若いうちは気にしなくても、年を重ねるごとに感じる体の違和感・・・
肌の張りがなくなった、疲れやすくなった、風邪をひきやすくなった・・・
このようなことを思ったことはありませんか?
できるだけ長く若さを保つために重要なことをお教えします。
目次
加齢とアンチエイジング
人間は生きている限り歳をとっていきます。
体力的にも精神的にも20歳から25歳くらいでピークを迎え、あとは徐々に老化していきます。
老化は徐々に始まっていくため、なかなか気づきづらいですが、30歳を過ぎたころから心身の衰えを感じるようになります。
最も顕著なのは疲れやすくなることではないでしょうか。
20代の頃はできていた徹夜やスポーツなどがだんだんとできなくなっていく、夜しっかり寝たはずなのに疲れが取れていない、などの自覚から老いを感じ始めることが多いです。
また女性では、肌のハリが低下していくことで老いを感じることもあるでしょう。
加齢は自然な生理現象です。
どんな人であれ避けることはできません。
しかし同い年の人の中にも若々しく見える人がいるように、加齢を遅らせて若々しい心身をできるだけ維持することは可能です。
老化を遅らせ、若々しさを維持する、それがアンチエイジングの考え方と方法論です。
老化の原因は活性酸素!健康維持にも必要だが、多すぎると健康な細胞を攻撃してしまう
老化には「活性酸素」が大きく関わっています。
人間は酸素を吸い、エネルギーを作り出しています。
酸素は生きるために必要不可欠な物質ですが、人間が体内に取り入れた酸素の数%は「活性酸素」となってしまいます。
活性酸素は強い酸化力を持っており、体内に侵入した細菌やウイルスを攻撃する役割を果たします。
細菌やウイルスに負けずに健康的に生活するために、重要な働きをする物質です。
活性酸素は血管の老化を早める
活性酸素は酸化力が強いため、過剰に生成されると健康な細胞まで攻撃してしまいます。
例えば、活性酸素が中性脂肪やコレステロールを酸化してしまうと「過酸化脂質」になります。
過酸化脂質は動脈硬化の原因となり、血管の老化を早めます。
活性酸素はしみ・たるみ・しわの原因
活性酸素が「皮膚線維芽細胞(ひふせんいがさいぼう)」を攻撃すると、肌の調子が悪くなってしまいます。
皮膚線維芽細胞はコラーゲンやヒアルロン酸、エラスチンといった、肌の土台となる成分を作り出す細胞です。
活性酸素により皮膚線維芽細胞の働きが弱まると、それらコラーゲンなどの物質の合成量も低下して、肌のハリがなくなってしまいます。
そのためシワやたるみ、シミなどの肌の老化を促進させてしまいます。
活性酸素の発生原因と、害から体を守る方法
現代社会で活性酸素を過剰に生成させないように生活することは非常に難しいため、いかに活性酸素の害を減らすかがアンチエイジングにとって重要になります。
活性酸素の害を減らすときに重要なのが「抗酸化物質」です。
抗酸化物質は活性酸素を還元(無毒化)する働きがあり、老化を抑えるために重要です。
抗酸化物質には、ビタミンCやビタミンE、βカロテン、セレン、リコピン、カテキンなどが該当します。
これらの成分を十分に摂取することで、老化を遅らせ、アンチエイジングをすることができます。
食生活で体年齢を若く保つ!~アンチエイジング食事・サプリ編~
十分な抗酸化物質を摂取することはアンチエイジングをするために非常に重要です。
人間の体にはもともとSOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)という酵素を作り出す働きがあります。
SODは抗酸化物質の一つで、活性酸素を無毒化してくれます。
しかし、特に40歳を過ぎた頃から、SODの体内での合成量は低下してしまいます。
SODが減少するとその分、活性酸素の害を受けやすくなってしまいます。
そのため歳をとればとるほど、食事から抗酸化物質を摂取することが重要になります。
食事やサプリメントでアンチエイジングするときは以下のポイントに気を付けてみましょう。
野菜と果物を豊富に食べる
抗酸化物質は野菜や果物に非常に豊富に含まれています。
柑橘類やキャベツ、ピーマンなどに多いビタミンC、ニンジンやカボチャに多いβカロテン、ブルーベリーなどに多いアントシアニン、トマトに多いリコピン、玉ねぎに多いケルセチンなど、野菜と果物には無数の抗酸化物質が含まれています。
「サプリメントどれか一つでいい」と思うかもしれませんが、抗酸化物質は複数摂取したほうが効果は高まります。
様々な野菜と果物を食べることで、複数の抗酸化物質を摂取する習慣をつけることがアンチエイジングに効果的です。
