血糖値は暴飲暴食や運動不足という生活習慣が続くとどんどん高くなってゆきます。
血糖値が上がると糖尿病などさまざまな引き起こす可能性があり、最悪の場合失明や感覚の消失といった症状も生じてしまいます。
血糖値を下げる方法、高血糖が引き起こす病気についての予防から対処法まで解説していきます。
目次
血糖値とは?
血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度のことを指します。
人間は米や小麦などの糖質を摂取すると消化によって分解しブドウ糖を作り出します。
ブドウ糖は血流に乗り体の各部位のエネルギー源として働きます。
エネルギーとして使われなかった余剰なブドウ糖は脂肪酸と結合し中性脂肪として貯蔵されたり、肝臓でグリコーゲンとなり貯蔵されたりします。
そして再びブドウ糖が不足した時に貯蔵されているグリコーゲンがブドウ糖に分解されエネルギー源として利用されます。
血糖値が高い状態とは?
糖質→ブドウ糖→エネルギー源として利用→余剰分がグリコーゲンへ→再びブドウ糖として利用される、この一連の流れを糖代謝といいます。
糖代謝が正常に働かないため血糖値は高くなってしまいます。
血糖値が高い状態とは健康診断を行う際の数値基準で
基準範囲 | 要注意 | 異常 |
---|---|---|
99以下 | 100-125 | 126 |
なお、健康診断では空腹の状態で血糖値を測るので空腹時血糖値ということになります。
なぜ血糖値が高くなるのか?
糖代謝をする際に重要な役割を果たすのがインスリンというホルモンです。
インスリンは膵臓によって作られるホルモンです。
食後、糖質を補給したことで血糖値は一時的に上昇します。
インスリンは、一時的に上昇したブドウ糖をエネルギーとしての利用を促進したり、肝臓でのグリコーゲンへの合成を促進したりすることにより、血糖値を下げる作用があります。
食後2-3時間ほどで、血糖値が通常の数値に戻るのはこの作用によります。
インスリンの働きが弱まったり、異常が出たりすることによって血糖値は高くなります。
血糖値セルフチェック
血糖値が高い場合、以下の症状が現れます。
自覚症状がある場合、前回の健康診断の血糖値を一度確認した方が良いでしょう。
- 肥満である
- 尿の回数が多い、尿の量が多い
- 喉が渇きやすい
- 疲労感がある
体重÷身長×身長≧25の場合、肥満である疑いが持たれます。
身長170cmの人の場合:体重72.25kg以上
身長158cmの人の場合:体重62.41kg以上
ならば適正体重より重い可能性が高いでしょう。
血液にブドウ糖が多い状態が続くと腎臓はブドウ糖を尿として体外に排泄しようとします。そのため頻尿や多尿を招きます。
腎臓がブドウ糖を体外に排泄した結果、同時に水分も失われます。そのため血糖値が高まると喉が渇きやすくなります。
インスリンの働きが弱まることで糖質をエネルギー源であるブドウ糖へ変換する作用も弱まります。そのためエネルギー不足に陥り疲労を感じやすくなります。
血糖値が高い状態が続くことで引き起こされる病気
血糖値が高い状態が続き、放置してしまうと糖尿病など様々な病気を引き起こす原因になってしまいます。
血糖値が高いことが原因で起こるといわれる、「糖尿病」。
さらに、糖尿病がもたらす合併症・症状についてまとめています。
糖尿病
糖尿病とは血糖値が高い状態が持続する病気です。
しかし糖尿病の真の怖さは様々な合併症をもたらすことです。
糖尿病の合併症は全身のあらゆる部位に生じますが特に代表的なものは以下の3つになります。
糖尿病性網膜症
網膜の毛細血管や末梢神経が高血糖により傷つき発生します。
最悪の場合は失明する可能性があります。
糖尿病を発症してから15年ほどくらいでおよそ半分の人が併発します。
初期症状としては目のかすみ、視力の弱まりなどがあります。
糖尿病性腎症
腎臓の血管が高血糖によって傷つき発生します。
腎機能が低下するため適切に治療を行わないと腎不全まで発展し人工透析が必要になる可能性があります。
初期症状としては疲労感、だるさなどがあります。
糖尿病性神経障害
高血糖によって末梢神経や自律神経が傷つき発生します。
手足のしびれや痛み、立ちくらみなどの症状が現れます。
最悪の場合は感覚が消失する可能性があります。
初期症状としては手足のしびれ、立ちくらみなどがあります。
他にも高血糖の状態が続くと動脈硬化を促進するため心筋梗塞や脳梗塞といった循環器系の疾患のリスクも高めます。
免疫機能も低下し細菌などによる感染症にもかかりやすくなります。
血糖値を上げるだけではなく、全身に発生する可能性のある合併症が糖尿病の最も恐ろしい点です。
糖尿病の診断基準とは?
