風邪はなるべくなら引きたくないですよね。
風邪を予防するためには、まず風邪がどのようなものかを知る必要があります。
この記事では、風邪とはどんな病気なのか、その予防と対策にはどのようなものがあるのかを解説していきます。
目次
風邪とはどんな病気?
風邪(かぜ症候群)は最も頻度の高い呼吸器の病気です。
鼻腔や咽喉、喉頭などの上気道粘膜にウイルスや細菌が感染することで急性炎症の症状がでることが特徴です。
風邪の原因はその90%ほどがウイルスで、細菌性の風邪は比較的稀です。
また感染の原因となるウイルスや細菌の種類によっても症状が大きく異なります。
比較的症状が軽いライノウイルスやコロナウイルスに感染した場合は「普通感冒(ふつうかんぼう)」と呼ばれる症状が現れます。
普通感冒は風邪の典型的な症状で、鼻水や咳、くしゃみ、痰などのことを指します。
通常は発熱がなく、全身症状も軽くて済みます。
しかし中にはインフルエンザウイルスのように非常に強い症状を示すものもあります。
インフルエンザウイルスに感染すると、通常1-3日の潜伏期間の後にインフルエンザを発症し、強い全身症状が現れます。
38度以上の高熱や全身の倦怠感、筋肉痛などが3日ほど続きます。
その後徐々に症状は軽快していきますが、インフルエンザウイルス自体は体内に残っているので安静が必要になります。
意外なようですが、風邪もインフルエンザもかぜ症候群に分類される病気です。
しかし特にインフルエンザは感染力も強く、最悪の場合死に至る可能性もあるため、注意が必要です。
人間はもともと外部からのウイルスや細菌から身を守るための免疫機能が備わっています。
しかしなんらかの原因により免疫力が低下すると、風邪の原因となるウイルスや細菌に感染しやすくなってしまいます。
次に、免疫力を低下させてしまう要因を見ていきましょう。
免疫力が低下してしまう生活習慣
人間には免疫機能が備わっていますが、忙しいからと言って乱れた生活習慣が続くとその機能も低下していってしまいます。
免疫力が低下してしまう要因には以下のようなものがあります。
- 40歳以上の年代であること
- ストレスがある
- 休みが取れない
- 睡眠不足(一日6時間未満、もしくは日中眠気が慢性的に持続するくらい)
- 痩せすぎ、低体重(BMI指数18.5未満を目安に)
- 極端な食事制限をしている(炭水化物や脂質を一切食べないなど)
- デスクワークや座位での活動が主で、あまり歩かない
一般的にいう「生活習慣の乱れ」、つまり食事や睡眠が不十分な状態は、免疫力を低下させる原因となるので、食事と睡眠をきちんととるのが基本の風邪対策になります。
また免疫機能を維持するためには適度な体脂肪や脂質の摂取が必要です。
低体重や極端な食事制限を行っている状態は、ウイルスや細菌が体の中に侵入しやすくしてしまいます。
そのほか加齢も風邪を引きやすくなる原因となります。
20-30代はまだまだ免疫力が高いため、多少無理をしても活発に行動することができますが、40代を超えたころから徐々に体に無理が効かなくなり、ちょっとしたことで風邪を引きやすくなってしまいます。
体力を過信せず、大切な局面こそ、意識して栄養や休息をとってください。
風邪とインフルエンザの違いとは
風邪とインフルエンザはどちらも「かぜ症候群」に分類される病気です。
しかしそれぞれどのような違いがあるのでしょうか?
