健康診断の度に気になる血圧の数値。
特に高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれているので特に気になるのではないでしょうか?
高血圧とはどのような状態か、高血圧がなぜサイレントキラーと呼ばれるのか、高血圧を治療するにはどんな生活習慣を送ればよいのかなど高血圧対策を解説します。
目次
血圧が高いことって病気なの?
血圧とは心臓から全身へ送り出された血液が血管壁を押す力のことを指します。
血液を全身へ運搬するためには血圧が必ず発生します。
そのため適度な血圧は生物の活動の維持のために必要になります。
しかし血圧が高すぎたり低すぎたりすると身体に対して悪影響を及ぼします。
成人における高血圧の基準とは、下記の表での赤字の部分になります。
最高血圧 | 最低血圧 | ||
---|---|---|---|
至適血圧 | <120 | かつ | <80 |
正常血圧 | <130 | かつ | <85 |
正常高値血圧 | 130-139 | もしくは | 85-89 |
Ⅰ度高血圧 | 140-159 | もしくは | 90-99 |
Ⅱ度高血圧 | 160-179 | もしくは | 100-109 |
Ⅲ度高血圧 | ≧180 | かつ | ≧110 |
一次性高血圧
高血圧の症状の出る他の疾患やホルモンの異常などが認められない高血圧のことを指します。
本態性高血圧とも呼ばれます。
日本人の高血圧のほとんどがこのタイプの高血圧に属します。
一次性高血圧に関しては原因がいまだに判明していません。
遺伝的な原因や生活習慣的な原因によって発生します。
- 高血圧の遺伝
- 塩分摂取過多
- 肥満
- 運動不足
- 喫煙
- 飲酒
- ストレス
- 加齢
原因と考えられる要因に生活習慣が大きく関わっているので生活習慣病の一つに分類されます。
二次性高血圧
ある種の疾患やホルモン異常、その治療のための薬品などが原因となって発生する高血圧です。
日本の高血圧患者の1割ほどを占めるタイプの高血圧です。
- 腎炎、腎臓病
- 原発性アルドステロン症
- クッシング症候群
- 褐色細胞腫
- 大動脈縮窄症
- 非ステロイド性抗炎症薬の使用(アレルギー患者に対して)
- うつ病治療薬(うつ病患者に対して)
二次性高血圧に関しては原因がはっきりしているため、それぞれの疾患の治療や使用する薬品の変更などにより改善されます。
一次性高血圧も二次性高血圧も血圧が長い状態が続く「病気」です。
治療や改善が必要になります。
高血圧を放置するとどんな危険が?
高血圧自体にはほとんど自覚症状がありません。
しかし高血圧を放置すると致命的な疾患の原因となる可能性があります。
高血圧が引き起こす動脈硬化
血圧の高い状態が長く続くことにより血管が継続的に圧力にさらされます。
そうなると血管が圧力に耐えるため弾性を失い硬くなったり、血管壁が厚くなったりします。
この状態を動脈硬化と呼びます。
弾性が失われた血管は傷がつきやすくなるため、その箇所にコレステロールが溜まりやすくなります。
そうなるとさらに血管内壁が狭くなり血液の抵抗が増えることで血圧が高くなります。
高血圧は動脈硬化を引き起こし、さらに再び高血圧を助長する負の循環を引き起こします。
動脈硬化が引き起こす血管障害
動脈硬化が進行すると心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患や脳梗塞や脳出血といった脳血管障害を引き起こします。
動脈硬化により血管の弾力が失われ、破れやすくなっているところに高血圧による強い圧力が生じることでこれらの疾患の非常に高いリスクとなります。
またこれらの疾患は致死性が非常に高く、治療出来た場合も後遺症が残る可能性があります。
高血圧はこれらを引き起こすため、自覚症状がなくとも治療することが必要不可欠です。
血圧が高くなりやすい人のセルフチェック
以下の項目に当てはまる人は血圧が高くなりがちです。
特に日本の和食は醤油や味噌、漬物と塩分が多くなりがちな食べ物が多いので減塩を心掛けたいものです。
血圧を下げる食品や成分
高血圧(特に一次性高血圧)は原因が完全に解明されているわけではありませんが生活習慣、特に食生活が大きな因子になっていると考えられています。