- 空腹時血糖値が126mg/dL以上
- ブドウ糖負荷試験2時間値(ブドウ糖を摂取した2時間後に血糖値を測定すること)が200mg/dL以上
- 随時血糖値(測定する時間を特定しない血糖値のこと)が200mg/dL以上
- HbA1c(NGSP)が6.5%以上([HbA1c(JDS)が6.1%以上])
上記の数値を参考に以下の項目に該当する場合は、早急に血糖値を下げる対策を行ったほうがよいでしょう。
- 同日に1-3のいずれかと4が当てはまる場合
- 1-3が当てはまり典型的な糖尿病の症状が現れている場合
- 1-3が当てはまり、別の日の測定で1-4に当てはまる場合
- 4に当てはまり、別の日の測定で1-3に当てはまる場合
。
血糖値を下げるのに役立つ食品と成分
難消化性デキストリン
難消化性デキストリンは人間の消化酵素では分解できない糖質である食物繊維の一つです。
難消化性デキストリンは食品添加物に分類されますが、主にジャガイモやトウモロコシなどのデンプン質から作られる食品由来の安全な添加物です。
水に溶ける性質の水溶性食物繊維で血糖値を下げるのに効果的です。
人間は米や小麦などの糖質を摂取するとそのままの形であるデンプンのままでは吸収することができないため、麦芽糖やブドウ糖に分解します。
そうして分解された糖は小腸で吸収されます。
難消化性デキストリンを摂取していない状態だと分解された糖はそのまま直接吸収されます。
難消化性デキストリンは水溶性のため体内で水に溶けゲル状になります。
ゲル状になることで分解された糖を包み込み吸収されるのを阻害します。
糖の幾分かはそのまま吸着され体外に排出されますし、そのほかの糖はゆっくりと時間をかけて吸収されるため食後の急激な血糖値の上昇を抑えます。
糖だけではなく脂肪酸やコレステロールの吸収も同様の理由で抑える働きをするため、
血糖値だけではなく中性脂肪値やコレステロール値の低減にも効果的です。
ファイブミニに代表される繊維系ドリンクに含まれていますし、最近だとアサヒ飲料から発売されている「食事と一緒に十六茶W」などお茶に含まれている商品も発売されています。
同じくアサヒからは「スタイルバランスノンアルコールビールテイスト」などノンアルコールビールも発売されているためシーンを問わず摂取することのできる成分です。
5-アミノレブリン酸(ALA)
ALAはアミノ酸の一種で動植物のほぼすべてにおいて重要な働きをする物質です。
人間の体内においてはミトコンドリアの中に存在し、エネルギーの代謝に関わる働きを担います。
摂取することでエネルギーの生産を活発にして糖の代謝を促進するいわゆる糖燃焼効果が期待できると考えられています。
ハワイ大学が米国科学誌「Clinical and Translational Science」に掲載したALAの糖代謝に対する影響の論文では糖尿病リスクのある人々に対してALAを摂取する群とプラセボ群とに分けて経過を観察したところ3か月の間、ALAを摂取した群に血糖値の明確な低下が認められたと記述されています。
他にも糖代謝のほか脂肪酸の代謝にも関わっており、中性脂肪値も低減させるといった効果も期待できます。
糖と脂肪酸を燃焼させることで糖尿病や肥満症など生活習慣病全般の予防効果が期待できるでしょう。
ALAは近年大量生産されるようになり市場に流通するようになった物質のため摂取した方がよい量などはまだ判明されていないようです。
タコ | 約80μg |
---|---|
イカ | 約39μg |
ワイン | 約150μg |
日本酒 | 約200μg |
黒酢 | 約150μg |
一日15mg(=1,500μg)のALAを摂取することで糖代謝の機能が向上したというデータもあるため、食品の場合だとタコで2kg、日本酒でボトル1本分という量を摂取する必要があるため十分な量を摂取するのは難しいでしょう。
サプリメントでの摂取がお手軽でおすすめです。
田七人参