野菜と果物を十分に摂取しつつ、さらに自分が期待する効果をもつ成分が含まれたサプリメントを飲むようにするとよいでしょう。
野菜・果物の正しい食べ方
量
目安として、1日に350gの野菜と200gの果物を食べるようにしてみてください。
抗酸化力の高い野菜の特徴
できるだけ色の濃い野菜や果物を食べるように心がけるとよいです。
植物の色素は紫外線などのダメージから身を守るために高い抗酸化作用を持っています。
色が濃ければ濃いほど抗酸化作用も高い傾向にあります。
種類
ニンジンやトマト、ホウレンソウ、カボチャ、ピーマン、イチゴ、ブルーベリー、アボカドなどがおすすめです。
摂り方
市販の野菜ジュースは製造の過程で栄養素が壊れているため、なるべく生の野菜・果物を摂取するとよいでしょう。
朝食にフレッシュジュースを作って飲むのが、量を摂る手軽な手段です。
ビタミンC、E、βカロテンを摂取する
ビタミンC、ビタミンE、βカロテン(ビタミンA)はともに必須ビタミンで抗酸化作用の強い物質です。
ビタミンEは強い抗酸化作用を持ち、細胞の酸化を防ぐ働きがあります。
ビタミンCも同じく強い抗酸化力を持ちますが、さらに酸化を防ぐために消費されたビタミンEを再生させる働きを持っています。
βカロテン(ビタミンA)は強い抗酸化力を持つほか、体内で使われなかった分は皮膚に蓄積され、必要な時に使われるという性質があります。
このビタミンC、E、βカロテン(ビタミンA)を合わせてビタミンACE(エース)と呼ぶこともあります。
これらの3種類のビタミンを併せて摂取することで、抗酸化作用が高まるためです。体内の老化、皮膚の老化どちらにも効果を発揮するビタミンなので、ぜひとも日常的に摂取するようにしましょう。
ビタミンACEの摂取方法
ビタミンA(βカロテン)
βカロテンには摂取目安量の設定がされていません。
βカロテンはなるべく食品から摂取したほうがよい成分で、ニンジンやカボチャなどから摂取するとよいでしょう。
目安としては1日にニンジン半本ほどです。
ビタミンC
ビタミンCの摂取推奨量は100mgですが、水溶性ビタミンなので、過剰に摂取しても体外に排出されてしまうため、過剰症の心配をせずに摂取することができます。
ビタミンCは野菜や果物、緑茶に豊富に含まれるほか、ペットボトル飲料の酸化防止剤としても添加されているため、不足することはまずありません。
しかし1日に1000mgほど多めに摂取するとより、アンチエイジングに効果的だと考えられています。
ビタミンCを1000mg摂取するのは食品からでは難しいので、サプリメントを利用するとよいでしょう。
ビタミンCは水溶性ビタミンで過剰摂取の心配がない反面、一度にたくさん摂取しても、その時必要以上の分は尿として体外にすぐ排出されてしまうという性質があります。
ですので、1日に複数回に分けて摂取するのがコツです。
ビタミンEビタミンEの推奨摂取量は1日6.5mg/男性、6mg/女性ですが、耐用上限量(1日にそれだけ摂取しても問題がない数値)は900mg/30代男性、700mg/30代女性と、非常に多いです。
ビタミンEの抗酸化力は非常に高く、血管や皮膚の老化を防ぐために効果的なので、サプリメントで追加して多めに摂取するとよいでしょう。
その際は、ビタミンCも一緒に摂取するとなお効果が高まります。
ただしビタミンEは脂溶性ビタミンであり、過剰に摂取してしまうと過剰症が現れることもあるため、上記の耐用上限量を超えて摂取することは避けましょう。
健康効果のある飲み物を選んで飲む
緑茶、紅茶、ウーロン茶、コーヒーなどのお茶類には抗酸化物質が豊富に含まれています。
緑茶にはカテキン、紅茶にはテアフラビン、ウーロン茶にはウーロン茶ポリフェノール、コーヒーにはクロロゲン酸などです。
水分補給の際にこれらの飲み物を飲むことは、抗酸化物質の良質な供給源となるため、ぜひ習慣化しましょう。
お茶類の摂取量に基準はありませんが、1日に1000mlほど摂取すると効果が高いと考えられています。これは小さめの湯飲み10杯分ほどです。
お茶類にはカフェインも含まれているため、飲みすぎると夜寝付きづらくなったり、むくみが生じたりする可能性もあります。
自分の体質も考えたうえで、飲み物の種類や量を調整しましょう。
カフェインが含まれたお茶類を避けたい場合は、ビタミンCの豊富なハイビスカスティーや、ポリフェノールの一種「ルチン」を含むそば茶がおすすめです。
お酒を飲むときは赤ワインを選ぶ
赤ワインにはアントシアニン、タンニン、レスベラトロールなどの非常に豊富な抗酸化物質が含まれています。