血圧を下げるのに役に立つ食品や生活習慣を紹介します。
血圧を下げるのに有効な栄養成分や食品、飲料は以下のようなものになります。
DHA・EPA
DHA・EPAはn-3系脂肪酸に分類される脂肪酸です。
ともに魚油に多く含まれており、体内では十分な量を合成することができないため一定量を食事から摂取する必要のある必須栄養素です。
血小板の凝固能を抑制し血栓ができるのを防いだり、血管に弾力性を持たせ動脈硬化を予防したりする作用があります。
2001年 The American journal of Clinical nutritionに掲載された試験ではDHA・EPAを含むn-3系脂肪酸を投与したところHDL(善玉)コレステロールの値が優位に上がり、逆にトリアシタルグリセロール(中性脂肪)の値は下がったという結果が出ています。
DHAやEPAといった魚油を摂取することでコレステロールを肝臓に戻し血中のコレステロール量を減らすHDL(善玉)コレステロール値が上がり、血栓の原因となる中性脂肪の値が下がることで動脈硬化を改善・予防する効果が期待できます。
動脈硬化が進行すると血管内壁が広がり血液の抵抗が増え、血圧は高くなります。
動脈硬化を防ぐDHA・EPAを豊富に含む魚油を積極的に摂取することで血圧を下げる効果が期待できます。
同時に高血圧由来の動脈硬化が大きなリスクとなる心筋梗塞や狭心症といった虚血性心疾患や脳梗塞や脳出血といった脳血管障害といった非常に致命的な疾患の予防にもつながります。
また魚類は基本的に肉類と比べてカロリーが低いです。
高血圧だけではなく肥満や糖尿病、脂質異常症といった他の生活習慣病の予防にも効果的でしょう。
重さ | カロリー | DHA・EPA量 | |
---|---|---|---|
サバ(1尾) | 96g | 194kcal | 約2800mg |
マグロ(赤身・刺身5切れ) | 50g | 70kcal | 約75mg |
アジ(開き・1尾) | 76g | 166kcal | 約900mg |
豚ロース(生姜焼き用5枚) | 117g | 307kcal | — |
牛バラ肉(焼き肉用カルビ5枚) | 100g | 500kcal | — |
鶏もも肉(唐揚げ5個分) | 100g | 200kcal | — |
DHA・EPAは肉類にはほとんど含まれておらずサバ、アジ、サンマといった青魚やマグロやカツオなど赤身の魚のトロ部分に多く含まれています。
DHA・EPAともに一日の摂取基準は存在していませんが1日に合計で900mg以上摂取すると動脈硬化に効果的であると考えられています。
一日のうち一食の主菜を魚にすると十分に摂取できますし、普段あまり魚を食べない場合はサプリメントで摂取するとよいでしょう。
イワシペプチド
イワシペプチドはイワシのタンパク質を分解して作る栄養成分です。
ペプチドはアミノ酸が2個~数十個結合してできた物質ですがイワシペプチドはアミノ酸のバリンとチロシンが結合したバリルチロシンと呼ばれる構造を持っています。
バリルチロシンは血圧を下げる作用があるとして現在、様々な健康食品の素材として利用されています。
「食品タンパク質由来機能性ペプチドによる血圧降下作用 : イワシペプチド (Var-Tyr) による降圧食品の開発を中心として」という論文では軽度高血圧のボランティア29名にイワシペプチド4gを含む飲料を4週間経口投与したところ最高血圧が9.3mmHg、最低血圧が5.2mmHg降下したことが確認されました。
イワシペプチドが血圧を上昇させる酵素であるアンジオテンシン変換酵素Ⅰ(ACE)を阻害する働きがあり、この結果を導いたと考えられています。
イワシペプチドはイワシのタンパク質の中に含まれていますが、あくまでタンパク質を分解しないと十分な量を摂取することができません。
そのためイワシペプチドを摂取する場合、食品よりもサプリメントをはじめとする健康食品の形で摂取するとよいでしょう。
ただしイワシはDHAやEPAといった魚油やビタミンB12、タンパク質などに優れカロリーの低い食材なので積極的に食生活の中に加えたい魚です。
ケルセチン
ケルセチンはフラボノイドの一種でタマネギやソバ、柑橘類をはじめ多くの植物に含まれる成分です。
