花粉症とは
花粉症とはスギやヒノキ、ブタクサといった植物の花粉がアレルゲン(アレルギーの原因物質のこと)となり、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった症状を引き起こす症候群のことです。
風邪の諸症状に似ていますが、発熱することはほとんどなく、目の充血やかゆみなどの症状を同時に引き起こすことが特徴です。
目次
現在では日本国民の4人に1人が罹患していると言われていて、日本の国民病となっています。花粉症の中でもスギ花粉がアレルゲンになる「スギ花粉症」が日本においては最も多くなっています。
スギの花粉は関東においては2月-4月に最も多く飛散するため、当該の時期に最も患者数が増加します。なお北海道と沖縄においてはスギがほとんど存在しないため、スギ花粉症罹患者は少なく、その代わりにシラカバやブタクサといった別の植物による花粉症が存在します。
代表的な花粉症の原因だと、関東の場合最も飛散量が多いのは
- スギ :2-4月
- ヒノキ :3-5月
- ハンノキ:3-4月
- イネ :5-6月
- ブタクサ:8-9月
です。
花粉症の症状とは
花粉症の症状とは、
- くしゃみ
- 鼻水
- 鼻づまり
の3つが耳鼻科においては3大症状と呼ばれています。鼻に関わる症状だけではなく
- 目のかゆみ
- 目の充血
- 涙
など目に関する症状や、まれに
- 喘息
- 皮膚炎
といった症状が現れる人もいます。副次的な症状として、鼻や目の症状が日常化することによって
- 集中力の低下
- 睡眠不足
- イライラ
といった精神的な症状を引き起こす可能性も存在します。
また鼻づまりが発生することによって口での呼吸の頻度が高くなり、喉を傷めて喉頭炎を発症したり、口内が乾燥することによって口臭が強くなったりすることもあります。
花粉症の「モーニングアタック」とは
花粉症の罹患者が朝目覚めると、突発的に鼻水やくしゃみなどの鼻炎症状が発生する場合があります。この症状を「モーニングアタック」といいます。起きてすぐは自律神経が副交感神経から交感神経に移行するため、アレルゲンに過剰反応しやすいこと(※)、夜間に空間の下部に溜まった花粉を一気に吸いこんでしまうことなどから発生します。
花粉症になりやすい体質や生活習慣
花粉症は植物の花粉が原因で発生します。現在では以下のような人が罹患しやすいと言われています。
遺伝的な原因
花粉症は遺伝的な要素が非常に大きい症候群です。そのため家族に花粉症の人がいると罹患する確率が高くなります。
肉類を多く摂取する食生活
肉類に多く含まれるn-6系の脂肪酸は、体内で代謝されて「ロイコトリエン」や「プロスタグラジン」といった炎症の原因となる物質に変換されます。戦後以来、食生活が欧米化して肉類を多く摂取するようになったため、これらの炎症性物質が体内に増え、花粉症を罹患する人が増えたとも言われています。
本州に在住している
戦後、高度経済成長に合わせて材木の需要が増えたため、真っ直ぐに育ち建材として利用しやすいスギやヒノキが国策として大規模植林されました。そのため、それまでは少なかったスギ花粉やヒノキ花粉が大量に飛散するようになり、花粉症を罹患する人が大量に発生しました。なお、植林が行われなかった北海道と沖縄では、スギやヒノキによる花粉症は少なくなっています。
あなたは花粉症?花粉症セルフチェック
花粉症の症状はくしゃみ、鼻づまり、目の充血など、風邪の諸症状と似ています。そのため、「この症状は花粉症ではなく軽い風邪だ」と考えてしまうと症状がいつまでも改善されません。
以下に該当する人は花粉症である可能性が高いので、耳鼻科にて診察を受けることをおすすめします。
- 毎年決まった時期に風邪を引く(特に鼻から症状が出てくる)
- その際、発熱はとくにない
- 雨の日は症状が軽くなる
- くしゃみが連続する
- 目がかゆくなる
- 日中に倦怠感がある
特に、決まった時期に風邪を引く場合、雨の日に症状が軽くなる場合は、花粉症に罹患している可能性が高くなります。これは、雨の日は花粉の飛散が弱まって症状が軽くなるためです。