田七人参は中国南部原産のウコギ科の薬用植物です。
一般的に食用される人参はセリ科の植物であるため別種の植物です。
中国の雲南省などで海抜1,200mを超える地域で栽培され、収穫まで3-7年もかかる植物です。
中国では漢方として止血、鎮痛、消炎、狭心症、心筋梗塞などの薬として利用されます。
現在ではそういった作用の他に糖代謝を促進させる効果があることも認められています。
田七人参にはパナキサトリオールという成分が含まれています。
糖代謝に関わるホルモンであるインスリンの働きが弱まると筋肉細胞へ糖を送りエネルギーにする代謝機能も弱まります。
このパナキサトリオールを摂取するとインスリンによる糖代謝を活性化し、筋肉細胞への糖の取り込み量を増加させます。
血液中のブドウ糖がエネルギー源として細胞へどんどん送られるために血糖値を下げる作用があります。
田七人参のパナキサトリオールの特徴的な部分は食事後の血糖値だけではなく空腹時の血糖値も下げる効果が認められていることです。
血糖値そのものを低減させる作用があるため高血糖に悩まされている人にぜひおすすめの食品です。
漢方素材のため通常の食事の中で摂取することが難しいためサプリメントでの摂取がおすすめです。
田七人参は土地の栄養分を非常に多く要求する植物です。
そのため有機栽培でしっかりと栄養を与えられた田七人参を原料としている商品を選ぶとよいでしょう。
トマト(トマトジュース)
血糖値が高い状態が続くと体内で酸化障害が発生し、活性酸素が増加します。
名古屋文理大学紀要 第7号(2007)に掲載された「2型糖尿病患者の健康管理-血糖値の改善効果に果たすリコピンの役割-」という論文では糖尿病患者の血液中のトマトに含まれているリコピン濃度を健常者と比較した結果、低値を示す傾向にあるという報告からトマトジュースが高血糖や糖尿病に対する影響が発表されました。
糖尿病患者18人に対してトマトリコピンを含む飲料を摂取する群と摂取しない群に分け、経過を観察しました。
その結果、トマトリコピンを含む飲料を摂取した群はリコピン濃度の上昇に反比例してHbA1cの値が減少した結果になっています。
特徴的だったのがHbA1c値は飲用期間を通じて緩やかに下降したことです。試験開始1年後には平均して1.3%のHbA1cが減少したという結果が判明しています。
HbA1c値は1%低下することによって糖尿病の合併症の発症・進展が25%減少するというデータもあるため、糖尿病の症状を抑えるのに効果的であると考えられます。
同時にトマトリコピンは強い抗酸化作用があるため血中内の中性脂肪やコレステロールの酸化を防ぐため、動脈硬化などの循環器系の疾患の予防や改善にも効果的であると推測されます。
この試験においては1日に200ml(リコピン換算28mg)のトマトジュースを摂取した際の結果なので、効果を期待する際はこの数値を基準にするとよいでしょう。
トマトは100gあたりに3mgほどのリコピンが含まれているため、この数値をクリアするためには4-5個食べる必要があります。トマト好きな人ならば苦にならないかもしれませんが、それでも量が多いためジュースやサプリメントと組み合わせるのがよいでしょう。
ちなみにリコピンの含有量は通常のトマトよりミニトマトの方が多いです。100gあたり8mgほどの含有量となっているため350gほどの摂取で事足ります。しかしミニトマト換算25個という量を摂取しなければいけないためやはり難しいと思います。
緑茶
緑茶に含まれているカテキンが血糖値のコントロールに有効であるという研究も行われています。
「2型糖尿病患者における高濃度カテキン含有飲料の肥満及び血糖値に対する改善効果」という試験ではカテキンを582mg含有する緑茶飲料を摂取する群とカテキン96mgを摂取する群に分けて12週間の経過を観察しました。
結果、カテキンを高濃度で含有する飲料を摂取していた群ではインスリンの有意な増加とHbA1cの減少が認められています。
