「日本人は小さい」というのも既に昔の話で、現在では一般的に成長期の終わりといわれる17歳での平均身長が男性:約170cm、女性:約158cmとなっています。周囲と比べて身長が低いとコンプレックスになってしまうものですよね。
成長期に背を伸ばすために必要な生活習慣について紹介します。
目次
なぜ身長は伸びるのか?
身長は年齢に応じて骨が成長することで伸びていきます。特に背骨や足の骨の成長が身長の伸びに大きく関わります。
骨の両端には隣り合う骨と連結をしている「骨端線(こったんせん)」という軟骨部分があります。この骨端線は細胞が活発に増殖している部分でもあり、この部位を起点として骨は成長していきます。
乳幼児から高校生くらいまでは骨端線は非常に柔らかく伸びやすくなっているため骨の成長がしやすい状況になっています。しかしその年代を過ぎると骨端線が固まってしまうため、成人はなかなか身長が伸びづらくなっています。
骨の成長にかかわる3つのホルモン
骨の成長には3つのホルモンが重要な働きを担っています。
成長ホルモン
脳の下垂体から分泌されるホルモンです。肝臓に働きかけてIGF-I (ソマトメジンC)という物質の分泌を促進します。IGF-Iは骨の成長を促します。同時に筋肉を作る作用もあるため、身長のみならず体を作るうえで非常に重要な役割を果たします。
甲状腺ホルモン
甲状腺から分泌されるホルモンです。骨へのカルシウムの定着に関係するホルモンで成長ホルモンとともに骨の形成の役割を担います。
性ホルモン
男性の場合は精巣、女性の場合は卵巣から分泌されるホルモンです。他2つのホルモンとは異なり思春期になると分泌がさかんになります。骨の成熟に大きく関係し、身長の伸びのラストスパートをかけるホルモンです。骨の成長の停止にも関わります。
これらのホルモンの働きにより骨は成長します。もちろんホルモンだけが成長の要因ではなく、遺伝・栄養・運動・休養・睡眠などさまざまな要因があります。
年齢別平均身長
年齢別、男女別の平均身長は以下の表の数値で確認できます。
<年齢ごとの平均身長(単位:cm)>
男子 | 女子 | |
---|---|---|
0歳 | 49 | 48.4 |
1歳 | 75 | 73.4 |
2歳 | 85.4 | 84.3 |
3歳 | 93.3 | 92.2 |
4歳 | 100.2 | 99.5 |
5歳 | 106.7 | 106.2 |
6歳 | 113.3 | 112.7 |
7歳 | 119.6 | 118.8 |
8歳 | 125.3 | 124.6 |
9歳 | 130.9 | 130.5 |
10歳 | 136.4 | 136.9 |
11歳 | 142.2 | 143.7 |
12歳 | 149.1 | 149.6 |
13歳 | 156.5 | 153.6 |
14歳 | 162.8 | 156 |
15歳 | 167.1 | 157.1 |
16歳 | 169.4 | 157.5 |
17歳 | 170.5 | 157.9 |
上記はあくまで平均身長のため、これらの数値を下回っているからといって不安になる必要はありません。
低身長ってどんなもの?