花粉症が発生するメカニズム
花粉症は一言でいうと「花粉という異物に対する身体の防御反応」です。花粉症は以下のようなメカニズムで発症します。
1 花粉に晒される
地域差や季節差はあれど、花粉は日常的に空間に存在します。花粉は呼吸を通して鼻※や口、目といった粘膜に接触します。
2 人体が花粉を異物と認識する
鼻や口、目といった粘膜に花粉が付着すると、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)であるタンパク質が「マクロファージ」という異物を捕食する作用のある細胞に取り込まれます。取り込まれた花粉はマクロファージを通して「人体にとって異物である」と記憶されます。
3 人体が抗体を作り出す
花粉が人体にとって異物と記憶されると、リンパ球が花粉に対して特異的に反応する「IgE」と呼ばれる抗体を作り出します。このIgEは肥満細胞や好塩基球(白血球に含まれる顆粒状の物質)に結合します。
4 感作状態になり、抗体により炎症物質が分泌される
IgEが肥満細胞や好塩基球に結合した状態を「感作(※1)」と呼びます。感作した状態で再度花粉が体内に侵入すると、人体は異物として花粉の侵入を防いだり、体外に排出しようとしたりします。その際にヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグラジンといった炎症性のある化学物質が分泌されます。
5 花粉を排出するための免疫反応が起こる
ヒスタミンなどの化学物質は、異物である花粉の侵入を防いだり体外に排出したりするためにくしゃみや鼻水、涙といった反応を引き起こします。この反応が花粉症です(※2)。
花粉症を放置するとどんな危険性がある?
喘息患者の場合、花粉症に罹患すると喘息が悪化する場合があります。スギ花粉自体は粒子が比較的大きめで鼻の粘膜などに付着するため、気管支まで届くことはないと言われています。
しかし、花粉症によって鼻が炎症を起こすと、炎症を引き起こす化学物質が気管支まで広がり、喘息の症状を重くする可能性があります。最悪の場合、呼吸困難を引き起こすこともあるため、喘息患者は花粉症を放置せずに対処することが必要です。
花粉症の予防・改善に役立つ食品・成分
花粉症は誰にでも発生する可能性があり、再発など起こさず完治させることが非常に難しい症候群です。そのため、症状を軽減させることが快適な生活を送るために必要になります。
ここでは、花粉症の症状の改善に役立つ5つの栄養素を紹介していきます。
1 甜茶(てんちゃ)
甜茶とは中国語で「甘い」を意味する甜という字の通り、甘みのある中国茶のことを指します。甜茶という種の植物があるのではなく、中国茶で甘みのあるもの全般を指します。
その中でもバラ科の甜葉懸鉤子(テンヨウコウケンシ)と呼ばれる植物の葉を使った甜茶には、アレルギーを抑制する作用があることが各種研究機関により明らかになりました。
甜茶には「GOD(Galloyl-Oxygen-Diphenyl)型エラジタンニン」と呼ばれるポリフェノールが含まれており、この物質がヒスタミンの分泌を抑制したり、ロイコトリエン、プロスタグラジンといった炎症性物質の代謝に関わるシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを阻害したりすることが分かっています。
1999年に三重大学医学部耳鼻咽喉科学教室、株式会社ロッテ中央研究所によって発表された「スギ花粉症に対する甜茶飲料の臨床的検討」という論文では、スギ花粉が飛散する時期より前に甜茶ポリフェノールの含有を高めた飲料を飲用することによって症状の軽減が認められたと示されています。
甜茶は食品のため摂取量に上限の基準などはありませんが、甜茶エキスに換算して一日300mgほど摂取すると花粉症の症状の改善に効果的です。
2 乳酸菌
乳酸菌には非常に多くの種類が存在していて、それぞれの株で効果が異なります。乳酸菌の中でも「フェカリス菌」と呼ばれる株の乳酸菌に、花粉症の諸症状を軽減する作用があることが判明しました。
