疲れているのに眠れないとつらいですよね。
寝よう寝ようと思うと余計プレッシャーになってしまいより眠れなくなってしまうことも。
疲れているのに眠れないとき、脳内で何が起こっているのでしょうか?
不眠の原因と対処法を解説します。
目次
不眠症とは
- 夜間中々入眠出来ず寝つくのに普段より2時間以上かかる入眠障害
- 一旦寝ついても夜中に目が醒め易く2回以上目が醒める中間覚醒
- 朝起きたときにぐっすり眠った感じの得られない熟眠障害
- 朝普段よりも2時間以上早く目が醒めてしまう早朝覚醒
などの訴えのどれかがあること。
そしてこの様な不眠の訴えがしばしば見られ(週2回以上)、かつ少なくとも1ヵ月間は持続すること。
不眠のため自らが苦痛を感じるか、社会生活または職業的機能が妨げられること。
などの全てを満たすことが必要です。
なお精神的なストレスや身体的苦痛のため一時的に夜間良く眠れない状態は、生理学的反応としての不眠ではありますが不眠症とは言いません。
不眠症のつらいところは「疲れているのに眠れない」「疲れているのに何度も起きてしまう」などによって睡眠の質が低下してしまうことです。
睡眠は心身の休息に重要な役割を果たしていますが、睡眠の質が低下してしまうと、倦怠感や意欲の低下、うつ状態、頭痛、吐き気、食欲不などの様々な症状が現れてしまいます。
不眠症は決して稀な病気ではなく、現代日本では5人に1人が悩んでいるとされています。
なお睡眠時間が人より少なくても日常生活に支障が生じなければ不眠症ではありません。
不眠症が起こる原因
- 精神的なストレス:
ストレスを感じると人間は交感神経が刺激されます。交感神経は心身を緊張させたり興奮させたりする働きがあるため、ストレスが不眠症を招く可能性があります。 - うつ病:
うつ病患者はセロトニンという神経伝達物質のレベルが低くなっている傾向にあります。セロトニンは睡眠の周期に関係するため、セロトニンレベルが低いと不眠症を招く可能性があります。 - カフェイン、ニコチンなどの覚醒作用があるもの:
カフェインやニコチンは脳を覚醒させ興奮させる働きがあるため睡眠の質を低下させます。 - 不規則なシフトによる生活リズムの乱れ:
不規則なシフト、不規則な生活リズムは覚醒と睡眠の周期を乱して不眠症を招く可能性があります。 - 睡眠時無呼吸症候群:
睡眠時無呼吸症候群により無酸素状態が発生すると脳が覚醒状態となり睡眠の質が低下します。 - むずむず脚症候群:
むずむず脚症候群は夕方以降の時間に下半身にかゆみや痛みが生じる病気です。特に入眠を妨げるため睡眠の質が低下します。 - 更年期障害の出る年代である(50歳前後くらいから):
男女ともに更年期の性ホルモンバランスの乱れや自律神経の乱れにより不眠症を招く可能性があります。 - 出産直後である:
産後は自律神経やホルモンバランスが乱れやすく、うつのような症状が現れることがあります(産後うつ)。症状の一つに不眠があります。
不眠症は共通のメカニズムで現れるものではありません。
原因を特定して、それぞれの要因を解消することで不眠症も改善されます。
もっと詳しく:むずむず脚症候群かなと思ったら。原因と解消方法をアドバイス
もっと詳しく:更年期障害を改善するサプリメントや食品とは。男女別症状や対処方法
不眠症が起こりやすい人とは?
