ついイライラしてしまうことは誰にでもあります。
しかしイライラは心身に悪影響を及ぼすことも・・・
イライラが心身に与える影響と解消法を紹介します。
目次
なぜイライラするの心と体の関係
人間の心と体は密接な関係にあります。
精神的なストレスを受けるとイライラしやすくなりますし、肉体的に疲労が蓄積していってもイライラしやすくなります。
現代社会はストレスや疲労が大きな問題となっています。
しかしいつもイライラしていると精神面で悪影響が発生し、体にもその影響が及びます。
イライラはなぜ起こるのでしょうか?
「最近イライラする」よくある原因
最近イライラするという時は心身に負担がかかっているかもしれません。
イライラは様々な要因で発生します。
以下はあくまで一例ですが、イライラが起こる原因となるものです。
当てはまるものはありませんか?
- 仕事や受験などのストレス
- 忙しくて休みが取れない
- 睡眠不足(6時間未満) である
- ダイエットなどによる糖質が不足している
- 長時間の作業をしている
- 対人関係の悩みがある
- 几帳面、神経質な性格である
- 受験や面接、商談などの重要なイベントを控えている/span>
- 女性である(PMS、更年期障害)
- 40代以降である(更年期障害)
このような要因によるイライラは生活習慣を改善することでケアが可能です。
例えば過度のストレスであればストレスの原因を取り除いたり、ストレスを適度に解消したり、過労や睡眠不足であれば十分な睡眠時間を確保したり、糖質の不足であれば過度のダイエットは避け適度に糖分を摂取したりといったことが対策となります。
規則正しい生活や十分な栄養摂取に睡眠、適度な運動などを行うことでイライラしにくくすることができるでしょう。
病気によって引き起こされるイライラ
生活習慣ではなく病気によってイライラしてしまうこともあります。
以下のような病気はイライラの症状を発症させる可能性があるので注意しましょう。
PMS(月経前症候群)
女性は生理周期によってホルモンバランスが大きく変わります。
そのため心身に様々な不調が現れます。
精神的な症状で現れやすいものにイライラがあります。
更年期障害
女性は閉経が近づくと卵巣の機能が低下して女性ホルモンの分泌量が低下します。
ホルモンバランスの乱れにより心身に不調が現れます。
PMSと同じく精神的な症状としてイライラが出やすいです。
自律神経失調症
自律神経は交感神経と副交感神経からなる神経です。
人間が全身の臓器などをコントロールするため常に働いています。
交感神経と副交感神経はシーソーのようにバランスを取り合い働いていますが、そのバランスが崩れると心身に様々な不調が現れます。
その一環としてイライラが現れることもあります。
うつ病
ストレスや環境の変化により心のバランスが崩れるとうつ病になってしまうこともあります。
不安を感じるようになり、イライラしやすくなってしまいます。
イライラの解消に役立つ食品、成分
病気によるイライラはそれぞれ治療の必要があります。
しかし生活習慣によるイライラの場合は食品やサプリメントによってその症状を軽減させることができるかもしれません。
イライラを抑えるには規則正しい生活やストレスの解消、十分な睡眠などが基本になります。
あくまで補助的なものとして試すようにしましょう。
セントジョーンズワート
セントジョーンズワートは和名「西洋弟切草(セイヨウオトギリソウ)」というハーブの一種です。
欧州では非常に古くから民間薬として使用され、特に不眠やうつ病などの解消にしようされてきました。
あくまで民間薬として使用されてきましたが、1900年代後半に入り、セントジョーンズワートが抗うつ剤と同様の働きをすることが判明して欧州やアメリカでポピュラーなハーブとなりました。
1980年代にはドイツでうつ病の症状を改善する薬品として認可が下りています。
脳内の神経伝達物質の一つに「セロトニン」というものがあります。
精神の安定や安心感、安らぎに関わる神経伝達物質で、うつ病の人や不眠症の人は不足しやすい傾向にあります。
セロトニンは精神の安定に関わるため、不足しているとイライラしやすくなってしまいます。
セントジョーンズワートに含まれる「ヒペルフォリン」という成分が脳内のセロトニンの量を保ち、うつ症状やイライラを軽減すると考えられています。