人間の免疫には司令塔の役割をするTh1細胞とTh2細胞と呼ばれる2種類の細胞があります。Th1細胞は主に細菌やウイルスなどの感染に対して働き、Th2細胞はアレルゲン(アレルギーの原因物質)に対して働きます。
花粉の多い環境などでTh2細胞が過剰に働くと、人体はそのアレルゲンに対して過剰に反応してしまい、花粉症をはじめとするアレルギー性疾患を発症しやすくなります。フェカリス菌を摂取することで免疫細胞に刺激を与え、Th1細胞とTh2細胞のバランスをとることでアレルギー反応を抑えることができます。
「薬理と治療(JPT)Vol.40 no.2 2012」に掲載された、株式会社伊藤園中央研究所による「花粉曝露試験施設にてEnterococcus faecalis(エンテロコッカス フェカリス)含有乳性飲料の花粉症症状緩和効果を確認」という試験では、フェカリス菌含有乳酸菌飲料を飲用することで鼻かみ回数・目のかゆみに有意な差が認められ、鼻づまり・流涙では改善傾向にあるということが判明しています。
この試験では、フェカリス菌を1日1000億個摂取して上記の結果が得られたとなっています。花粉症対策にフェカリス菌を摂取する場合、商品説明を読んで1日の目安摂取量に1000億個以上含有されているものを選ぶとよいでしょう。サプリメントとして摂取するほか、ヨーグルトや乳酸菌飲料など発酵にフェカリス菌を使用した発酵食品でも摂取することができます。また、指定医薬部外品として大正製薬株式会社から販売されているビオフェルミン系商品にも含まれています。
3 カテキン
緑茶に含まれる渋み成分の一つであるカテキンにも、花粉症に対して改善・軽減する作用があることが判明しています。
カテキンはその分子の形によって複数の型に分けることができますが、そのうち花粉症に特に効果的なのがメチル化カテキンと呼ばれる型のものです。感作(※3)の状態になると肥満細胞や好塩基球と結合したIgE細胞がヒスタミンを放出し、炎症の発生させることで花粉症の症状を引き起こします。メチル化カテキンはこの際ヒスタミンが分泌されるのを阻害する働きがあります(昭和大学薬学雑誌 第4巻 第2号P106 岩井信一著)。
摂取量の目安は、煮沸しながら煎じた緑茶を1日に400mlほど飲むと効果的です。緑茶では、茶葉に含まれる水溶性の(水に溶ける)栄養素・成分しか摂ることができないので、水に溶けない性質の栄養素や成分を効率よく摂取するためには茶葉を丸ごと粉砕したパウダータイプの商品を摂取するのも効果的でしょう。
煎茶100gに含まれる栄養素
栄養素名 | 含有量 | 単位 | 1日の必要量に対する割合 (30代女性の場合) |
カリウム | 2200 | mg | 85% |
カルシウム | 450 | mg | 75% |
マグネシウム | 200 | mg | 71% |
リン | 290 | mg | 32% |
鉄 | 20 | mg | 190% |
亜鉛 | 3.2 | mg | 46% |
銅 | 1.3 | mg | 186% |
マンガン | 55 | mg | 1571% |
ビタミンA(βカロテン) | 1100 | μg | 183% |
ビタミンE | 64.9 | mg | 811% |
ビタミンK | 1400 | μg | 933% |
ビタミンB1 | 0.36 | mg | 33% |
ビタミンB2 | 1.43 | mg | 119% |
ナイアシン | 4.1 | mg | 34% |
ビタミンB6 | 0.46 | mg | 38% |
葉酸 | 1300 | μg | 542% |
パントテン酸 | 3.1 | mg | 62% |
ビタミンC | 260 | mg | 260% |
粉末化した煎茶には、上記のようにたくさんの栄養素が含まれています。ビタミンC,E、βカロテンによる抗酸化作用や、カリウムによる血圧調整作用、鉄分・ビタミンK・葉酸による貧血対策などにも非常に効果的です。