- 原因となるウイルスが様々である(ライノウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなど)
- 咳やくしゃみ、鼻水などの普通感冒の症状が主である
- 発熱はない、もしくは微熱である
- 全身症状はない、もしくは軽微である
- 原因となるウイルスはインフルエンザウイルスである
- 38度以上の発熱、激しい頭痛、関節痛、全身倦怠感、悪寒などの強い全身症状が見られる
- 冬季(11月から3月くらいまで)にかかりやすい
- 小児や高齢者では合併症を起こし重症化、もしくは死亡する可能性がある
風邪もインフルエンザもどちらも基本的に規則正しい生活を送って免疫力を保ち、予防することが重要になります。
インフルエンザの場合は症状が重く、ほかの人に感染させてしまうリスクも高いため、予防接種することも有効です。
風邪予防に役立つ食事、栄養成分による対策
風邪(かぜ症候群)を予防するポイントは規則正しい生活です。
もちろん食生活もとても重要になります。
忙しいとついつい適当に済ませてしまいがちな食事ですが、免疫力を保てるようにしっかり食べるようにしましょう。
タンパク質
タンパク質は三大栄養素の一つです。
摂取したタンパク質は体内でアミノ酸に分解され、また再合成されることで体を構成する材料となります。
無理な食事制限やダイエットでタンパク質が不足すると筋肉がどんどん分解されていってしまいます。
筋肉が減ると基礎代謝が低下して体温が下がりやすくなり、身体の免疫機能を担う白血球は体温が低いと活性が低くなってしまいます。
その結果、ウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなり、風邪を引きやすくなってしまいます。
タンパク質は肉や魚、卵といった動物性食品や納豆や豆腐などの大豆加工食品、牛乳やチーズなどの乳製品に多く含まれています。
体のおおもととなる栄養素なので、しっかりと摂取するようにしましょう。
ビタミンA
ビタミンAは必須ビタミンの一つです。
口や喉、鼻の粘膜の健康を維持する働きがあります。
不足してしまうと粘膜が弱くなってしまい、ウイルスや細菌が侵入しやすくなってしまいます。
ビタミンAは動物のレバーなどに大量に含まれていますが、ビタミンAは脂溶性ビタミンであり体内に蓄積するため、過剰に摂取すると頭痛や吐き毛、倦怠感などの過剰症を引き起こす可能性があります。
特に妊娠中の女性がビタミンAを過剰に摂取すると胎児の奇形を引き起こしてしまう可能性があるので、妊婦の大量摂取はおすすめすることができません。
一方でβカロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変換され利用されます。
不必要な分は脂肪組織にβカロテンとして貯蔵され、過剰症の心配がありません。
そのためビタミンAではなくβカロテンの形で摂取すると安心でしょう。
βカロテンはニンジンやカボチャ、ホウレン草、シソなどの緑黄色野菜に豊富に含まれています。
ビタミンC
ビタミンCは必須ビタミンの一つで、強い抗酸化作用を持つことが特徴です。
そのほか、コラーゲンの生成に必要になります。
ビタミンCが不足するとコラーゲンも生成されづらくなり、皮膚の健康が保てなくなります。
その結果、ウイルスや細菌が入り込みやすい状態となってしまうため、日常的に不足しないように摂取することが重要です。
ビタミンCは水溶性ビタミンであるため、過剰に摂取しても残りは体外に排せつされてしまいます。
一度に摂取するのではなく1日の中でこまめに摂取することがポイントです。
ビタミンCは赤ピーマンやキャベツ、ブロッコリー、ホウレン草、じゃがいも、さつまいもなどの野菜類や、レモンやキウイフルーツ、ミカンなどの果物、緑茶にも豊富にふくまれています。
毎食、新鮮な野菜や果物を摂取したり、飲み物を緑茶にしたりすると効率的に摂取できるでしょう。また過剰症の心配のない栄養素なので、サプリメントで摂取することもおすすめです。
亜鉛
亜鉛は必須ミネラルの一つです。
体内で様々な化学反応を促進させる「酵素」を作るために必要になる栄養素です。
そのほかタンパク質の合成にも必要になります。
亜鉛は新陳代謝を活性化させるために必要不可欠な栄養素で、粘膜や皮膚を作るためにも必要になります。
亜鉛は非常に重要な栄養素ですが、日本人の食生活では不足しやすいという特徴があります。
亜鉛は動物のレバーや牛肉の赤身、卵、牡蠣などに豊富に含まれていますが、不足しやすいためサプリメントで補うのもおすすめです。
エキナセア
エキナセアは北米原産の植物で古くからハーブとして利用されてきました。
エキナセアは免疫機能を高める作用があると考えられており、現在ドイツでは風邪の予防薬として利用されています。
そのほかの欧州地域やアメリカでも風邪を予防するサプリメントとして利用がされており、人気を集めています。
エキナセアに含まれるアルキルアミドや糖タンパク、フラボノイドといった成分が免疫機能に働きかけて、白血球の働きを強めると考えられています。
日本ではまだ医薬品として認可されておらず、あくまでサプリメントとして販売されています。
激務でなかなか規則正しい生活習慣が送れない人が風邪予防のため摂取するとよいでしょう。
8週間以上の連続摂取はせず、2週間摂取したのち1週間休むというサイクルをするといいと考えられています。
ただしエキナセアは結核や白血病、AIDS、膠原病、自己免疫疾患などの疾患がある人は免疫機能を低下させてしまう可能性があるため摂取してはいけません。
ほかにも何らかの疾患があるならば一度医師に相談するのがよいでしょう。
