂質代謝が改善され、内臓脂肪が減少することでそれらの数値も改善される働きが期待できます。
これらの数値や腹囲、内臓脂肪の面積が高いと動脈硬化や心疾患、脳血管疾患のリスクとなります。ラクトフェリン摂取はそのリスクを低下してくれる可能性があります。
お腹の調子が気になる人
ラクトフェリンはビフィズス菌を増殖させる働きがあります。ビフィズス菌は酢酸を合成する働きを持ちます。
悪玉菌は酸に弱いため、ビフィズス菌が増えれば増えるほど悪玉菌は減少していきます。
またビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が増加することでビタミンB群やKが合成されるので、ビタミンが補給されることにより、健康維持にも効果が期待できます。
ラクトフェリンの摂り方
ラクトフェリンは哺乳類の乳に多く含まれています。
しかし加熱により壊れてしまうため、通常の加熱処理された牛乳などには含まれていません。
通常の食品から摂取するのはなかなか難しいでしょう。サプリメントからの摂取が手軽でおすすめです。
ラクトフェリンの摂取目安量
ライオン社が行った内臓脂肪低減効果の実験では、1日あたり300mgのラクトフェリンが用いられています。1日300mgを一つの目安とするとよいでしょう。
ラクトフェリンの摂取期間
ライオン社が行った内臓脂肪低減効果の実験では、2か月間継続してラクトフェリンを被験者に摂取してもらいました。最低2か月の摂取をするとよいでしょう。もちろん継続することが重要です。
効果的なタイミング・時間帯、回数
ラクトフェリンを摂取する際は1日3回に分けて摂取するとよいでしょう。選んだサプリメントに飲むタイミングや回数の指定があればそれに従うようにしましょう。
ラクトフェリンの安全性と副作用
ラクトフェリン自体には重大な副作用はありません。しかしラクトフェリンを抽出する食品にアレルギーがある場合は注意が必要でしょう。アレルギーがある場合は購入前にメーカーに問い合わせるようにしましょう。
ラクトフェリンの選び方
ポイント1:ラクトフェリンが腸に届くように設計されていること
ラクトフェリンは胃酸によって分解されてしまいます。腸に届かないと効果が低くなってしまうため、しっかりと腸まで届くように設計されているものを選ぶようにしましょう。
ポイント2:1日分が300mg以上含有されているものを選ぶ
ラクトフェリンの効果を期待するならば1日に300mg以上含まれているものを選ぶようにしましょう。
効果的な飲み合わせ
効果的な飲み合わせは特にありません。
ラクトフェリンの注意点
ラクトフェリンを抽出する原料によってはアレルギーが生じることがあります。
乳アレルギーを持っている人は特に注意しましょう。
ラクトフェリンについてのよくある質問Q&A
ラクトフェリンは熱に弱いため通常の加熱処理の過程で壊れてしまいます。牛の生乳には豊富に含まれていますが、流通していません。食品から摂取するのは難しいでしょう。
痩せる、というと厳密には異なります。脂質代謝の改善をすることで、すでに蓄積されている脂肪が分解されやすくする働きが期待できます。
ラクトフェリンを摂取していても、カロリーの高いものを食べ過ぎるとせっかく改善された脂質代謝が無駄になってしまいます。
そのためラクトフェリンを摂取しても腹八分目を守るようにしましょう。
まず挙げられるのがカプセルにコーティングして腸で溶けるように設計された製品です。またそのほかラクトフェリン自体を酸に強くして腸まで届くようにした製品もあります。
原料となる牛乳を加熱処理している時点でラクトフェリンは壊れてしまいます。ただし別途ラクトフェリンを添加している場合は含まれています。
ラクトフェリンはほぼ牛乳から抽出されます。乳アレルギーを持っている人は摂取が難しいかもしれません。購入する前にメーカーか医師に問い合わせるようにしましょう。
ラクトフェリンのまとめ
ラクトフェリンは哺乳類の乳に含まれる糖タンパク質です。
乳児の免疫に大きく関わると考えられてきましたが、近年では脂質代謝を改善して内臓脂肪を減少させる働きもあることが分かっています。
ラクトフェリンを継続摂取することで生活習慣病の予防効果が期待できます。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医、サプリメントアドバイザー。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。