インスリンを増加させるのがカテキンの血糖値に対する特徴的な効果でこれからの研究に期待がされています。
この時に利用された緑茶飲料はカテキンを582mg摂取した時のものです。
ペットボトルの飲料でいうと「おーいお茶」や「生茶」、「伊右衛門」などの飲料には500mlで200mgほどのカテキンが含まれています。
「おーいお茶」「伊右衛門」などの濃い味のものに関しては500mlで400mgほど、「ヘルシア」には350mlで540mgのカテキンが含有されています。
味の好みにもよりますが通常のお茶が好みの人は2本、濃い味やヘルシアなどの渋めのものが好きな人は1本を目安にするのがよいかと思われます。
高血糖の改善方法とは?
高血糖といわれるのは血糖値が100mg/dLを超えたあたりからです。
血糖値が126mg/dLに近い人は糖尿病に移行する可能性が非常に高いため改善が必要になります。
高血糖の場合は基本的に食事療法と運動療法を組み合わせて症状の改善を目指していきます。
食事療法
食事療法を行うためにはまず自分の適正な体重と摂取カロリー量を把握することが重要です。
それぞれ以下の計算式で求めることが可能です。
適正体重=身長×身長×22
例:身長170cmならば1.7×1.7×22=63.58kg
身長158cmならば1.58×1.58×22=54.92kg
<摂取カロリーの計算式>
筋肉量や体脂肪率でも変わってきますが標準的な体型の場合、以下の表を利用し計算します。
まずは下記の表を用いて基礎代謝量を計算します。
年齢 | 基礎代謝基準値 | |
---|---|---|
男性 | ||
18-29歳 | 24 | |
30-49歳 | 22.3 | 50-69歳 | 21.5 |
女性 | ||
18-29歳 | 22.1 | |
30-49歳 | 21.7 | |
50-69歳 | 20.7 |
基礎代謝量=基礎代謝基準値×体重
次に計算された基礎代謝量に対してライフスタイルに応じた身体活動のレベルの計数を掛けます。
身体活動内容 | 身体活動レベル | |
---|---|---|
低い | 一日の大半を座った状態で活動する | 1.5 |
普通 | 座位が中心だが通勤や家事程度は動く | 1.75 |
高い | 外回りや肉体労働、運動習慣がある | 2.0 |
一日の必要カロリー=基礎代謝量×身体活動レベル
・30歳体重65kgで内勤をしている男性ならば
基礎代謝量:22.3×65=1449.5
一日に必要なカロリー:1,449.5×1.75=2,535kcal
・30歳体重50kgで外回りをしている女性ならば
基礎代謝量:21.7×50=1,085
一日に必要なカロリー:1,085×2.0=2,170Kcal
となります。
なお、この数字は体重が多ければ多いほど多く出てしまうので先に求めた標準体重を用いて計算するとよいでしょう。
食事療法を行う場合はこの計算で求められたカロリーを上回らないことを目標に三食バランスよく摂取します。
運動療法
運動を行うことで血液中のブドウ糖がエネルギーとして消費されます。
また脂肪も消費されるため高血糖以外の生活習慣病の予防にも効果的です。
できれば毎日、少なくとも週3日以上できる種目を選ぶべきでしょう。
- 体重60kgの人の場合、1時間あたりで
- 普通の歩行:約180kcal
- ジョギング:約600kcal
- クロール:約800kcal
- 平泳ぎ:約500kcal
- エアロバイク:約400kcal
ほどの消費になります。
仮に1日に200kcalを消費する運動を1か月間続けると200×30で6,000kcalほどの消費となり脂肪で体重が約1kg減少します。
一日1時間の散歩や30分ほどのジョギング、エアロバイクなどを続ければ効果が高いでしょう。
血糖値は食後1-2時間の間に最も上昇するため、そのタイミングを狙い意識的に運動をするとなおよいです。
糖尿病の治療方法とは?