特にタマネギの皮に多く含まれています。
ビタミンと似た働きをするビタミン様物質の一つであり、強い抗酸化作用や抗炎症作用、血圧降下作用があると言われています。
活性酸素であるスーパーオキシド(O2-)が血中に多くなると血管を弛緩させ血圧を降下させる作用のある一酸化窒素を参加させ強力な酸化物であるパーオキシナイトライト(ONOO-)という物質に変化させてしまいます。
結果、血圧が上がり様々な血管障害のリスクになりますがケルセチンを摂取することでスーパーオキシド(O2-)を還元し、血圧上昇を抑制することが示されました。
また強い抗酸化作用を持つため血管壁へのコレステロールや中性脂肪の沈着を防ぎ動脈硬化を防ぐことで血管障害に対してさらなる効果を期待できるでしょう。
ケルセチンはタマネギやソバ、柑橘類に多く含まれています。
そういった野菜や果物を積極的に食べることがもちろん、特に多く含まれるタマネギの皮を使ったお茶やサプリメントを利用するのも非常に効果的です。
ケルセチンは摂取する基準量が設けられている成分ではありません。
サプリメントなどを利用し、メーカーが設定している効果が期待できる量を摂取するとよいでしょう。
カリウム
カリウムは細胞内に多く含まれるミネラルです。
細胞外液に多く含まれるナトリウムとともに働き細胞の浸透圧を維持し、水分の保持の役割をもっています。
そのほか酵素反応の働きをサポートしエネルギーの代謝や細胞の正常な活動を助けたり、腎臓での老廃物の排泄を助けたりする作用もあります。
ナトリウムは摂取過多になると高血圧の要因になります。
カリウムはナトリウムの体内濃度の調整をする役割も果たします。
カリウムを十分に摂取すると腎臓でナトリウムが体内に再吸収されるのを防ぎ尿として排出することを促します。
カリウムは摂取量が非常に多く、また多めに摂取しても尿として排出されるため積極的に摂取したい成分です。
男性 | 女性 | |||
---|---|---|---|---|
摂取量 | 目標量(以上) | 摂取量 | 目標量(以上) | |
0-5(月) | 400 | 400 | ||
6-11(月) | 700 | 700 | ||
1-2(歳) | 900 | 800 | ||
3-5(歳) | 1100 | 1000 | ||
6-7(歳) | 1300 | 1800 | 1200 | 1800 |
8-9(歳) | 1600 | 2000 | 1500 | 2000 |
10-11(歳) | 1900 | 2200 | 1800 | 2000 |
12-14(歳) | 2400 | 2600 | 2200 | 2400 |
15-17(歳) | 2800 | 3000 | 2100 | 2600 |
18-29(歳) | 2500 | 3000 | 2000 | 2600 |
30-49(歳) | 2500 | 3000 | 2000 | 2600 |
50-69(歳) | 2500 | 3000 | 2000 | 2600 |
70以上(歳) | 2500 | 3000 | 2000 | 2600 |
特に血圧を下げるためにはカリウム1に対してナトリウムの摂取量を2以下にするとよいと考えられています。
ナトリウム量は以下の計算式で求めることができます。
仮に1日に10gの食塩を摂取している場合、10÷2.54×1000=約3.940mgのナトリウムを摂取していることになります。
カリウム1に対してナトリウム2が望ましいのでこの場合、1日のカリウムの摂取目標量は約2000mgとなります。
カリウムは植物性食品を中心に様々な食品に含まれています。
ほうれん草(半束) | 100g | 490mg |
---|---|---|
サニーレタス(1/3玉) | 100g | 410mg |
トマトジュース(紙パック) | 200ml | 600mg |
鶏ササミ(2本弱) | 100g | 400mg |
絹ごし豆腐(1/3丁) | 100g | 150mg |
エリンギ(中1本) | 50g | 230mg |
一般的な食生活を送る限り不足することのない栄養素ですが、塩分の高い日本の食生活に合わせて摂取基準量以上に摂取したい栄養素です。