人間には体内時計があるため健康な状態ならば朝に起床し、昼間に活動して、夜間には自然に眠気が誘発されます。
しかし様々な原因により眠気が生じなくなることがあります。
また明確な原因がなくても生活習慣や性格によって不眠が起きている場合もあります。
- 神経質、生真面目な人
- ストレスが溜まっている場合
- コーヒーや緑茶などカフェインを含むものをよく飲む場合
- 喫煙の習慣がある場合
- 不規則なシフトで就業している場合
- いびきがうるさい、歯ぎしりがあると指摘される場合
- 夕方から夜間にかけて下半身にかゆみや痛みが生じる場合
- 60歳以上の年齢である
- 寝酒をする習慣がある
- 運動不足である
今日からできる不眠対策~摂りたい成分とサプリメント~
全ての不眠の原因に対処できるわけではありませんが、脳の興奮や緊張に関わる不眠は精神を落ち着ける作用がある成分を摂取することで症状が改善できる場合があります。
ストレスや更年期、産後が原因の不眠には効果が期待できるため試してみるのもよいでしょう。
精神を落ち着ける作用がある成分には以下のようなものがあります。
GABA
GABAはアミノ酸の一種です。
人間は体内で合成することができるため、非必須アミノ酸に分類されます。
中枢神経系の神経伝達物質として働くため人間の体内では脳や脊髄に多く存在しています。
GABAは脳の興奮を鎮め、リラックスさせる作用があると考えられています。
12名の健康な若年男性に対してGABAとプラセボカプセルを摂取させ、摂取前と摂取後30分、60分の交感神経活動と副交感神経活動を定量化しました。
その結果、摂取後30分に副交感神経活動が顕著に上昇したことが示されています。
副交感神経は心身の緊張を緩和してリラックスさせる働きがある自律神経です。
夜間の休息に関わり、副交感神経が優位になることで眠気が誘発されます。
GABAを摂取することで副交感神経が優位になり不眠の症状を緩和できる可能性が示唆されています。
特に更年期や産後は自律神経のバランスが乱れやすく交感神経が優位になりやすい傾向にあります。
更年期や産後に起因する不眠はGABAによって改善される可能性が期待できるでしょう。
GABAは発芽玄米やみそ、トマト、ジャガイモ、ぬか漬けなどに多く含まれています。
和食と野菜中心の食生活を送っていれば十分に摂取できるでしょう。
また精神を落ち着かせる働きを期待するのならばサプリメントから摂取するのがおすすめです。
テアニン
テアニンはGABAと同じくアミノ酸の一種です。
緑茶の原料であるチャノキに多く含まれています。
緑茶のうまみや甘味の成分で、テアニンが日光により変化することで緑茶の渋み成分であるカテキンになります。
そのため日光を遮断して生産する玉露にはテアニンが多く含まれ甘味が強く感じられるようになっています。
テアニンは脳に余計な物質が入らないようにする脳血管関門を通過することができるアミノ酸で、摂取することでリラックス作用が現れることが示唆されています。
テアニンを経口摂取することで人間のリラックスの指標となる脳波である「α波」が誘発されることが分かっています。
脳の興奮を鎮める作用が期待できるため、入眠や睡眠時の中途覚醒を改善させる作用が期待されています。
テアニンはチャノキやチャノキと同じツバキ科の植物、一部のキノコにしか見つかっていないアミノ酸です。
施主するためには緑茶を始めとする茶飲料が有効ですが、茶飲料には同時にカフェインが含まれており脳を覚醒させてしまう働きも現れてしまいます。
テアニンを摂取する場合、カフェインが含まれていないサプリメントで摂取するのが不眠の解消やリラックスのためにおすすめです。
セントジョーンズワート
セントジョーンズワートは和名「西洋弟切草(セイヨウオトギリソウ)」と言います。
ヨーロッパを中心に不眠症やうつ病を改善するハーブとして利用されてきました。
セントジョーンズワートを摂取するとセロトニンの脳内レベルを維持して、うつの症状を緩和すると考えられています。
脳の興奮を抑え、リラックスさせる働きもあるため不眠や更年期障害、自律神経失調症などの症状の改善にも効果的です。
ヨーロッパでは軽度~中度のうつの抗うつ薬として処方されているため、一定の効果が認められています。
一方でセントジョーンズワートの有効成分は様々な薬品と相互作用があることが確認されています。
抗うつ薬や避妊薬、抗HIV薬などとの併用は避けたほうが良いでしょう。
なんらかの薬品を服用している場合はセントジョーンズワートの利用には注意して、念のため医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
