急に足に激痛が走るとびっくりしますよね。こむら返り(足がつる)を起こすと、思わぬ激痛でその場でうずくまってしまうこともありますし、夜中に痛みで目が覚めてしまうこともあります。
こむら返りは起きやすい人、起きにくい人がいます。なぜそのような違いがあるのでしょうか?
またこむら返りにはどのような対策があるのでしょうか?原因と5つの対策、おすすめサプリを解説します。
目次
こむら返りの原因と症状
こむら返りの原因
こむら返りは足(特にふくらはぎ)の筋肉が急に収縮し、けいれんを引き起こすことで急激な痛みが生じる状態です。筋肉が収縮する原因は様々ですが、以下のような要因が原因となります。
- 激しい運動をしたとき
- 運動不足の人が準備運動などをせず、運動を開始したとき
- ナトリウム、カリウム、カルシウム
などの電解質のバランスが崩れたとき(発汗など) - 水分不足
- 冷え性
- 透析患者
- 肝硬変
- 妊娠中など
特にこむら返りが起きやすいのは、運動中と就寝中であることが多いです。
激しい運動中や、就寝中は汗をたくさんかきます。すると水分が不足し、体内の電解質のバランスが崩れてしまうので、こむら返りが起きやすくなります。
また運動時に生産される疲労物質である乳酸が筋肉に蓄積することも、こむら返りが起きやすくなる要因の一つだと考えられています。
こむら返りの症状
こむら返りの最も特徴的な症状は、足(特にふくらはぎ)に生じる強い痛みです。筋肉が収縮し、けいれんが起きているため、患部がピクピクと動くこともあります。
非常に強い痛みが生じるため、治まるまで動くことができませんよね。また痛みではなく、しびれを感じることもあるでしょう。
部位としてはふくらはぎに起きることが最も多いですが、太ももや足の指にも起きることもあります。稀ではありますが、上半身にこむら返りが起きることも考えられます。
こむら返りが起きやすい人セルフチェック7項目
こむら返りは体内の電解質のバランスが崩れることで起きやすくなります。またそのほか、筋肉が硬くなると起きやすくなることもあります。
以下のような人はこむら返りになりやすいと言えるでしょう。
- 塩分が多い食事を好み、野菜や果物をあまり摂らず、ビタミン・ミネラルが不足している人
- あまり水分を取らない人(1日1.5L未満)
- 運動不足の人
- 冷え性の人
- 激しいスポーツをすることが多い人
- 脂質異常症の薬を服用している人(スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤など)
- アルコールやカフェインなど利尿作用のあるものをよく摂る人(脱水になりやすいため)
ナトリウムをはじめとする電解質は健康維持のために重要ですが、現代の食事ではナトリウムが過剰になる傾向にあり、これもひとつのこむら返りの原因となっています。
ナトリウムと協同して働く、カリウムやマグネシウムなどのミネラルを多く含む野菜や果物をあまり摂取しない人は、体内のナトリウム対カリウム、マグネシウム等のバランスが、知らず知らずのうちに乱れやすい体になっているかもしれません。
また、水分をあまり摂らない人も、体の中で適切な電解質バランスを保てず、こむら返りが起きやすい傾向にあります。
そして運動不足や冷え性の人は筋肉が硬く、少し運動しただけでも収縮やけいれんを引き起こし、こむら返りになりやすくなります。
反対に、激しいスポーツを日常的に行う人も筋肉に乳酸が溜まりやすく、こむら返りが起きやすくなります。
また、薬の副作用として体内の電解質のバランスが乱れてしまうものもあり、スタチン系薬剤、フィブラート系薬剤など脂質異常症の薬を服用している人もこむら返りが起きやすくなってしまうことがあります。
意外なところでは、十分に水分を摂取しているつもりでも、利尿作用が高く、水分が排出されてしまうカフェインやアルコールをよく摂取する人もこむら返りになりやすいと言えるでしょう。
①こむら返りの予防方法~不足している栄養素3つを補う~
こむら返りはまず、しっかりと水分と電解質を補給して、起こさないように予防をすることが重要です。こむら返りを予防する際に重要な栄養素は以下のようなものがあります。
【1】カルシウム 【2】マグネシウム
カルシウムとマグネシウムは、ともに人間の体内では骨として最も多く存在するミネラルです。それだけではなく、血液の中にも存在して、筋肉や神経を動かすために使われています。
塩分として食事から摂取しやすいナトリウムと違い、カルシウムとマグネシウムは普通の食生活では不足しやすい傾向にあります。
カルシウムの推奨摂取量(1日当たり)は
女性
- 20代~:650mg
男性
- 20代:800mg
- 30代~40代:650mg
- 50代~700mg
となっています。
しかしすべての性別、年代で1日当たり150mgほど不足しているという調査結果があります。
マグネシウムの推奨摂取量(1日当たり)は
女性
- 20代:270mg
- 30代~60代:290mg
- 70代~:270mg