野菜やトマトジュースなどで手軽に摂取できる栄養素でもあるのでそれらの食品を多く食べるように心がけましょう。
胡麻麦茶
胡麻麦茶は株式会社サントリー(以下、サントリー)が血圧を降下させる作用のあるトクホとして販売している商品です。
もともとはサントリーがヒトに役立つ微生物の研究をするうえで胡麻油から胡麻が持つ健康に対する作用に着目し、セサミンに代表される胡麻の健康成分に関する研究がスタートしました。
その中で胡麻由来のタンパク質を分解することで胡麻ペプチドが得られることが判明し、胡麻ペプチドには血圧を下げる作用があると明らかになりました。
人間の体内には血管を収縮させ血圧を上昇させるアンジオテンシンⅡという物質を作り出す酵素が存在します。
胡麻ペプチドはその酵素の働きを阻害することで血圧が上昇するのを抑制する作用があることが判明しました。
胡麻ペプチドによる血圧降下作用が消費者庁に認められ胡麻ペプチドを含む胡麻麦茶は特定保健用食品として認可を受けました。
胡麻麦茶だけではなく特定保健用食品全般に言えることですが摂取してすぐに効果が現れるわけではありません。
できれば継続的に3か月以上摂取することをおすすめします。
注意したい塩分の多い食品
塩分が高い食事をして体内のナトリウム濃度が高まると血圧が高くなるリスク要因となりえます。
目安として成人の一日当たりの食塩の摂取量基準とよく食べるものの塩分量は以下になります。
成人男性 | 成人女性 | |
---|---|---|
推定平均必要量 | 1.5g | 1.5g |
摂取目標量 | 8.0g | 7.0g |
このように実際に塩分の必要な量というのはとても少ないです。
しかし現代の食生活で必要量に収めることは非常に難しいため目標量以下で抑えられるようにするとよいでしょう。
なお、すでに高血圧で悩んでいる方は1日あたりの塩分の摂取量を6g以下に抑えるようにしましょう。
梅干し(大きめ1個) | 20g | 約4g |
---|---|---|
明太子(ひと腹) | 40g | 約2.5g |
醤油(大さじ一杯) | 15ml | 約2.5g |
塩鮭(一切れ) | 80g | 約2-5g |
ハム(1枚) | 20g | 約0.5g |
味噌汁 | 1杯 | 約1.5g |
ラーメン | 1杯 | 約6g |
コンビニ弁当 | 1個 | 約3-6g |
かつ丼 | 1杯 | 約6-7g |
親子丼 | 1杯 | 約5-6g |
握り寿司 | 1人前 | 約4g |
インスタントラーメン | 1個 | 約5-6g |
基本的に味の濃いもの、外食は塩分が非常に多くなりがちです。
ヘルシーで健康によいイメージのある味噌汁も一杯あたり1.5gと3食食べると4.5gの塩分摂取量になってしまいます。
1日に3杯の味噌汁だけで男女ともに1日の塩分の目標量の半分以上を摂取してしまう計算になるので、、減塩食品をうまくつかったり醤油やソース、マヨネーズなどの調味料ではなくレモンなどの柑橘類を利用したりするようにしましょう。
血圧を下げる運動習慣
食事だけではなく運動習慣を身につけることは血圧の下降に効果があります。
運動を行うことで心肺機能が向上し血液の循環を促します。
血液を全身に運搬する力が向上し血圧の降下を期待できるほか、肥満の解消による血圧の降下、中性脂質やコレステロールの低下による血栓や動脈硬化の予防など血圧のみならず生活習慣病全般に対する好影響を及ぼします。
短距離走や重量のある器具を使った筋力トレーニングなどの無酸素運動は急激に血圧を上昇させるため高血圧改善の運動としては適していません。
ウォーキング、軽いジョギング、自転車や水中ウォーキングなどあまり負担がなくできる有酸素運動が適しています。
運動習慣がない人はまず1日30分のウォーキングからはじめるとよいでしょう。
血圧を下げる生活習慣
入浴
入浴の方法を変えるだけで血圧を下げる効果が期待できます。
42度を超える熱いお湯につかると交感神経が刺激を受け血管を収縮させ、急激に血圧を上昇させてしまいます。
すでに高血圧で動脈硬化などの不安もある人が熱いお湯につかってしまうと血管障害を引き起こす危険性があります。
血圧を下げる効果を期待するにはぬるめのお湯でゆっくりと体を温めることが重要です。
- 温度は38-40度程度
- 20-30分ほどゆっくりと浸かる