粉末の緑茶は、日々の生活で足りない栄養素を補給するベースサプリメント的な役割も期待できます。
上で解説した甜茶のGODポリフェノールや緑茶のカテキンは、「フラボノイド」とよばれる物質に分類されます。フラボノイドとは植物の苦みやえぐみ・色素などの原因となる物質で、非常に強い抗酸化作用と機能性を持っています。
甜茶のGODポリフェノールやメチル化カテキンは、花粉症に対して軽減・改善作用があります。そのほかブルーベリーなどのベリーに含まれる青紫色を構成する「アントシアニン」は視覚機能を回復する作用があり、大豆に含まれる「イソフラボン」には骨へのカルシウム沈着を補助する作用があります。
フラボノイドはそれぞれの成分において千差万別の多彩な働きをします。健康維持のため、幅広く色々な野菜や果物、茶を摂取することも重要ですし、特定の目的のためサプリメントで単一の成分を摂取することも効果的です。
4 魚油(DHA・EPA)
魚油にはDHA、EPAと呼ばれるn-3系脂肪酸が含まれています。これらのn-3系脂肪酸には、アレルギーを抑制する作用があることが判明しています。DHA、EPAはシクロオキシゲナーゼと呼ばれる炎症性物質を作り出す酵素の働きを阻害します。
日本では、食生活の変化によって肉類を多く摂取するようになり、n-3系ではなくn-6系の脂肪酸の摂取量が増えたため、花粉症患者が増えたと言われています。タンパク質摂取のためには肉ではなく魚を積極的に食べるようにすることで、花粉症を軽減することが期待できます。
DHA、EPAには、花粉症を軽減する作用だけではなく、液の流れを改善し、日本人に多い心筋梗塞や脳梗塞といった疾病を予防する作用もあります。三食のうち一食程度は魚を食べるように心がけると効果的です。
5 ペパーミント
爽やかな香りが特徴のペパーミントも、花粉症対策に効果的です。ペパーミントに含まれる「ルテオリン」というフラボノイドが、感作した肥満細胞や好塩基球からヒスタミンやロイコトリエンといった炎症性物質の分泌をブロックする作用があると判明しています。
この「ルテオリン」は水溶性なので、ミントティーとして摂取するのが効果的でしょう。一度に大量に摂取するのではなく、カップ1杯程度を一日2-3回程度に分けて摂取するのがおすすめです。
またペパーミントの精油の爽やかな香気には鼻詰まりを解消する作用があります。ミントの香りのアロマテラピーを行うことで、鼻詰まりや花粉症に付随するストレスを軽減することが期待できます。
花粉症を和らげるセルフケアや受診の目安
花粉症の症状の予防や改善の方法は、「花粉との接触を少なくする」ということが一番の対策になります。花粉の季節になったら以下のことに気を付けるとよいでしょう。
花粉の飛散が多い日を把握する
花粉は、以下のような条件が重なると非常に多く飛散するようになります。
- 気温が温かい
- 湿度が低い
- 風が強い
- 晴れている
天気予報などをチェックし、該当するような条件の日は極力外出を控えることが効果的です。ただし現実には外出を控えることは非常に難しいため、やむを得ず外出する場合はマスクとメガネを装着し、粘膜に花粉が届かないようにすることが必要です。
花粉は外出した際に服などに付着しますので、家に入る前にはたいて落とすことも効果的です。あわせて洗顔やうがいをし、粘膜に付着した花粉を除去することもよいでしょう。
空気清浄機を使用する
どんなに気を付けても、花粉が室内に侵入するのを完全に防ぐことは不可能です。そのため、空気清浄機を利用することも効果的です。
花粉症を発症する前から予防する
花粉症を発症するまでどれだけのアレルゲンを許容できるかは個人差があります。しかし花粉に触れ続ければ、誰でもいつかは花粉症を発症してしまいます。花粉症を発症していない人も、花粉の季節はなるべく花粉に対する対策をすることで、花粉症を発症するまでの期間を長引かせることが可能です。
