ケルセチンとは
ケルセチンは野菜や果物に含まれるポリフェノールのうち、黄色い色素を呈するフラボノイドに分類されており、ビタミンと似た働きをするビタミン様物質と考えられています。
ケルセチンは玉ねぎ・絹さや・ブロッコリーなどの野菜や、りんご・ブドウ・クランベリーなどの果物に含まれ、糖が結合した「配糖体」の形で存在しています。
ケルセチンには血液の流れを改善する作用があり、生活習慣病(動脈硬化、高血圧など)の予防・血糖値の低下作用・アレルギーの緩和に効果が高い成分です。
目次
ケルセチン配糖体
ケルセチンが糖と結合した形です。ケルセチンは脂となじみやすい脂溶性のため、水に溶けにくく体内で吸収されにくい性質がありますが、配糖体のカタチでは水溶性が向上し、体内への吸収率が高まります。ケルセチンは通常、糖が結合した配糖体の形で植物に存在しています。配糖体のうち、グルコース単体が結合したグルコシドは非グルコシドより吸収率が高いとされ、玉ねぎにはケルセチングルコシドが豊富に含まれています。
ケルセチンプラス
漢方で利用される豆科の落葉高木エンジュから抽出されるケルセチンです。酵素処理を用いて、吸収力を高めています。
ケルセチンの歴史
ケルセチン「quercetum」の名前はラテン語の「Quercus(オーク)」が由来とされ、オークはブナ科コナラ属に分類される落葉樹です。黄色い色素を含むため、染料として用いられてきました。
ケルセチンの化合物名は1857年から使用されていましたが、広く知られるようになったのは、ポリフェノールの健康効果が話題になった1990年頃からです。その後、研究開発がすすみ、2000年に入ってから、サプリメントにも利用されるようになりました。
効果・効能
ケルセチンの効果、効能は以下の通りです。
- 抗酸化作用
- 動脈硬化の予防
- 血糖値低下作用
- コレステロール低下作用
- アレルギーの緩和作用
作用メカニズム
ケルセチンの抗酸化作用
抗酸化作用とは過剰に発生した活性酸素を抑制する作用です。体内で有効に利用される酸素の一部は、活性酸素に変化し、体内に侵入する細菌を破壊する免疫の役割を担います。
しかし、過剰に発生してしまった活性酸素は細胞を酸化させたり、遺伝子を傷つけたりして、健康を害する要因にもなります。活性酸素が大量に発生する原因は呼吸でとりこむ呼吸以外にも、排気ガス・たばこの煙・化学物質・農薬・食品添加物・ストレスなど、私たちの生活と共存しているものです。
ケルセチンをはじめとするフラボノイド類は、分子内にフェノール性水酸基をもっており、体内でヒドロキシルラジカル(・OH)や脂質ペルオキシルラジカル(LOO・)などの活性酸素・フリーラジカルに対して水素移動反応を起こすことによって強力な抗酸化作用を示すといわれています。詳しいメカニズムは明らかでなく、研究が進められています。
ケルセチンと動脈硬化予防のメカニズム
ケルセチンは抗酸化力が強く、動脈の硬化を防いで、血液の流れを良好にする作用があります。動脈硬化は次の流れで進行します。
血管に傷ができる
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傷口から酸化されたLDL(悪玉コレステロール)が内膜にとりこまれる
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白血球の一種であるマクロファージが酸化されたLDLを取り込む
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マクロファージは処理できなくなると、泡沫細胞に変化して死んでしまう
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死んだ泡沫細胞がアテローム(粥状物質)となり、血管壁に沈着して血管内腔が狭くなる
↓