- 入浴前には水分を補給する
- 脱衣所やふろ場を温めておき、湯との温度差をなくす
これらのポイントを守ることで全身に血液を運搬する力が高まり、血圧の降下が期待できます。
またぬるめのお湯に浸かることで副交感神経を刺激し血管が広がり、血圧が低下します。
熱いお湯につかるのが好きな人もいるとは思いますが、高血圧に悩まされている場合は以上の点に気を付けるとよいでしょう。
禁煙をする
喫煙をすることで交感神経が刺激され血管が収縮し血圧が上がってしまいます。
また煙草を吸うと体内で活性酸素が生まれ動脈硬化の要因の一つになります。
血圧を上げ、動脈硬化を引き起こすため血管障害を発生させる非常に高いリスクとなります。
喫煙する習慣がある人は禁煙することを検討しましょう。
過度の飲酒をやめる
適量の飲酒は一時的に血圧を下げる効果が期待できますが、大量の飲酒や継続的な飲酒は血圧を上げる作用があります。
大量に飲酒をしてしまう人、毎日のように飲酒をしている人は節酒を心掛けましょう。
なお、一日あたりの飲酒量の目安は以下の表になります。
ビール | 中瓶1本 | 500ml |
---|---|---|
日本酒 | 1合 | 180ml |
焼酎 | 0.6合 | 110ml |
ウイスキー | ダブル1杯 | 60ml |
ワイン | 1/4本 | 180ml |
缶酎ハイ | 1.5缶 | 520ml |
ただし飲み会などでは簡単に基準を超えてしまうと思いますので、例えば1日にビールを中瓶4本ほど飲んだ場合、3日間休肝日を作るなど週単位で考えるとよいでしょう。
高血圧の治療について
日本高血圧学会による高血圧医療ガイドライン2014によると高血圧治療の基本方針は以下のようになっています。
- 高血圧の持続による心血管病の発症・進展・再発による死亡やQOLの低下を抑制するために高血圧治療が勧められる。
- 高血圧治療の対象は 140/90mmHg以上のすべての高血圧患者であり,高血圧患者は血圧値と血圧以外の危険因子,高血圧性臓器障害の有無によって低リスク,中等リスク,高リスクの 3群に層別化される。
- 高血圧治療は,生活習慣の修正(第 1段階)と降圧薬治療(第 2段階)により行われ,降圧薬治療の開始時期は個々の患者のリスクレベルに応じて決定される。
- 正常高値血圧からリスクは上昇する。生活習慣の修正によって正常高値血圧から高血圧への進展を防ぐべきである。
- 降圧目標は 140/90mmHg未満とする。
ただし,糖尿病,蛋白尿陽性の CKDでは 130/80mmHg以上が治療の対象で,降圧目標は 130/80mmHg未満とする。
後期高齢者は 150/90mmHg未満を降圧目標とし,忍容性があれば 140/90mmHg未満を目指す。
2の項目にあるようにⅠ度高血圧に該当する140/90mmHgの数値の人は高血圧の治療の必要があります。
また3にあるように高血圧患者を低、中、高3つのリスク段階に層別化して治療の方法を決定します。
Ⅰ度高血圧 | Ⅱ度高血圧 | Ⅲ度高血圧 | |
---|---|---|---|
リスク第一層 (予後影響因子がない) |
低リスク | 中等リスク | 高リスク |
リスク第二層 (糖尿病以外の1-2個の危険因子、3項目を満たすMetsのいずれかがある) |
中等リスク | 高リスク | 高リスク |
リスク第三層 (糖尿病、CKD、臓器障害/心血管病、4項目を満たすMetS、3個以上の危険因子のいずれかがある) |
高リスク | 高リスク | 高リスク |
高血圧の診断と治療方法
高血圧の治療のためには初診の際以下のことを判断されます。
低リスク群:
3か月以内の指導で140/90mmHgならば降圧薬治療開始
中等リスク群:
1か月以内の指導で140/90mmHgならば降圧薬治療開始
高リスク群:
ただちに降圧薬治療を開始
基本的に低、中等リスクに該当する場合は食事療法と運動療法になります。
食事療法の場合は1日の塩分摂取量を6g未満に抑え、カリウムを豊富に含む食材を摂取することを指導されます。
運動療法の場合は適度な強度の有酸素運動を1日30分以上行うことを目標に指導されます。
低、中等リスクの患者の場合はそれぞれ期限を区切り高血圧が改善されない場合、高リスク患者の場合はただちに降圧薬による治療が開始されます。