花粉症に効果のある成分は、発症する前の人にも有効です。花粉症は発症する前からのケアをすることで発症するまでの期間を延ばしたり、発症してからの症状の重さを軽減したりすることが可能です。花粉が飛散する季節になったら、甜茶や緑茶、ミントティーを摂るなど、負担にならない対策から早めに始めていくこが効果的です。
子どもの花粉症対策
近年では子どもの花粉症も増えています。しかし子どもは大人と違って花粉症に対する知識がないため、うまく症状を伝えられず、花粉症だと気づかれないことが多いです。そのため大人が注意深く観察し、花粉症かどうかの疑いを持つことが必要です。
成人の場合、花粉症の症状としては鼻づまり、くしゃみ、鼻水、目のかゆみが4大症状と言われていますが、子どもの場合はあまりくしゃみが起こりません。子どもの花粉症の症状は鼻づまりが最も多く、次いで目のかゆみが発生します。
- 特定の季節になると鼻づまりを起こす
- 目をよくこすっている
- 鼻呼吸ではなく口呼吸が多い
上記のような症状が現れたら一度花粉症を疑い、病院にて診察を受けるとよいでしょう。診察科は大人と同じく耳鼻科と内科が基本ですが、小児科でも対応することが可能です。
花粉症で医療機関を受診するには
花粉症で医療機関へ診察を受ける場合、診療科は耳鼻科、もしくは内科になります。ただし症状が重篤な場合、アレルギーの専門医に診察を受けることが必要になる場合もあるため、日本アレルギー学会が一般向けに公開しているサイトなどで検索をするとよいでしょう。
受診前にしておきたい準備
医療機関で診察を受ける前には、以下の情報を整理しておくことをおすすめします。
- 花粉症と疑われるのはいつからか?
- 花粉症と思わしき症状が発生するのは何月頃からか?
- 花粉症と思わしき症状の中で発熱はあるか?
- 症状の中で特に気になる、つらいものは何か?
- 既往症はあるか?
- 花粉症のほかにアレルギーはあるか?
以上を医師に伝えることで円滑な診断が可能になります。
病院で行われる花粉症の治療
現在のところ花粉症を完治させる根治療法は確立されていないため、症状の抑制を行う対症療法が中心となります。その際に使用する薬品としては以下のようなものが代表的です。
抗ヒスタミン薬
ヒスタミンの作用を抑制する薬です。全身に効果を発揮する経口薬(飲み薬)と、鼻水やくしゃみに効果的な点鼻薬、目のかゆみや充血に効果的な点眼薬が存在しています。即効性の強い薬です。
メディエーター遊離抑制薬
抗ヒスタミン薬がヒスタミンの作用を抑制するのに対し、メディエーター遊離抑制薬はヒスタミンやロイコトリエンといった炎症性物質の分泌を抑制する作用があります。投薬から効果が発揮するまで時間がかかるため、花粉が飛散する前から使用することが必要です。
ステロイド薬
抗ヒスタミン薬・メディエーター遊離抑制薬が特定の物質の働きや分泌を抑制・阻害するのに対して、ステロイド薬はアレルギー全般を抑制します。重度の花粉症の際に使用されますが、アレルギーを抑制するということは免疫機能を抑制することと同じなので、長期の使用によって副作用が発生する可能性があります。
花粉症の対症療法には薬品のほか注射による療法もあります。
抗ヒスタミン薬注射
炎症を引き起こすヒスタミンを抑制するための注射です。ヒスタミンは花粉症だけではなくアレルギー全般の原因となる物質なので、どんなアレルゲンにも対応することが可能です。6-12回ほどの注射で3-4か月ほどアレルギーを緩和する作用があるため、特定の時期に発症する花粉症には効果的な治療法でしょう。
ステロイド注射
内服薬のステロイド薬と同じく、免疫作用自体を抑制することによって花粉症やアレルギー反応を抑制する療法です。非常に効果が強く、内服薬や抗ヒスタミン薬の注射で効果が出ない人に対しても効果が期待できます。一回の注射で約1か月ほどアレルギーを緩和する作用があります。ただし、副作用が発生する危険性も示唆されています。
花粉症は、症状の重さによって副作用の可能性があるステロイド薬の使用も検討されます。治療のための薬品は医師の判断が非常に重要になるため、きちんと自分の症状を説明することが重要です。
花粉症の市販薬はどんなもの?
