加齢による物忘れ、記憶力の低下の対策~認知症との違いは?食事や自宅でできる改善方法

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物忘れ加齢とともに肉体的に衰えていくように、脳も段々と衰えていきます。

加齢とともに物忘れが多くなるのは自然な老化現象です。

決して病気ではないため、日常生活の意識の改善次第で物忘れも改善することができます。

まずは物忘れがどのようなものかを見ていきましょう。

物忘れが起こる原因

記憶力物忘れは加齢に応じて脳の機能が低下することで発生します。

脳の機能が低下すると記憶力や判断力、適応力などが低下します。

その結果、自分が覚えていたはずの記憶をうまく引き出せなくなり物忘れが発生します。

脳の機能は20代をピークに徐々に低下していくと考えられています。

「最近、若いころと比べて集中できなくなった」といった症状も脳の機能の低下が関係しています。

20代から30代、30代から40代と段々加齢していくと脳の機能は低下して記憶力や判断力、認識力が落ちていきます。

そのため記憶していた事柄をうまく引き出せなくなり物忘れが発生します。

物忘れと認知症の違い

認知症の典型的な症状は認知記憶障害です。

物忘れと似た症状が見られますが、以下のような点で物忘れとは異なります。

<物忘れ>
  • ヒントがあれば物事を思い出せる
  • 体験の一部のみを忘れる(電話番号を忘れるなど)
  • 物忘れがあるという自覚がある
  • 日付、曜日、自分の年齢などを間違える
  • 日常生活に支障はほとんどない
<認知症>
  • ヒントがあっても物事が思い出せない
  • 体験のすべてを忘れる(電話をする用事自体を忘れるなど)
  • 物忘れがあるという認識がない
  • 日付、曜日、自分の年齢などが分からない
  • 日常生活に支障が出る
認知症チェックリスト
認知症はアルツハイマー病や脳の萎縮、脳血管疾患の後遺症などが原因で発症します。原因によりどのような対処をするかが異なるため、認知症らしき症状が見られたら早めに医療機関で診察を受けることが重要です。

以下のような症状が見られる場合、医療機関で診察を受け認知症の早期発見を心がけましょう。

  • 日付を聞いても答えることができない
  • 物をどこに置いたか分からず探していることが多い
  • 自分の年齢、職業、子供の名前、孫の名前、現在の首相など知っているはずの事柄を忘れてしまっている
  • 自分がどこにいるかが分からなくなり迷子になることがある
  • 日常的に行う動作(家事、仕事、趣味)などでミスが多くなった
  • 何度も同じことを聞くことが多い
  • 攻撃性が増した
  • 会話で言葉がうまく出てこない
  • 話しかけた内容が理解できない
  • 人の認識ができない(AさんをBさんと認識してしまう)
  • ミスを人のせいにしやすくなった