血流が悪化し、血管の弾力性が衰えてくると動脈硬化が進行し、それが脳梗塞や心筋梗塞など重症な症状を引き起こす要因となる
コレステロールを運ぶLDL(悪玉コレステロール)は、過剰になると血液中に停滞し、その後血管壁に付着していきます。LDLは活性酸素に攻撃を受けると酸化され、マクロファージ(※1)が体を守るために、酸化LDLを取り込んでいきます。この状態が続くと血管内側に泡沫細胞が蓄積して血管が狭くなり、血流が悪化して動脈硬化を招く要因となります。
ケルセチンが持つ抗酸化作用は、過剰に発生する活性酸素を除去し、LDLの酸化を防ぐ働きです。血管に与えるダメージを軽減し、動脈硬化の抑制に効果を発揮しています。
ケルセチンの血糖値低下作用のメカニズム
ケルセチンは膵臓から分泌されるホルモンの一種、インスリンの過剰な分泌を抑えて、血糖値を下げる働きがあります。
- 血中の糖分をエネルギーに変える働き
- 過度な糖分を脂肪として貯蔵する働き
- タンパク質の合成
食事で摂り入れた糖質は小腸で吸収され、肝臓に運ばれる
↓
糖質はブドウ糖(単糖類)に分解され、体内のエネルギーとして利用される
↓
過剰な糖質はインスリンの働きでグリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられる
↓
体内の過剰な糖質は脂肪として脂肪細胞に蓄えられる
↓
ケルセチンをはじめとするポリフェノールはインスリンの過剰な分泌を抑えて、血糖値を低下させる作用や脂肪の蓄積を減らす
体内に糖質が入ると、膵臓のランゲルハンス島からインスリンが分泌されます。血糖が全身に運ばれると、臓器は血糖をとり込んでエネルギーとして利用したり、タンパク質の合成や細胞の増殖を促進したりします。食後に増加する血糖はインスリンの働きで一定量に保たれています。
しかし、インスリンの分泌量が減ったり、働きが悪化したりすると、血糖値が下がらず、高血糖状態が続いてしまい、糖尿病を引き起こす原因となります。
ケルセチンをはじめとするポリフェノールはインスリンの過剰分泌を抑えて、血糖値の上昇を抑える作用があり、糖尿病の予防に効果が期待されています。一般的に玉ねぎが糖尿病の予防に効果が高いと言われるのは、玉ねぎにケルセチンが多く含んでいるためです。
ケルセチンのコレステロール低下作用のメカニズム
ケルセチンはコレステロールの吸収を抑える働きがあります。
食事で摂り入れたコレステロールは小腸から体内に入る。
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小腸ではコレステロールを吸収するタンパク質(NPC1L1)がコレステロールを体内に運ぶ。
↓
ポリフェノールはタンパク質(NPC1L1)の働きを阻害して小腸でのコレステロール吸収量が減る。
ケルセチンは腸上皮に発現するタンパク質のNPC1L1を阻害することによって、食事由来の血中コレステロール濃度の上昇を予防することが明らかにされています。ケルセチンをはじめとするポリフェノールの摂取により、食事からの過剰なコレステロールの吸収が抑えられると期待されています。
ケルセチンのアレルギー緩和作用のメカニズム
ケルセチンには抗炎症作用、抗アレルギー作用があることが知られています。
アレルゲン(抗原)が体内に侵入
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免疫細胞が反応して、抗体をつくる
↓
アレルゲン(抗原)と抗体が結合
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免疫細胞の肥満細胞がヒスタミンやロイコトリエンを放出
↓
神経や血管を刺激して、アレルギー症状を引き起こす
アレルゲン(抗原)が体内に侵入すると、免疫細胞が反応し、抗体がつくられます。抗体は肥満細胞(免疫細胞)とくっつき、ヒスタミンやロイコトリエンと呼ばれる化学物質を分泌します。これが腫れ・炎症・発疹・目の痒み・くしゃみなどの症状を引き起こします。