花粉症の薬は医師に処方されるものだけではなく、市販されているものもあります。種類としては内服薬、点眼薬、点鼻薬があります。
点眼・点鼻薬はそれぞれの症状がつらいときに使用するもので、内服薬は花粉症を全体的に抑制します。炎症を引き起こすヒスタミンを抑制する抗ヒスタミン薬がほとんどで、即効性があることが特徴です。ただし内服薬の場合は眠気が発生する可能性もあり注意も必要です。
花粉症の市販薬は、以前は医師の処方が必要だった医療用医薬品も安全性や効果が確認されてドラッグストアなどで購入することができるOTC医薬品(※)として販売されることも多くなっています。
ただし、効果が長続きするものではなく、重度の花粉症に対しては効果が薄いため、あくまで応急処置用として使用し、一度は医師の診察を受けることをおすすめします。
花粉症にまつわるQ&A
鼻づまり、鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどが出ていて発熱の様子がないならば、花粉症の可能性が高いでしょう。日本人に一番多いスギ花粉症は確かに2-4月頃がもっとも花粉が飛散し、症状が発生する可能性が高いです。しかしスギ以外にも夏に発生することの多いイネの花粉症や秋に発生することの多いブタクサの花粉症も存在します。
コンタクトレンズの場合、付着した花粉が長時間目の中に存在するという状態になってしまいます。そのため視力が弱い方はコンタクトレンズよりメガネのほうが花粉症にとってはよいでしょう。どうしてもやむを得ない場合は1dayタイプを使用し、屋内に入ってから着用するのがよいでしょう。
現在のところ花粉症を完治させる根治療法は完全に確立されていません。しかしそれに近い療法は開発されています。舌下(ぜっか)免疫療法という治療法で、舌下に定期的に少しずつアレルゲンを投与して身体をそのアレルゲンに慣れさせる方法です。一定の効果が期待でき、2014年から保険の適用もできるようになった治療法です。
しかし、以下のようなデメリットも存在します。
- 治療開始から終了まで2-5年ほどかかる
- 薬品の処方のため定期的に通院する必要がある
- およそ2割の確率で長年治療をしたのに効果がでない人もいる
症状がなくなった、もしくは軽減されたという人でも、数年経つと元通りのレベルの症状まで戻ってしまう可能性も存在します。
花粉症は花粉にさらされることで症状が現れます。そのため、特定の季節に鼻づまりや鼻水、目のかゆみなどを反復して引き起こすならば花粉症の可能性が高いでしょう。また、屋外より屋内が楽、雨の日は楽、発熱はないなどといった場合も花粉症の可能性が高いです。
アルコールは血管を拡張させる作用があります。そのため花粉症の症状である鼻づまりや目のかゆみ、充血といった症状を重くしてしまう可能性があります。日本人に最も多いスギ花粉症は2-4月と送迎会や歓迎会の季節に症状が発生するため、なかなか飲酒を避けづらいですが、アルコール摂取は控えたほうが症状は軽くなります。
花粉症は人体にとって異物である花粉に対し、免疫機能が過剰に反応してしまうことで発症します。花粉症は個人差がありますが、誰に対しても発症する可能性があり、発症者も未発症者も予防や改善のケアが必要になります。
甜茶、乳酸菌、緑茶カテキンといった成分は花粉症の症状の軽減に効果的で、未発症者にとっては発症の時期を遅らす、発症した場合の症状の重さを軽減するといった効果があります。
花粉症で医療機関にて診察を受ける場合は耳鼻科、内科が基本になります。症状が重い場合がアレルギーに関する専門医がいる病院を探してから診察を受けるとよいでしょう。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医、サプリメントアドバイザー。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。