物忘れの予防策・改善策

食生活認知症は症状の進行を抑えたり治療をしたりすることが必要な病気です。

しかし物忘れならば食生活に気を付けたり脳を鍛えたりすることで改善することが可能です。

物忘れを予防したり改善させたりする方法には以下のようなものがあります。

食事、栄養成分による対策

脳の機能を維持するために積極的に摂取したい栄養素があります。

物忘れが多くなりがちな60歳以降は積極的に摂取するようにしましょう。

DHA、EPA

魚DHA、EPAは主に魚に多く含まれるn-3系脂肪酸です。

DHAとEPA自体は必須栄養素ではありませんが、n-3系脂肪酸は必須栄養素に分類されています。

DHAは脳の細胞膜を構成する成分の一つです。

n-3系脂肪酸、特にDHAを摂取することによって脳の認知機能を改善し、記憶力や判断力の向上に繋がる可能性が示唆されています。

人間を対象にした臨床試験も様々に行われていますが、現段階ではDHAの摂取により有意に認知機能が向上したという結果が報告された例はないようです。

ただしラットを用いた動物実験ではDHAの摂取により空間認知や長期記憶が改善されたという例が報告されています。

またDHA、EPAを摂取することにより血小板凝集作用を抑制して血流を改善し、心臓疾患や脳血管疾患のリスクを低減する作用があることが確認されています。

DHAとEPAは必須栄養素ではないため1日の摂取基準は設定されていません。

ただしDHA、EPAが属するn-3系脂肪酸には1日の摂取目安量が設定されています。

魚類をあまり食べない場合はサプリメントを利用して摂取するとよいでしょう。

<n-3系脂肪酸の1日の摂取目安>単位:g/日
  男性 女性
18-29歳 2 1.6
30-49歳 2.1 1.6
50-69歳 2.4 2
70歳以上 2.2 1.9
<n-3系脂肪酸が多い食品>単位:g/100g
さば 5.88
さんま 3.95
ぶり 3.35
さけ 3.17
まいわし 3.16

レシチン

●レシチンはリン脂質と呼ばれる物質の一つです。

細胞膜を構成する主要な成分の一つであるほか、神経伝達物質であるアセチルコリンを作る材料にもなります。

レシチンから作られるアセチルコリンは脳内で記憶力や認知を保つ神経伝達物質です。

レシチンを十分に摂取すると記憶力が向上する効果が期待できます。

またレシチンは血液内のLDLコレステロールを低下させ、HDLコレステロールを増やす作用もあります。

LDLコレステロールにより引き起こされる動脈硬化、動脈硬化が原因で引き起こされる脳血管疾患は例え治ったとしても脳に後遺症が残り、物忘れが激しくなったり認知症の原因になったりします。

血流を改善し脳血管疾患を予防するという意味でも物忘れの対策に効果的です。

レシチンは大豆や卵に豊富に含まれています。

レシチンは必須栄養素ではないため1日の摂取目安量は設定されていません。

しかし脳機能の維持のためにはレシチンを1日に5gから10g摂取するのが効果的と考えられています。

現在、日本人は食事から1日あたりおよそ3gのレシチンを摂取していると考えられています。

より摂取したいならばサプリメントで摂取するのがお手軽でしょう。

アスタキサンチン

カニアスタキサンチンは鮭やカニの赤い色のもととなっているカロテノイドの一種です。

非常に強い抗酸化作用を持つことが特徴で、ビタミンEビタミンCβカロテンなどよりもその作用が強いと考えられています。

順天堂大学 白澤卓二教授の臨床試験による以下のデータが報告されています。

 

対象 認知症ではない物忘れを自覚している50歳から69歳の男性10名
内容 アスタキサンチンを1日12mg、12週間摂取
検査 認知機能検査(CogHealth)
結果 脳の認知機能の改善が確認された