成長障害のため低身長になっている場合もあります。低身長の定義は以下の通りです。
- 同年齢、同性の標準身長に比べて下記の表の赤字部分以下の場合
- 1年間の成長率が同年齢、同性の標準成長率と比べて下記の表の橙色部分以下である状態が2年以上続いている場合
<年齢別・男子の平均身長と低身長の目安(単位:cm)>
男子 | -2SD | 標準成長率-1.5SD | |
---|---|---|---|
0歳 | 49 | 44.7 | |
1歳 | 75 | 69.8 | 11.6 |
2歳 | 85.4 | 79.4 | 7.6 |
3歳 | 93.3 | 86.4 | 6.4 |
4歳 | 100.2 | 92.5 | 5.8 |
5歳 | 106.7 | 98.1 | 5.1 |
6歳 | 113.3 | 103.8 | 4.6 |
7歳 | 119.6 | 109.5 | 4.6 |
8歳 | 125.3 | 112.7 | 4.4 |
9歳 | 130.9 | 119.7 | 4.1 |
10歳 | 136.4 | 124.5 | 3.9 |
11歳 | 142.2 | 128.9 | 4.1 |
12歳 | 149.1 | 133.9 | 5.5 |
13歳 | 156.5 | 140.7 | 7.7 |
14歳 | 162.8 | 148.6 | 5 |
15歳 | 167.1 | 154.7 | 2.3 |
16歳 | 169.4 | 157.7 | 0.8 |
17歳 | 170.5 | 158.8 | 0 |
<年齢別・女子の平均身長と低身長の目安(単位:cm)>
女子 | -2SD | 標準成長率-1.5SD | |
---|---|---|---|
0歳 | 48.4 | 44.2 | |
1歳 | 73.4 | 68.4 | 11.3 |
2歳 | 84.3 | 78.4 | 7.5 |
3歳 | 92.2 | 85.5 | 6.3 |
4歳 | 99.5 | 91.9 | 5.8 |
5歳 | 106.2 | 97.7 | 5.4 |
6歳 | 112.7 | 103.4 | 5.1 |
7歳 | 118.8 | 108.8 | 4.6 |
8歳 | 124.6 | 113.9 | 4.3 |
9歳 | 130.5 | 118.8 | 4.2 |
10歳 | 136.9 | 123.9 | 5.2 |
11歳 | 143.7 | 130.2 | 6.7 |
12歳 | 149.6 | 137 | 4.5 |
13歳 | 153.6 | 142.3 | 1.7 |
14歳 | 156 | 145.3 | 0.6 |
15歳 | 157.1 | 146.5 | 0.2 |
16歳 | 157.5 | 147.1 | 0 |
17歳 | 157.9 | 147.4 | 0 |
男子、女子ともに年齢に対して赤字の身長以下ならば低身長であると考えられます。
また、1年間の年齢に対する身長の伸びがオレンジ色以下の状態が2年以上続くと、これも低身長と考えられます。成長の記録をとっておき、これらの数値を下回る、もしくは下回る傾向が見られる場合は、医療機関を受診しましょう。
受診する科は、まずかかりつけの小児科です。低身長はさまざまな原因により引き起こされますが、もっとも大きな原因の一つは成長ホルモンの分泌不足によるものです。
この場合は、成長ホルモンの投与により低身長が改善される可能性が高いです。ただし思春期に入ってからだと、性ホルモン分泌の影響で最大限の効果を発揮できません。
上記の低身長の基準を把握して、仮にその傾向が見られる場合は遅くとも小学校卒業までには治療をはじめたほうがよいでしょう。
受診をする際は以下のものを用意しておくと参考になります。
- 母子手帳(もしくは成長の推移が分かるもの)
- 家族の身長をまとめたもの
表内にSDという文字があります。SDとは標準偏差のことを指し、この図でいうと身長の分布する幅のことを指します。+2SDと-2SDの間には95%の身長が分布しています。赤・橙色の部分はそれぞれ-2SD、-1.5SDなっています。100人の児童がいた場合、それぞれ下から2-3番目、下から10番目ほどが該当します。
身長が伸びにくい生活セルフチェック
規則正しい生活と食生活は身長を伸ばす最大のポイントです。知らず知らずのうちに身長が伸びにくい生活をしていませんか?当てはまるものが1つでもある場合は要注意です。
- 3食食べていない
- 好き嫌いが多い
- お菓子やジュースなどでお腹いっぱいにしてしまう
- 運動不足
- 夜更かしである(午前2時くらいまでは起きてしまう)
- 寝不足である(目安:小学生9時間 中学生8-9時間 高校生8時間)
- ストレスが多い
どれか一つでも健全な成長には悪影響を及ぼすうえ、複数該当すればさらに悪影響が大きくなります。
食事も運動も睡眠も成長のためには必要です。子どもが正しい生活習慣を身につけられるよう、環境を整えることが大人の役目です。
身長を伸ばす栄養素や食べ物・食事
カルシウム
カルシウムは人体で最も多く存在するミネラルです。存在量の99%は骨や歯の中に存在します。