ケルセチンは、炎症物質のヒスタミンの発生を抑えて、アレルギー症状の軽減に役立っています。
科学的データや報告

ヒトの腸管でコレステロールの吸収を担うタンパク質の輸送メカニズムを明らかにし、この分子を阻害するポリフェノール(ルテオリンとケルセチン)をみいだしました。ルテオリンとケルセチンの摂取は食事からの過剰なコレステロール吸収を抑制することから、これらのポリフェノールの摂取が高コレステロール血症の予防に繋がる可能性があります。
ケルセチンを投与したグループは筋肉の低下が抑えられることを実証。ケルセチンの抗酸化作用により活性酸素が除去されることで、筋肉の減少を抑えて関節痛の緩和に効果を発揮しています。
野菜、果実、茶、ワインに多く含まれるケルセチンには高い抗酸化力があり、骨粗しょう症予防や抗がん作用、循環器系疾患の予防に役立つと考えられています。
物誘導糖尿病ラットに、たまねぎを含んだ餌(ケルセチン量0.023%) を12週間摂取させたところ、血糖値ならびに酸化ストレス指標が改善されました。この点において、ケルセチンが糖尿病予防に期待されています。
ケルセチンが小腸のリポタンパク質代謝関連遺伝子、特にアポB遺伝子の発現を低下させることを見出し、ケルセチンによる新たな脂質代謝改善効果の可能性を示しています。
ラット大動脈の実験からケルセチンに血管弛緩作用があることを明らかにし、次いで、ラット腸間膜動脈の実験から,EDHF(血管内皮由来過分極因子)による血管弛緩作用を示すことを解明しています。
ケルセチンの摂取がおすすめの人
ケルセチンの摂取は以下のような人におすすめです。
生活習慣病を予防したい人
ケルセチンは抗酸化作用により、過剰に発生する活性酸素を抑制してコレステロールの酸化を防ぎます。
血管壁にコレステロールや中性脂肪の蓄積が減ると、血流が良好になり、血管への負荷が減り、生活習慣病(動脈硬化、高血圧など)の予防に役立ちます。
関節痛を緩和したい人
筋肉は加齢とともに減少し、高齢になると運動する機会が減ることも加えて、やせ細っていきます。
ひざの痛みは筋肉が減少して関節を支えきれなくなり、
軟骨がすり減ることでおこります。ケルセチンは、抗酸化作用により活性酸素を除去することで、血流を改善して筋肉の減少を抑制します。
アレルギー症状を緩和したい人
ケルセチンには、腫れ・炎症・発疹・目の痒み・くしゃみなどの症状を引き起こす原因となる炎症物質のヒスタミンの発生を抑える作用があります。
ケルセチンの摂り方
ケルセチンは水溶性のため、食事で継続して摂取することが必要です。
ケルセチンが含まれている食品・サプリメントなど
ケルセチンは玉ねぎ、アスパラガス、ブロッコリー、モロヘイヤ、パセリ、りんご、ぶどう、そばなどに多く含まれています。その他、ケルセチン配合のサプリメントやドリンクなども開発されています。
食品名 | ケルセチン量 |
玉ねぎ100g (中1/2個) | 40mg |
アスパラガス 100g (約4本) | 21.7mg |
絹さや 50g (約20さや) | 15.0mg |
りんご 100g(約1/2個) | 4mg |
ブロッコリー100g (約1/2株) | 2mg |
ケルセチンの摂取目安量
1日当たりの摂取目安量は100㎎~500㎎とされています。1日に玉ねぎ半個~1個摂取すると、ケルセチンが40mg~80mg摂れ、健康効果が高いとされています。しかし、毎日継続して摂るには相当な分量になり、食事で十分に摂取するのが難しいときは、サプリメントや栄養ドリンクも利用してみましょう。
効果をアップさせる摂り方
ケルセチンは油と摂取すると吸収率があがるため、肉類・乳製品・ナッツ類と合わせた調理法や、油で炒める調理で摂ると良いでしょう。また、ケルセチンは野菜や果物の外皮に多く含まれているので、皮ごと食べられる食材は皮を捨てずに活用してみましょう。
ケルセチンサプリメントの選び方