セントジョーンズワートはドイツでは薬品として認可されているように比較的作用の強いハーブです。
妊婦や授乳中の女性は摂取しないように注意しましょう。
また既往症でなんらかの医薬品を服用している場合はセントジョーンズワートを摂取してもよいか医師に相談するようにしましょう。
抗HIV薬や抗うつ薬、ワーファリンなどは併用がおすすめできません。
イチョウ葉
イチョウ葉から抽出されるイチョウ葉エキスには非常に様々なフラボノイドが含まれています。
フラボノイドはポリフェノールの一種であり、植物の色素や苦みなどのもととなっている成分です。
フラボノイドの種類は多岐に渡り、広く知られているものにはブルーベリーのアントシアニンや緑茶のカテキンが該当します。
イチョウ葉には様々な種類のフラボノイドが含まれていますが、特に「二重フラボン」と呼ばれるものが重要な成分となっています。
この二重フラボンは現在のところ、イチョウ葉に特有の成分で通常のフラボノイドよりも強い抗酸化作用を持っています。
またイチョウ葉には血管を拡張する働きがあるため、脳への血流を増加させる働きも期待できます。
脳への血流が増加すれば、脳の栄養素であるブドウ糖や酸素が十分に供給され、活発に働きようになり、イライラしづらくなる働きが期待できます。
ただしイチョウ葉には「ギンコール酸」というアレルギーの原因となる物質が含まれています。
イチョウ葉サプリメントを選ぶ際はギンコール酸が除去されたものを選びましょう。
また抗血栓薬(ワーファリンなど)との併用は基本的に進められません。
まずは医師に相談するようにしましょう。
カルシウム
カルシウムは牛乳や大豆加工食品などに多く含まれる必須栄養素です。
人体に最も多く存在するミネラルで、体内の存在量の99%は骨にあります。
しかし残りの1%弱は血液や細胞の中に存在して、身体の機能の調節に働いています。
カルシウムは日本人が最も不足している栄養素と言われており、通常の食生活を送っているだけでは不足する傾向にあるため、意識して摂取することが重要です。
不足すると骨粗鬆症や骨折のリスクを上げてしまいます。
またイライラしやすくなってしまうこともあります。
カルシウムは脳の神経の興奮を抑える働きがあります。
そのためイライラを鎮める働きも果たします。
しかしカルシウムは血中の存在量が減少したら骨から溶け出し、一定の濃度に保たれるようになっています。
カルシウムだけでは残念ながらイライラに対して強い効果があるわけではありません。
しかし慢性的にカルシウム不足が続き、骨から血中にどんどん溶けだしてしまうと、骨が脆くなっていってしまいます。
「イライラを鎮めるため」ではなく「イライラを鎮める機能を保つため」として、普段からカルシウムの摂取を意識しましょう。
ビタミンB6
ビタミンB6はビタミンB群に属する必須ビタミンの一つです。
主な役割としてはタンパク質の代謝が挙げられます。
食品から摂取することができるほか、腸内細菌の働きによっても合成されるため、不足することはほとんどありません。
ただしサプリメントとして摂取するとPMS(月経前症候群)に起因するイライラの解消に効果があることがあります。
ビタミンB6は女性ホルモンであるエストロゲンの代謝にも関わります。
PMSは、エストロゲンを始めとする女性ホルモンのバランスが乱れることで発症します。
ビタミンB6をサプリメントとして大量に摂取することにより、エストロゲンの分泌量が増加してPMSの症状が軽減されます。
GABA
GABAはアミノ酸の一種です。
人体を構成するタンパク質の材料とはならず、機能性を示すアミノ酸です。
GABAはもともと人体内にも存在して脳内で神経伝達物質として働きます。
脳を興奮させる神経伝達物質である「アドレナリン」の分泌を抑制し、心身がリラックスできるようにする働きがあります。
特に更年期障害はアドレナリンの分泌量が増加し、興奮しやすいためイライラしてしまいがちです。
GABAを摂取することで神経の興奮が抑えられ、イライラを落ち着かせる働きが期待できるでしょう。
日常的なストレスに晒され、交感神経が優位になっている人のイライラを解消させる働きも期待できます。
イライラしにくくなるためのリラクゼーション方法
イライラを予防するためには心身をしっかりとリラックスさせることが必要です。
イライラを鎮めるため、以下のようなリラクゼーションを日常生活に取り入れてみましょう。
適度な運動