降圧薬に関しては種類が様々ですが、既往症・生活習慣・妊娠の有無などを判断され最も適切なものが処方されます。
高血圧がリスクとなる血管障害を防ぐためにも用法用量を守って服用することが重要です。
高血圧は最高血圧/最低血圧が140/90mmHgを超えていれば治療の必要性のある生活習慣病の一つです。
生活習慣病の名の通り、食事や運動、そのほかの生活習慣により改善や予防が可能なのでぜひ生活習慣を改めましょう。
もしも血圧が140/90mmHgを超えているのならば一度医師の指導を受け、積極的に治療をしていきましょう。
血圧の悩みによくあるQ&A
人間の自律神経は活動や興奮を司り血圧を上昇させる交感神経と、休息や鎮静を司り血圧を低下させる副交感神経が存在します。
ストレスを受けると交感神経が刺激され興奮を引き起こす物質であるアドレナリンが分泌されます。
身体が興奮状態になることで血圧が上昇します。ストレスを感じる状況が長く続く場合、しっかりとリラックスする時間も作りましょう。
急性高血圧とは高血圧緊急症のことを指します。
高血圧脳症や高血圧性左心不全、急性心筋梗塞などが該当し、すぐに降圧治療を開始しないと脳や心臓、腎臓、大動脈に致命的なダメージを与えます。
最低血圧が120mmHgを超えることが大半でどの疾患も進行が非常に速いため治療が遅れると死亡や重大な障害が残る可能性が非常に高いです。
慢性的に高血圧であると血圧コントロールができずこれらの疾患を発症する可能性が高まるため血圧を下げるような生活を行うことが予防のために重要です。
妊娠中に最高血圧が140mmHg、最低血圧が90mmHgを超えることを妊娠高血圧症候群と呼びます。
決して珍しいものではなく妊婦の20人に1人ほどの割合で発生します。
重症になると脳出血や肺水腫、肝機能障害や胎児の発育不全、機能不全につながります。
もともと糖尿病や高血圧、肥満などの生活習慣病を持っている人や高齢出産などが要因となり発生すると考えられています。
また近年の研究では胎児の胎盤に異常が発生し、栄養素をうまく運搬できないため血液を多く流し補完するために発症するとも考えられています。
治療に際しては胎児に影響が出る可能性を考慮して慎重に行います。
妊娠中は血圧や体重、体温など家で計測できる数値を把握し、異常がある場合適宜医師に相談するとよいでしょう。
糖尿病患者は血液内のブドウ糖の濃度が高くなっています。
身体は血液の濃度を一定に保とうとする恒常性があるため、ブドウ糖の濃度を下げようと水分を血管の外から血液の内部へ取り入れます。
結果、血流量が増えて圧力が高まり血圧が上昇します。
また糖尿病の人は肥満である人も多いため体の末端まで血液を運搬するにはより多くの圧力が必要になります。
そのため血圧が上昇しがちの状態となっています。
高血圧や脂質異常症、肥満などの生活習慣病は一般的に自覚症状が薄いためなかなか調子が悪いという実感を得ることができません。
そのため治療を行わず放置することで知らず知らずのうちに脳卒中や心筋梗塞といった致死性の高い疾患のリスクを高めてしまいます。
自覚症状がないのにも関わらず致死性の疾患を引き起こすため高血圧に代表される生活習慣病はサイレントキラーと言われています。
残念ながら高血圧は遺伝することが多いです。
一般的に両親ともに高血圧の場合、子供は1/2、両親どちらかが高血圧の場合は1/3、両親がどちらも高血圧でない場合は1/20の割合で高血圧になる遺伝的因子が発生すると言われています。
ただし高血圧は「生活習慣」病です。
遺伝の問題よりも生活習慣の問題のほうが比重が大きいため運動や減塩などに努めましょう。
まとめ
高血圧は自覚症状がないのが最も恐ろしい点です。
健康診断で数値が高くてもなんとなく放置してしまうことが多いのではないでしょうか?
しかし高血圧は動脈硬化をはじめとする血管障害の非常に大きいリスクになります。
心筋梗塞、脳卒中、脳梗塞など死亡する可能性が高く、治療できたとしても大きな障害が残りやすい疾患の原因となるため高血圧も病気であることを自覚し、治療することが重要です。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。