風邪を引きづらくする生活習慣
風邪の予防のためには日々の生活習慣が重要です。
風邪を引きづらい生活習慣を続けて免疫力の高い体を作りましょう。
手洗い、うがい
手洗いとうがいは風邪予防のための基本です。
外出から帰ったらまずは手洗いとうがいをして手と喉の粘膜に付着したウイルスや細菌を落とすようにしましょう。
その際にうがい薬を使ったり、緑茶でうがいをしたり、アルコール消毒スプレーを利用したりするとなおよいでしょう。
マスクをする
特にインフルエンザが流行したときにはマスクをするようにしましょう。
ウイルスはとても小さいためマスク程度の隙間なら通ってしまいます。
しかしマスクをすることでマスクと口の間の空間に湿度が保たれます。
インフルエンザウイルスは湿気に弱いため、ある程度の予防効果を発揮します。
必ず予防できるというわけではありませんが、日々の体調管理に加えて習慣づけることで予防効果を高めることができるでしょう。
自宅やオフィスで加湿器を利用する
空気の乾燥は、喉や鼻の粘膜も乾燥させてウイルスや細菌が体の中に侵入しやすくなる環境を作ります。
特に冬季は空気が乾燥してしまうので加湿器を利用するようにしましょう。
湿度の目安は50%から60%ほどです。
運動をする
適度な運動をすることで血液の流れがよくなります。
血流は体の各細胞に酸素や栄養素を供給するほか、免疫機能を持つ白血球を全身に送り出す働きがあります。
適度な運動を行い血流を改善することで免疫機能が向上し、風邪の予防が期待できるでしょう。
まずは30分程度のウォーキングから始めて徐々に時間を長くしていったり、ジョギングにしたりと運動強度を上げていくとよいでしょう。
ただし息が上がって苦しいほどの運動をする必要はありません。
解熱鎮痛剤を常備する
どうしても休めない時や早く治したいときに市販のパブロンやロキソニン、イブなどの解熱鎮痛剤を常備しておくのも有効な手段です。
多少の熱っぽさならこれらの解熱鎮痛剤を服用して一晩ゆっくり寝れば治ってしまうことが多いです。
どれがよいとは一概には言えませんが、子供のころから使っていて慣れているものがあれば、それが安心して使えます。
風邪でこんな症状が出たら病院に行きましょう
風邪は基本的に十分な栄養と睡眠、安静があれば家で治すことができます。
しかし以下のようなときは病院で診察を受けてみるとよいでしょう。
38度以上の発熱がある
風邪で38度以上の高熱になることは稀です。
インフルエンザやそのほかの病気の可能性があるため、病院で診察を受けたほうが良いでしょう。
症状が続く
風邪の症状は、通常であれば長くても1週間程度で治まっていきます。
何週間も咳やくしゃみ、鼻水などの症状が見られる場合は病院で診察を受けましょう。
鼻水が黄色や緑色になる場合
通常、鼻水は透明や白といった色をしています。
黄色や緑色の鼻水が出ているときはウイルス性の風邪ではない場合があるので病院に行くようにしましょう。
腹痛、嘔吐、下痢など消化器の症状が見られる場合
風邪ではなくなんらかの消化器系の疾病の可能性があります。
このような場合も病院に行くようにしましょう。
風邪の悩みによくあるQ&A
まずは水分補給をしっかりしましょう。
発熱があるならば発汗もかなりの量になっているはずです。
体に吸収されやすいポカリスエットやアクエリアス、OS1などの経口補水薬が適しています。反対に脳を興奮させてしまうカフェインが入っていて、利尿作用のあるお茶類は水分補給に適しません。
食べ物はうどんやおかゆなど消化のよいものを食べるとよいでしょう。
ショウガやネギ類など体を温めるものも一緒に食べるとなおよいです。
普通感冒(鼻水、咳、痰、くしゃみなど)程度の症状で熱も微熱ならばしっかりと栄養摂取してゆっくり睡眠を取りましょう。
常備薬があるならば解熱鎮痛剤(パブロンやEVEなど)を飲むのもよいでしょう。
多少の症状ならばよくなると思います。
一方で38度近い高熱が出て全身の倦怠感や筋肉痛、関節痛が現れた場合はインフルエンザや風邪以外の病気の可能性が高まります。
なるべくならば次の日、休むようにしましょう。
どうしても休めない場合は病院に行き、医師に相談したうえで市販のものより強い解熱鎮痛剤を処方してもらうとよいでしょう。
風邪を引いていようといまいと、必須栄養素は必ず必要になります。
その意味では風邪を引いてからビタミンやミネラルのサプリメントを飲んでも効果があります。
しかし風邪を素早く治す、風邪の症状を軽減させるということならば、どの程度効果があるかは少し疑問があります。
どちらかといえば普段から継続し続けて風邪予防をするほうが効果に期待を持てるでしょう。
強いストレスや肉体的な疲労があるときは風邪を引きやすい状態です。
そのようなときはなるべく早く家に帰って就寝するようにしましょう。
ちょっとフラフラする、熱っぽいなどの自覚症状があるときも風邪になりやすい状態です。
消化のよいものを食べ、温かくして十分な睡眠を取れば風邪の諸症状が出る前に治すこともできるはずなのでしっかりと早めに治しましょう。
風邪予防のまとめ
風邪は主にウイルスが粘膜に感染することで発症する病気です。
鼻や喉に症状が出ることが多く鼻水や咳、くしゃみ、痰などの症状のほか発熱することがあります。
風邪自体は十分な栄養と睡眠を取って安静にしていれば治ってしまいますが、時期によってはインフルエンザなど感染力や症状の強い病気が発症することもあります。
常日頃から健康管理には気を付けて風邪を引きづらい体質にすることが重要です。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。