ポイント1:原料
ケルセチンは玉ねぎに多く含まれ、その健康効果は高く評価されています。しかし、調理で廃棄してしまう皮の部分に有効成分が多く含まれているため、毎日の食事で玉ねぎを食べていても、十分量摂取出来ていないことがあります。そのため、玉ねぎの皮から抽出したエキスが配合されたサプリメントを利用すると吸収率が高まります。
ポイント2:安全性
原産国、加工工程、品質管理が徹底している商品を選ぶようにし、また、購入後にサポート体制があるメーカーは信頼性が高く、リピーターも多くいます。
ポイント3:価格
毎日飲むサプリメントですので、続けられやすい価格の製品を選び、継続して摂取していきましょう。1カ月あたり2,500円~3,000円が適正価格です。
ケルセチンサプリの摂り方
摂取量
製品に記載されている用量を守り、継続して摂取してください。1日に1度にまとめて摂るより、2~3回にわけて摂る方が体への吸収はよいです。
効果的な飲み合わせ
シクロアリインを配合したサプリメントが注目をあびています。シクロアリインは生の玉ねぎにわずか0.1%未満しか含まれていませんが、血流改善に効果の高いアミノ酸です。玉ねぎを使った料理では微量にしか摂取できず、濃縮エキスを配合したサプリメントが販売されています。
効果が出るまでの期間
体質改善には3か月は継続して摂取し、体調の変化を確認してみてください。
ケルセチンサプリの注意点と副作用
副作用
ケルセチンは水溶性のため、過剰に摂取した分は体外へ排泄されます。サプリメントとして摂取する場合は、吸収率がよく、過剰摂取することがありますので、商品の用量に従って摂取してください。過剰摂取による副作用として頭痛、手足のしびれを引き起こす可能性があります。
また、シプロフロキサシン(Cipro)、エノキサシン(Penetrex)、ノルフロキサシン(Chibroxin 、 Noroxin)、スパルフロキサシン(Zagam)、トロバフロキサシン(Trovan)などの抗生物質はケルセチンにより効力が低下する恐れがあるため、服用中の方は医師にご相談ください。
妊娠や授乳中、子ども、持病のある方、服用中の方はサプリメントを摂取する際は、医師にご相談ください。
保管方法
直射日光があたる場所、空調や電化製品による急激な温度変化のある場所は避けて、涼しいところに保管してください。
ケルセチンサプリについてのQ&A
サプリメントは成分が凝縮されており、また、加熱による成分の損失が少なく、吸収率があがります。手間や吸収率を考慮すると、サプリメントは手軽に栄養補給できる点が優れています。
原産地、加工工程、品質管理が徹底している商品を選ぶようにしてください。ハウス食品で製造されている商品は品質管理が行き届き、安心できます。
効能はどちらも同じように期待できます。サプリメントの錠剤は持ち運びに便利ですが、錠剤を呑みこみづらい方は、粉末タイプを水に溶かして摂ると体への負担が減らせます。ご自身の摂りやすい方を生活習慣に合わせて選んでみてください。
ケルセチンのまとめ
ケルセチンは玉ねぎやブロッコリー、りんごなど身近な野菜や果物に含まれるポリフェノールの一種です。ビタミンと似た働きを持つビタミン様物質に分類され、強い抗酸化作用があります。主に血流を良好にする働きがあり、動脈硬化の予防、降圧作用、血糖値を下げる作用に効果の高い成分です。
ケルセチンは野菜や果物に含まれているビタミン様物質として、血流を改善し、動脈硬化予防、コレステロール低下作用などの働きが知られています。ポリフェノールの一種として、抗酸化作用による健康効果が認められ、数多くの研究報告が発表されています。
米国にて高等教育終了後帰国し、食物栄養学部を卒業。大学研究室にて秘書、翻訳を経験後、現在管理栄養士として栄養関連記事の執筆、栄養指導、英日・日英翻訳に従事。
「シンプルな食スタイルで元気になりたい」こんな思いを伝えていきたいと、日々探求しています。