高血糖ではなく糖尿病を治療する場合も上記と同じく基本的には食事療法と運動療法を組み合わせた方法になります。
しかし中にはなかなか効果が出ない場合もあるため、その場合は投薬による治療も検討されます。
なお、投薬による治療の場合でも食事療法と運動療法は継続されます。
投薬による治療 主な薬
治療に使用される薬は主に以下のものになります。
α-グルコシターゼ阻害薬
デンプンは多糖、麦芽糖は二糖、ブドウ糖は単糖というように人間は糖を分解して吸収できる形にします。
α-グルコシターゼ阻害薬は腸内で麦芽糖に代表される二糖類がブドウ糖に分解されるのを阻害し、ブドウ糖の吸収を抑え高血糖を抑制します。
副作用としては腸内に二糖類が残ることにより腸内細菌がガスを生じ、お腹の張りや放屁をもたらすことです。
ビグアナイド薬
肝臓のグリコーゲンを作る作用や筋肉細胞へのブドウ糖の取り込みなどインスリンに対する反応を向上させる薬です。
そのほか、肝臓でのブドウ糖の生成や糖の吸収の抑制という作用もあります。
肥満によりインスリンに対する反応が弱くなった患者に使用されます。
グリニド系薬剤
インスリンの分泌を促進する薬です。薬を服用してから30分程度で効果が現れ、2-3時間ほどで効果が消失するため食後の高血糖を抑制する作用のある薬です。
食前に服用する薬ですが、飲み忘れたからといって食後に飲んでしまうと血糖値の上下のタイミングがずれて低血糖を引き起こす可能性もあります。
スルホニル尿素薬
膵臓からのインスリンの分泌量を増やす薬です。
膵臓の機能が弱っている場合に使用されます。
食後に限定せずインスリンの分泌を増やすため、タイミングによっては低血糖を引き起こす可能性もあります。
インスリン製剤
インスリンの量が十分で場合に直接注射することでインスリンを補います。
注射であるため即効性が高く、インスリンがほとんど作られない場合に使用されます。
糖尿病の薬は非常に多岐に渡るため、ここに挙げたのは一部になります。
どの薬を使用するかは医師の判断が重要になるため診断を受けることが重要になります。
糖尿病で病院を受診する場合
糖尿病の基準となる血糖値やHbA1cは健康診断によって毎年計測されます。
【糖尿病の診断基準とは?】の項目で解説した数値を超えている、もしくは近いので不安という場合には病院で診断を受けましょう。
- 前回の健康診断の結果
- 現在の食生活について
- 現在の運動習慣について
- 喫煙習慣の有無
- 飲酒量について
- 既往症の有無
- 網膜症、腎症、神経障害などの典型症状が出ているか
などをまとめていくといいでしょう。
糖尿病、もしくは予備軍と診断された場合は食事療法と運動療法からはじめて経過を観察します。
3-6か月ほどで改善が認められない場合は投薬による治療を視野に入れていきます。
Q&A
膵臓のインスリンを分泌する細胞が突如破壊されて発症するのが一型、一般的に想定される肥満や運動不足などによって引き起こされる環境依存の糖尿病が二型です。
二型は生活習慣などにより症状の予防や改善が可能ですが、一型は遺伝的な要素や自己免疫反応の異常などにより発症するので防ぎようがないのが特徴です。
一型の場合、20歳以下の若年層において発症されることが多く、インスリンの分泌能が完全に消失、もしくは極端に弱まるためインスリンの注射が必要になります。