男性
- 20代:340mg
- 30代~40代:370mg
- 50代~60代:350mg
- 70代~:320mg
ですが、すべての性別、年代で1日当たり120mgほど不足しているという調査結果があります。
どちらも骨の健康を維持するためにも、電解質のバランスを保つためにも必要になる栄養素です。不足を補うためには、下記のような食品に多く含まれていますが、これらを毎日摂る習慣がない方も多いかと思います。
小魚、小エビ、乳製品、大豆加工食品、水菜・菜の花・小松菜など一部の野菜
大豆加工食品、ナッツ類、海藻類
意識的にこれらの食品を食べるようにするほか、サプリメントで補給すると効果的でしょう。サプリメントを選ぶ際はカルシウムとマグネシウムが2:1の割合で含まれているものを選ぶようにすることがポイントです。
【3】カリウム
カリウムも電解質のバランスを整えるうえで重要なミネラルです。
しかしカリウムは不足しにくいミネラルです。
- 成人男性の摂取目安量は2500mg(推奨量3000mg)
- 成人女性の摂取目安量は2000mg(推奨量2500mg)
ですが、野菜や果物、肉類、海藻類、穀物など、動物性食品・植物性食品のいずれにも豊富に含まれているため、まず不足することはありません。
ですが、以下のような人はカリウムを消費しやすいため、体内で不足して、こむら返りの原因となっていることがあります。
- よく汗をかく人
- 利尿の多い人
- 下痢をしやすい人
- 塩分(ナトリウム)が多く摂る人
カリウムの供給源としておすすめなのがトマトジュースと豆乳です。どちらも食事の際にお手軽に摂取することができ、それぞれ1パック(200ml)中にカリウムが約700mg、約400mgと豊富に含まれています。
また豆乳にはこむら返りを防ぐために重要なカルシウムやマグネシウムも豊富に含まれているため、一石二鳥と言えるでしょう。
ランチの飲み物をトマトジュースか豆乳のどちらかに変えてみると、よいカリウムの供給源となります。
②こむら返りの予防方法~運動の仕方の注意点~
適度に運動することは、肉をほぐし、こむら返りを起きにくくする効果が期待できます。
今まで運動をする習慣がなかった人が急にランニングなどの激しい運動をしてしまうとこむら返りを起こす原因となってしまいます。最初はウォーキングやアクアウォークなどの軽い運動から始めるようにしましょう。
運動時は、水分不足にならないように、水分を補給しながら行いましょう。
運動前後にストレッチを行うことも重要です。事前にしっかりと伸ばすことで筋肉がほぐれ、こむら返りが起きにくくなります。最低でもふくらはぎのストレッチを行うようにしましょう。
ふくらはぎのストレッチ
- 壁に手をついて足を前後に開く
- 両足のつま先がまっすぐ前を向き、かかとを浮かさないように意識して、前方の足に体重を乗せていく
- 後方の足のふくらはぎが伸びているのを確認しつつ、10秒ほど伸ばす
- 両足で1セットを3-5回ほど行う
これを行うと、こむら返りの予防に効果的です。
③突然のこむら返り!~急な痛みをなるべく早く治める対策~
いくら予防をしていたとしてもこむら返りが起きてしまうことはあります。急にこむら返りが起きて激痛に襲われてしまったら、落ち着いて、次の通り、しっかりと対処して痛みを和らげましょう。
こむら返りが急に起こった時の対処法は以下のようなものになります。
【1】ふくらはぎの筋肉を伸ばす
運動中や就寝中は、こむら返りが起きやすいタイミングです。急な痛みが生じても、まずは慌てずふくらはぎの筋肉を伸ばすことが大切です。
こむら返りが起きてしまったほうの足を伸ばし、同じ側の手でつま先を掴み、ゆっくりと体のほうへ引きましょう。
こむら返りは筋肉が収縮してしまうことで痛みが生じるため、ゆっくりと伸ばすことで痛みが軽減されます。痛みが治まるまで放置するよりも、痛みが引くのが早くなるため、こむら返りがおきたらこのようにふくらはぎを伸ばすようにしましょう。
もし手がつま先に届かない場合はタオルを使っても問題ありません。
立てるようならば「こむら返りの予防方法②運動の仕方の注意点」で紹介したふくらはぎのストレッチでも大丈夫です。
【2】患部を温める
まずふくらはぎの筋肉を伸ばして、痛みが徐々に和らいできたら温めるのも有効です。こむら返りで硬くなってしまった筋肉をほぐす働きが期待できます。
タイミングが合えば入浴でもいいですが、浴槽で足を伸ばせなかったり、深夜や出先などの場合は温めたタオル、カイロなどを利用しましょう。
冷やすと一時的に痛みは軽減されますが、筋肉がより硬くなってしまうため、保冷剤などで冷やす処置は避けるようにします。
【3】ふくらはぎに沿ってマッサージをする
痛みが和らいだタイミングでふくらはぎをマッサージすることも有効です。
ふくらはぎに沿って下のほうから上のほうへ優しくさするようにマッサージを行います。特に回数などに決まりはありませんが、3-5分程度さすっていると痛みがより和らいでくるでしょう。
【4】こむら返りで病院に行く?