今日からできる不眠対策 ~生活のコツ~
サプリメントだけではなく生活習慣の改善で不眠を解消できる場合もあります。
睡眠の質を向上させるポイントを紹介します。
運動不足
運動をすることで適度に疲労すると寝付きやすくなります。
反対に運動不足が慢性化すると、身体が疲労しないためうまく寝付けなくなることもあります。
30分程度の軽いウォーキングで構わないので、不眠に悩んでいる場合は適度に運動をするようにしましょう。
同じ時間に起床する
毎日同じ時間に起床することは覚醒と睡眠のリズムを整えるのに重要です。
遅い時間に寝てしまったからと言って起床する時間を遅らせるとその分、体内のリズムが乱れてしまいます。
起床時間がバラバラな人はまず同じ時間に起きることから始めてみましょう。
起床時に太陽の光を浴びる
寝不足時の太陽の光はつらいですが、それでも起床したらカーテンを開けて太陽光を浴びるようにしましょう。
太陽の光を浴びることで交感神経が刺激され、心身が活動する準備を始めます。
交感神経と副交感神経はシーソーのようにバランスを取り合って働くため、昼間はしっかりと交感神経を働かせ夜間は副交感神経を優位にしてリラックスすることが質の良い睡眠のために必要です。
就寝時間にこだわりすぎない
〇〇時までに寝なければ明日がつらい・・・などと思ってしまうとかえって寝付きづらくなってしまいます。
起床時間を一定にすることを心がければ就寝する時間にあまりこだわる必要はありません。
徐々に睡眠の覚醒のリズムを整えるようにしましょう。
どうしても眠気がつらければ昼寝を
日中、どうしても眠気がつらければ昼寝をするようにしましょう。
ただし昼寝をするならば15時より前の時間帯に20分程度にしましょう。
その程度ならば夜の睡眠に悪影響を与えません。
眠る前のスマホは厳禁
スマートフォンやテレビを眠気が誘発されるまで利用してしまうこともあると思いますが避けたほうが良いでしょう。
強い光は脳を興奮状態にしてしまうため寝つきが悪くなってしまう場合があります。
ベッドに入ったらスマートフォンやテレビの利用をやめましょう。
眠れないからと言って寝酒は避ける
アルコールを摂取するとリラックス効果が現れるため寝付きやすくなります。
しかし同時に睡眠中に覚醒しやすくなってしまうため、睡眠の質を低下させてしまいます。
眠れないからと言って寝酒は避けるようにしましょう。
不眠でつらい場合は我慢せず病院へ
不眠がつらいならば我慢せず病院で診察を受けるようにしましょう。
あくまで目安ですが仕事や家事に支障がでるレベルならば病院へ行くことをおすすめします。
原因を特定して対策を立てることが可能になるほか、睡眠薬を処方して貰うことも可能な場合があります。
不眠症の悩みによくあるQ&A
生理前は自律神経が乱れやすいです。
そのため心身の興奮に関わる交感神経が優位になって、不眠を招いている可能性が挙げられます。
GABAやテアニンなどの精神を落ち着ける働きのある成分を摂取したり、昼間に適度な運動をすることで入眠しやすくするなどの対策が考えられます。
また気にしすぎないことも重要です。
サプリメントは医薬品ではないため、そこまで急激に効果が現れることはまずありません。
継続して利用することで徐々に改善を目指すものです。最低1か月、できれば3か月程度様子を見るとよいでしょう。
最もよいのは睡眠外来や睡眠センターなど睡眠に特化した診療科がある病院です。
ただし全国どこにでもある科ではないことに注意しましょう。
日本睡眠学会のリストから睡眠医療認定医を探すことができます。
→「日本睡眠学会:睡眠医療認定医リスト」
近くにこれらの施設がない場合、総合内科もしくは心療内科にまずかかるとよいでしょう。
カフェインの体内での半減期はおよそ4時間と考えられていますが、個人差があり最大で8時間かかるとも考えられています。
そのため仮に23時に就寝する場合、15時以降にカフェインを含む飲料を摂取すると悪影響を与える可能性があります。
不眠の傾向がある場合、可能な限りカフェインは避け、不眠の傾向が無くても15時以降は摂取を控えたほうが良いでしょう。
不眠症対策のまとめ
不眠症になると肉体的にも疲労が溜まってしまい精神的にも不安が増大してしまいます。
原因は様々ですが脳や神経の高ぶりが原因ならば、興奮や緊張を抑えることで不眠が解消することがあります。
生活習慣の改善やサプリメントの利用で症状を改善させるほか、どうしてもつらければ医療機関で治療を受けることも検討しましょう。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。