特にレスベラトロールはアンチエイジングに高い効果を発揮します。抗酸化作用により、活性酸素の害を無毒化するほか、レスベラトロールは肌に対してよい影響を与えます。
人間には、肌の土台となっているコラーゲンを分解する酵素「マトリックスメタロプロテアーゼ」があります。
この酵素が働きすぎると、コラーゲンが分解されて肌の土台部分が崩れ、シワやたるみの原因となってしまいます。
レスベラトロールはこの酵素、マトリックスメタロプロテアーゼがコラーゲンを分解する働きを抑制し、肌のハリを維持する効果があると考えられています。
赤ワインはレスベラトロールが多く含まれる代表的な食品です。
適量(1日にワイングラス2杯程度)を守ったうえで、休肝日も作って適度に肝臓を休ませつつ摂取すると、アンチエイジングに効果的です。
お酒が苦手な人はシチューや煮込み料理などの隠し味として使うとよいでしょう。
レスベラトロールは日常的に摂取しようとするとなかなか難しい成分です。食品からだけではなく、サプリメントから摂取するのも効果的です。
化粧品選びで肌年齢を若く保つ!~アンチエイジング美肌編~
肌の酸化は、ハリがなくなるだけではなく、シミやたるみ、シワの原因となってしまいます。
もちろん食品やサプリメントから抗酸化成分を摂取することで、肌が酸化していくのを予防することができます。
しかし化粧水や美容クリームなど、肌に直接塗るスキンケア製品と併用することで、さらに抗酸化作用を高めることができます。
アンチエイジングに役立つスキンケア成分には以下のようなものがあります。
ビタミンC誘導体配合の化粧品を使う
ビタミンC誘導体のアンチエイジング美肌へのメカニズム
ビタミンCは高い抗酸化作用を持ち、さらに美白効果や皮脂の分泌を抑制する作用がある成分です。
ビタミンCの美白効果や皮脂を抑制する働きは、サプリメントや食品として摂取した時よりも、スキンケア製品として肌に塗ったときのほうが高くなります。
しかしビタミンCは不安定な物質で、皮膚に塗ったとしても十分に浸透せず、すぐに壊れてしまうという特徴があります。
一方、ビタミンC誘導体は人間の体内でビタミンCに変化する物質です。
ビタミンCよりも安定している物質のため、壊れることなく肌に浸透していきます。
ビタミンC誘導体が肌の酸化を防ぐことで、皮膚繊維芽細胞への活性酸素の害を減らし、肌のハリを保つ効果が期待できます。
加齢とともに肌のハリは徐々に失われていくため、若い頃からのアンチエイジングケアを始めると、差がついてくるでしょう。
またビタミンC誘導体にはシミや色素沈着の原因となるメラニン色素の生成も抑制する働きがあります。
さらに皮膚線維芽細胞に働きかけ、コラーゲンの生産量を増加させる作用も期待できます。
つまりビタミンC誘導体には、美白と肌のハリの維持の両方に効果があるのです。
ビタミンC誘導体配合の化粧品選び
ビタミンC誘導体には、水溶性(水に溶ける性質)のものと脂溶性(油脂に溶ける性質)のものがあります。
水溶性のものは化粧水に含まれることが多く、脂溶性のものは美容クリームなどに含まれることが多いです。
- リン酸アスコルビン酸ナトリウム
- アスコルビン酸グルコシド
- 3-O-エチルアスコルビン酸
- ステアリン酸アスコビル
- パルミチン酸アスコビル
- テトラ2-へキシルデカン酸アスコルビル
水溶性のものは即効性と効果が高い、脂溶性のものは効果の持続時間が長いという特徴があります。
またビタミンC誘導体のなかには、水溶性・脂溶性どちらの性質も持っているものも存在します。
水溶性だけ、脂溶性だけのビタミンC誘導体よりも効果が高く、「最強のビタミンC誘導体」ともいわれます。
それは「APPS」、「アプレシエ」などと呼ばれ、成分名としては「パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na」という表記がされます。
化粧水や美容クリームなどを選ぶ際はこのAPPSが含まれたものを選ぶとアンチエイジングに効果的です。
- 日常生活の中でたっぷりと使いたい化粧水は水溶性ビタミンC誘導体
- なるべく効果を長く持続させたい美容クリームなどはAPPS
紫外線対策を絶対に欠かさない
肌の老化には紫外線も大きな影響をもたらします。
紫外線による肌へのダメージは一見、なんともないように見えても徐々に蓄積されていき、年齢とともにシミや色素沈着、肌のたるみ、シワなどが現れる原因となります。
肌にとっては活性酸素よりも、紫外線がより大きな影響を与えることもあるため、紫外線対策は日常的に行っていく必要があります。