こむら返りはありふれた症状であり、しっかりとふくらはぎを伸ばして、休養すればすぐによくなります。
そのため基本的に病院に行く必要はありません。
しかし頻繁にこむら返りが起きる場合は糖尿病や肝臓病、椎間板ヘルニア、甲状腺機能障害などが隠れていることもあります。特に激しい運動をしているわけでもないのに、週に複数回のこむら返りがある場合は、念のため医療機関で診察を受けるようにしましょう。
糖尿病や肝臓病などによるこむら返りの場合は内科になりますし、椎間板ヘルニアなど骨格に関わる病気によるこむら返りなら整形外科になります。
このどちらかの科のある病院、もしくは総合病院で診察を受けるとよいでしょう。
こむら返りによくあるQ&A
妊娠中期~後期には特にこむら返りが多くなると言われています。この時期になるとお腹が大きくなり、下半身の血流が悪くなります。血流の悪化によりふくらはぎの筋肉に十分に栄養素や酸素が供給されなくなり、硬くなってしまうことでこむら返りが起きやすくなると考えられています。
また胎児に栄養素を補給するため、母体が栄養不足になってしまうことも原因の一つでしょう。カルシウムやマグネシウム、カリウムといった電解質が不足すると、こむら返りになりやすくなります。これらの栄養素の良質な供給源である大豆加工食品やナッツ類、小松菜など積極的に摂取しましょう。
→妊娠中におすすめの栄養補給はこちら
上で解説したように、ふくらはぎの筋肉を伸ばすことが基本となります。妊娠中はお腹が大きくなっていて、手で足のつま先を掴むことが難しいかもしれません。そんな方はタオルを使うとふくらはぎを伸ばしやすいです。また、患部を温めることも有効です。
突然のこむら返りのために、枕元やかばんにタオルと温湿布、カイロを用意しておくのがおすすめです。
芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)という漢方薬がこむら返りに有効な薬と考えられています。これにはけいれんを伴う筋肉の痛みを和らげる働きがあるため、こむら返りの症状を改善させる働きがあります。
漢方は体質によって適するものと適さないものがありますが、芍薬甘草湯は体質に関わらず服用することができます。市販で購入することもできますし、漢方を扱う病院で処方してもらうこともできます。
こむら返りが多くて悩んでいる人は一度、病院で相談をして処方を受けるとよいでしょう。
ダイエットによる食事制限でカリウム、カルシウム、マグネシウムなどの電解質や筋肉が働くのに必要なビタミンB1・B2などが不足していることが考えられます。
食事制限は、例えば夜だけ炭水化物を食べないなど最低限にして、運動によるカロリー消費を重視するようにしましょう。
また痩せすぎは体の冷えをもたらします。体が冷えると筋肉が硬くなり、こむら返りが起きやすくなります。適正体重を下回るほどの過剰なダイエットは避けるようにしましょう。
ビタミン・ミネラルの不足を簡単に補うためには、記事の最後で紹介しているサプリメントもおすすめです。
十分な栄養補給と適度な運動習慣以外ならば、しっかりと湯船に浸かり入浴をすることが有効です。
その際、温まりながらふくらはぎの下のほうから上のほうへさするようにマッサージをするとなお効果的でしょう。筋肉を温めてほぐすことでこむら返りを予防する働きがあります。
寝る前は特にこむら返りが起きやすくなるので、寝る2時間ほど前に入浴とマッサージをしておくとよいでしょう。
こむら返り対策のまとめ
こむら返りが起きると激しい激痛で困ってしまいますよね。
しかし基本的には一過性(すぐ治まる)のため、しっかりとふくらはぎの筋肉を伸ばし、温め、マッサージをしてあげればすぐによくなりますし、食生活の見直し・サプリメントで予防することもできます。
万が一こむら返りが起きたときのために、普段から対処法を把握しておくことが重要です。
ただし明確な原因がないのに週に複数回以上のこむら返りが起きる場合は、糖尿病や肝臓病が原因となっていることがあります。その場合は一度病院で診察を受けるようにしましょう。
受診の上、異常が見つからなかった場合は、この記事でご紹介したこむら返り対策①食習慣のコツと、②運動のコツ、③応急処置で大丈夫です。ぜひ実践してみてください。
帝京大学医学部卒業。内科認定医、Ph.D.(医学博士)。 日本内科学会、日本呼吸器学会、日本アレルギー学会会員。
大学時代、呼吸器に関する研究でPh.D.(医学博士)を取得。現在は内科医として勤務し、海外での診療経験、最新医療の前線で活躍してきた経験を活かし、正確で信頼性ある医療情報の発信を心がけている。