隣の人と話しながら走れるくらいのスピードでジョギングをしてみることをまずは試してみましょう。
適度に体を動かすことで精神的なストレスが軽減され、イライラしにくくなります。
毎日やる必要はありませんが1週間につき2-3回の習慣にするとよいでしょう。
またヨガやピラティスもおすすめです。
単純に運動になるためストレスが軽減されるということ、呼吸を重視することで自律神経のバランスを保つようにできること、(ヨガは)瞑想を取り入れ心のバランスを整えることも重要視していることなどが理由です。
半身浴を行う
半身浴は38度程度のぬるめのお湯に15分から20分程度、みぞおちの辺りまで浸かる入浴法です。
40度を超えるような熱めのお湯に浸かると、自律神経のうち交感神経が刺激されてしまい、心身が興奮状態となってしまいます。
特に夜、眠る前に熱いお湯に入ってしまうと睡眠の質を下げる原因となり、疲労やストレスを回復させることができなくなってしまいます。
熱いお湯に入るのもスッキリとして気持ちいいですが、イライラが気になる場合はぬるめのお湯で半身浴をするようにしましょう。
睡眠を重視する
睡眠は疲労やストレスを回復させたり、ホルモンやセロトニンの分泌が盛んになったりするので、イライラを軽減させるために非常に重要になります。
忙しいからと言って睡眠を軽視してしまうと余計にストレスが溜まり、イライラしやすくなってしまいます。
睡眠時間は最低でも6時間確保する、夜眠るときは静かな環境で真っ暗にする、空調を少し涼しめにするなど睡眠を重視するようにしましょう。
人が睡眠を取るときには体温が下がる必要があるため、冬でも部屋を暖め過ぎてしまうと寝付きづらくなってしまいます。
精神科や心療内科で診察を受ける
「最近イライラするな~」と軽く思っていても、実はうつ病や自律神経失調症という可能性があります。
イライラを解消しようとしているのになかなか改善されない場合は一度、精神科や心療内科でカウンセリングを受けてみてもいいかもしれません。
なお精神科はイライラや不安、不眠、幻覚など精神的な症状を主に扱い、心療内科は精神的な要因により体に症状がでる心身症を主に扱います。
イライラの場合はどちらの診療科でも構いません。費用は通常の場合、初診でおよそ3000円ほどが目安です。
イライラの悩みによくあるQ&A
15分程度の軽い昼寝をするのがおススメです。
脳が疲れているとその分、イライラしやすくなってしまいます。
また糖分が不足すると脳が疲れやすくなってしまうため、チョコレートや果糖が含まれているジュース、ブドウ糖タブレットなど即効性のあるエネルギーを摂取することもおすすめです。
たまにイライラしたときについつい食べ過ぎてしまうくらいならば問題ありません。
日常的に節制や運動をして暴飲暴食してしまった分を取り戻しましょう。
常にイライラして毎食のように暴飲暴食してしまう場合は、問題があります。
次の質問で病院にかかる目安を答えるので、参考にして必要に応じて医療機関で診察を受けましょう。
生活スタイルは個人差があるので一概には言えませんが、「日常生活に支障が出る」を一つの目安にしましょう。
イライラして人に当たってしまって人間関係が悪化する、イライラして慢性的に頭痛がする、イライラしてその解消に暴飲暴食してしまう・・・などの自覚があれば医療機関で診察を受けたほうがいいかもしれません。
イライラすると交感神経が刺激され、血管が収縮し血圧が上昇します。
たかがイライラといっても慢性的になると動脈硬化や心疾患、脳血管疾患のリスクを高めてしまいます。
イライラが続くようならば解消するように生活習慣を改善したほうが良いでしょう。
イライラ解消法のまとめ
イライラはストレスや過労など生活習慣によって起きるものとPMSや更年期障害、うつ病といった病気によって起こるものがあります。
生活習慣に起因するイライラならば生活習慣の改善により軽減できる場合があります。
しかし病気が原因のものは治療や本格的な対策が必要になることがあります。
まずはイライラを鎮める生活習慣を送ってみてなかなか改善されない場合は医療機関で診察を受けることも検討しましょう。
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帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。