詳しくは、次のシミ対策の記事で具体的な方法をご紹介しています。
正しい保湿を行い、肌のバリア機能を維持する
皮膚繊維芽細胞は、コラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸といった肌の土台となる成分を合成する重要な細胞です。
皮膚繊維芽細胞の働きを維持することがアンチエイジングにおいては必要になります。
そのために重要なのが、肌のバリア機能を維持することです。
肌にはバリア機能があり、細菌やウイルス、紫外線、摩擦など様々な刺激からの防御を行います。
肌は古い細胞が新しい細胞にターンオーバーしていくことで、健康を保ちますが、肌のバリア機能が低下するとターンオーバーが遅れがちになってしまいます。
ターンオーバーがうまく行われないと、古い肌がどんどん溜まっていってしまって、シミやくすみの原因となってしまいます。
肌のバリア機能を保ち、正常なターンオーバーを行わせるためには、十分な保湿がもっとも必要です。
年とともに保湿作用のある皮脂や、NMF(天然保湿因子)、細胞間脂質の分泌や合成力も低下していくため、化粧水や美容クリームなどで油分を補わなければならなくなってきます。
抗酸化作用とともに、保湿力の高い成分が含まれた化粧水や美容クリームを選ぶようにしましょう。
有効成分としては、人間の肌になじみ、保湿力が高い成分であるセラミドやコラーゲン、エラスチンなどがあります。
詳しくは、こちらの乾燥肌対策記事にて詳しく解説しています。
アンチエイジングによくあるQ&A
老化は病気ではないため、健康保険などを適用することはできませんが、美容クリニックで施術を受けることは可能です。代表的な施術は高濃度ビタミンC注射が挙げられます。
食品やサプリで消化器からビタミンCを吸収して血中の濃度を上げるのは限界がありますが、直接血中に注射をすれば、ビタミンC濃度を上げ、効果を上げることが可能です。
一週間に一度ほど、ビタミンC注射をすることでアンチエイジングに効果を発揮します。
ビタミンC注射は健康保険の効かない自由診療ですので、価格はそれぞれのクリニックで異なりますが、1回5千円から1万円程度のクリニックが多いです。
美容皮膚科で「イオン導入」を受けることが可能です。これは、肌に微弱な電流を流すことで有効成分より肌の奥まで浸透させる施術です。
コラーゲンやエラスチンなどを合成する皮膚線維芽細胞は、表皮の奥の真皮に存在するため、イオン導入を行うことによって有効成分をその奥の真皮まで深く浸透させると効果が高いです。
その深部までへの浸透により、コラーゲンやエラスチンの生成を促進させる効果が期待できます。
皮膚のハリやシミなどが気になり始めた人におすすめの施術です。
イオン導入は1-2週間に1回程度を継続的に行うことで肌の調子が上がっていきます。自由診療のため、価格はそれぞれのクリニックで異なりますが、顔ならば1回5千円から7千円程度のところが多いのではないでしょうか。部位が広くなればなるほどその分価格も上がります。
睡眠時間を十分に確保するようにしましょう。
適切な睡眠時間は人によって異なりますが、それでも最低6時間は必要です。
睡眠中には性ホルモンや成長ホルモンなど新陳代謝に関わるホルモンが分泌されやすくなります。
十分に睡眠を確保することで新陳代謝が活発になり、若々しさを保つことができます。
アンチエイジングは「若返り」ではなく「老化を遅らせること」です。
そのため年齢が若いうちから始めるに越したことはありません。
20代のうちから気をつけておけば、40代、50代での肌のハリや活力が大きく異なるでしょう。
もちろんいつ始めても遅すぎるということはありません。肌や体力に衰えを感じたらアンチエイジングケアを開始することが重要です。
アンチエイジングのまとめ
アンチエイジングとは、「若返り」ではなく、老化を遅らせ、若々しさを維持することです。
人間の身体的・精神的なピークは20歳から25歳程度で迎え、あとは徐々に老化していきます。
老化自体は自然な生理現象であるため、決して悪いものではありません。
しかし早めにエイジングケアをすることで、若々しさを保つことは可能です。
老化には活性酸素が大きな影響を与えます。
活性酸素の害を無毒化する食品・成分を摂取したり、スキンケアとして肌に塗ったりすることで老化を遅らせ、心身ともに充実した歳の重ね方をしていきましょう。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。