このことから記憶力や判断力、反応の速さの改善にアスタキサンチンが効果的である可能性が示唆されています。

またアスタキサンチンは眼精疲労の回復にも効果的であると考えられています。

抗酸化作用が強いため動脈硬化を予防する働きもあるため、老化に伴う様々な症状へのよい影響が期待されています。

アスタキサンチンは鮭やエビ、カニ、いくらなどに含まれているカロテノイドです。

毎日食べることが難しい食品ばかりなのでサプリメントから摂取するのがよいでしょう。

自宅でできる物忘れの改善法

物忘れは脳の機能を向上させることである程度予防したり改善したりすることが可能です。

物忘れを自覚し始めたらどれか一つでもいいので始めてみましょう。

ボードゲーム

将棋将棋、囲碁、オセロ、麻雀などのボードゲームは頭を使います。

例えば将棋ならば今盤上にある駒、持ち駒にある駒をどこに指すことでどのような変化が起き数手先でどうなるかということを考えます。

考えるということは脳を刺激して脳機能を向上させます。

ボードゲームのみならず、単純な運のみに左右されない考えることが必要なゲームは脳の機能の向上に繋がります。

テレビゲームでも構いません。

物忘れを予防するために何か一つ、ゲームを始めてみるのはとても効果的です。

日記を書く

日記を書く夜寝る前に1日の間にどんなことがあり、どんな気持ちを抱いたかを思い出して日記を書くことは脳の記憶力維持のためにとても効果的です。

書くことがなかったら朝昼晩どんなものを食べてどんなものがおいしかった程度でも問題ありません。

ただしこのときに重要なのがパソコンや携帯電話ではなく、自分の手で筆記するということです。

文字を書くことは漢字やカナを思い出し脳を刺激してくれます。

手書きの日記を書くことで脳の認知機能を維持することができるでしょう。

買い物のときに計算をする

買い物計算は脳の高度な機能です。

コンビニやスーパーで日用品を買う際に「今大体どれくらいの金額か」を計算する習慣をつけると脳の刺激となり認知機能の維持に効果的です。

厳密に一の位まで計算する必要はありませんが「いま大体これくらいだからお金をこれくらい出せば足りる」程度の計算はできるようにしましょう。

人と話す

人と話す人と話すことは脳への刺激になり認知機能を向上させます。

反対に人と話す機会が少ないと認知機能が低下してしまう傾向にあります。

一人暮らしであっても人と話すことは重要です。

なんらかのサークルに所属する、ボランティア活動をする、茶飲み友達を作るなどで会話できる相手を作ることが重要です。

手を使う趣味を作る

編み物手を使うことは脳の刺激になります。

例えばピアノや手芸、絵画、折り紙などの趣味を作ると認知機能の維持に効果的でしょう。

物忘れの悩みによくあるQ&A

物忘れが激しく、認知症ではないかという不安に駆られるようになりました。医療機関で診察を受ける場合は何科を受診すればよいでしょうか?

最も望ましいのは物忘れ外来や老年科という診療科です。

ただしまだまだどこにでもある診療科ではないためお近くにない場合もあります。

普段診察を受けている診療所やクリニックはあるでしょうか?

一度、かかりつけ医に相談することで近くにある大学病院や総合病院で適した科の紹介を受けることができます。

迷ったならば一度かかりつけ医に相談しましょう。

かかりつけ医に相談して紹介状を受けることで大学病院などの初診料が安くなるメリットもあります。

まだ若い年代なのですが物忘れが気になります。若年性の認知症はどんなものですか?

65歳未満の人に発症する認知症が若年性の認知症です。

初期症状の特徴として作業効率の低下や気分の落ち込み、意欲の低下などが挙げられます。

ただしこれらの症状はうつ病やPMS、更年期障害、強いストレスなどでも起きる可能性があります。

今までできていたことができなくなった、何度も同じことを聞いてしまう、日付や曜日、自分の誕生日がすぐに出てこないなどの症状の自覚もしくは他者からの指摘があるならば一度診察を受けたほうが良いかもしれません。

タバコを吸うんですが認知症のリスクが上がると聞きました。本当でしょうか?

タバコを吸うことで動脈硬化が進み脳血管疾患のリスクが高まります。

脳血管疾患の後遺症として物忘れや認知症が現れることがあるのでその意味でもリスクは高まると言えるでしょう。

またタバコは脳を萎縮させてしまいます。

脳の萎縮は物忘れや認知症のリスクを高めるため、なるべく禁煙を心がけたほうが良いでしょう。

物忘れが激しく困っています。病院へ行くべきでしょうか?

物忘れで日常生活に支障が出るようならば早急に病院で診察を受けるべきだと思います。

物忘れであっても認知症であっても早期に対策をすることで症状の改善が可能です。

物忘れ対策のまとめ

思い出す物忘れは加齢によって起こる自然な老化現象です。

加齢で脳の機能が低下するのは避けようがないことですが、トレーニング次第で脳の機能を維持、向上させることは可能です。

最近物忘れが多いと思ったら本項目で解説していることを生活改善の参考にしてください。

一方で認知症の場合は医療機関での治療が必要です。

根治は難しくても症状の進行を遅らせることが可能です。

本人の主観だけではなく家族や友人から見て異常が生じている場合は一度医療機関で診察を受けましょう。



【執筆者】大見 貴秀医師

大見貴秀医師帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。

「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。

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