糖尿病全体としては少ない割合ですが、健康診断を受けない小児にも発症する可能性があり注意が必要です。
小児において急激に痩せる、免疫が弱まり風邪を引きやすくなる、尿の回数が増える、喉の渇きを頻繁に訴えるなどといった高血糖に特徴的な症状が現れたら小児科へ相談することが重要です。
妊娠中は胎児に栄養素を供給するため血糖値も高くなりがちな傾向にあります。しかし血糖値が高い状態が続くと胎児が大きくなり、帝王切開による出産が必要になる可能性もあります。そのため妊娠期も空腹時血糖値が100mg/dLを超えないように気を付けたほうがよいでしょう。
基本的には食べ過ぎを避け適度に運動を行い、定期的に産婦人科で診察を受けるだけで十分です。万が一、高血糖が続く場合はインスリンを注射するなどの対策が必要です。
可能性はあり得ます。高血糖の状態が続くとホルモンの分泌が乱れます。
特にエストロゲン(女性ホルモン)やテストステロン(男性ホルモン)といった性ホルモンが乱れることによって自律神経が乱れ、鬱を引き起こす可能性もあります。
身体的にも精神的にも悪影響を及ぼす可能性があるため高血糖はなるべく早めに治療をしたいものです。
痩せていても高血糖の可能性や糖尿病の可能性はあります。
インスリンへの反応が弱まったり分泌量自体が減ることで血液中のブドウ糖がエネルギー源として利用されなかったり、肝臓でグリコーゲンとして利用されなかったりします。
血液中に残ったブドウ糖は最終的に尿として排出されてしまうためにエネルギーが足りない状態になり、体重が減少することもあります。
また一見痩せていて、適正体重なのにも関わらず体脂肪率が高い隠れ肥満の人も糖尿病をはじめ生活習慣病のリスクは高いです。
糖尿病の治療の際にインスリン注射や薬を飲むタイミングを間違えると空腹時と効果が重なり低血糖を引き起こす可能性があります。
脳や中枢神経はエネルギーをほぼブドウ糖に頼っているため、めまいや眠気、倦怠感を引き起こします。
最悪の場合、昏睡や死亡もあり得るため治療薬を使うタイミングには注意をしましょう。
血液中のブドウ糖の濃度が高いだけでは自覚症状はありませんが、全身の合併症には自覚症状があります。
高血糖後期、もしくは糖尿病初期には以下の自覚症状が現れる可能性が高いです。
- 化膿しやすい、傷が治りづらい
- 目がかすむ、視力が弱まる
- 立ちくらみがする
- 手足の末端部が痺れる
- 足がむくむ
- 風邪を引きやすい
- 疲れやすい、常にだるい
これらの自覚症状がありつつ、健康診断の血糖値が高い場合は一度内科で相談するとよいでしょう。
糖尿病は早期に発見することで症状の進行を抑えることができます。
まとめ
ブドウ糖は筋肉のエネルギー源や脳のエネルギー源として使われる身体に必要不可欠な物質です。
しかし高血糖の状態が長く続くと糖尿病への発展する可能性が高まります。
糖尿病は全身に様々な合併症を引き起こすため、予防や対策が必要になります。
適切な食習慣や運動習慣に改善することや血糖値の改善に必要な成分を摂取することで予防することが可能なので、もし血糖値が気になるならば積極的に摂り入れましょう。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。