骨の成長には欠かせないため、成長期には特に必要な栄養素になります。幼少~成長期は骨の体の形成のために、若年~中年期は骨の維持のために、高齢期からは骨粗しょう症の予防のためにと、全年齢で必要な栄養素です。
<年齢・男女別の1日のカルシウムの必要量(単位:mg)>
男性 | 女性 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
必要量 | 推奨量 | 目安量 | 必要量 | 推奨量 | 目安量 | |
0-5(月) | 200 | 200 | ||||
6-11(月) | - | - | 250 | - | - | 250 |
1-2(歳) | 350 | 450 | 350 | 400 | - | |
3-5(歳) | 500 | 600 | - | 450 | 550 | - |
6-7(歳) | 500 | 600 | - | 450 | 550 | - |
8-9(歳) | 550 | 650 | - | 600 | 750 | - |
10-11(歳) | 600 | 700 | - | 600 | 750 | - |
12-14(歳) | 850 | 1000 | - | 700 | 800 | - |
15-17(歳) | 650 | 800 | - | 550 | 650 | - |
18-29(歳) | 650 | 800 | - | 550 | 650 | - |
30-49(歳) | 550 | 650 | - | 550 | 650 | - |
50-69(歳) | 600 | 700 | - | 550 | 650 | - |
70以上(歳) | 600 | 700 | - | 500 | 650 | - |
カルシウムの摂取量の必要量は上記の性別ごとの赤色の部分です。しかし不足しやすいこと、吸収しづらいミネラルであることから両性とも赤色部分の摂取量が推奨されます。
カルシウムはほぼすべての食品に含有されていますが、特に多いのは乳製品や小魚、エビなどです。
<カルシウムの多い食品一覧>
牛乳200ml | コップ一杯 | 220mg |
---|---|---|
チーズ25mg | 1切れ | 158mg |
ヨーグルト100g | 1カップ | 120mg |
煮干し10g | 大きめ3匹 | 220mg |
さくらエビ10g | 2人前 | 200mg |
豆腐(木綿) | 1/3丁 | 120mg |
小松菜100g | 2-3茎分 | 150mg |
吸収率も食品によって異なり、
- 乳製品:50%
- 小魚、エビ類:30%
- 大豆製品、野菜類:20%
ほどとなっています。
カルシウムはビタミンCや酢酸などの酸を含んだ食品と一緒に摂取することで吸収率が上がります。トマト、ピーマン、いちごなどのビタミンCを多く含む食品と一緒に摂取したり、南蛮漬けやピクルスなどの酢を使った料理で摂取したりするのもおすすめです。
またビタミンDは骨へのカルシウムの定着を促進するため、同時に摂取するとなおよいでしょう。ビタミンDは鮭やサンマ、アンコウの肝といった魚介類やいくら、たらこといった魚卵類、きくらげなどに多く含まれます。
ビタミンDは皮膚を日光に当てることで体内で合成されるので、日光のもとでの適度な運動もおすすめです。
亜鉛
亜鉛はタンパク質や核酸の代謝に関わるさまざまな酵素の成分として必要なミネラルです。核酸の合成は細胞分裂と密接に関わっているため、亜鉛が不足していると成長が遅れる場合があります。
また、亜鉛は骨の成長に強く関わる甲状腺ホルモンと性ホルモンの合成にも必要不可欠です。亜鉛の摂取基準は以下になります。
<年齢・男性の1日の亜鉛の必要量(単位:mg)>
必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用上限量 | |
---|---|---|---|---|
0-5(月) | - | - | 2 | - |
6-11(月) | - | - | 3 | - |
1-2(歳) | 3 | 3 | - | - |
3-5(歳) | 3 | 4 | - | - |
6-7(歳) | 4 | 5 | - | - |
8-9(歳) | 5 | 6 | - | - |
10-11(歳) | 6 | 7 | - | - |
12-14(歳) | 8 | 9 | - | - |
15-17(歳) | 9 | 10 | - | - |
18-29(歳) | 8 | 10 | - | 40 |
30-49(歳) | 8 | 10 | - | 45 |
50-69(歳) | 8 | 10 | - | 45 |
70以上(歳) | 8 | 9 | - | 40 |
<年齢・女性の1日の亜鉛の必要量(単位:mg)>
必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐用上限量 | |
---|---|---|---|---|
0-5(月) | - | - | 2 | - |
6-11(月) | - | - | 3 | - |
1-2(歳) | 3 | 3 | - | - |
3-5(歳) | 3 | 4 | - | - |
6-7(歳) | 4 | 5 | - | - |
8-9(歳) | 5 | 5 | - | - |
10-11(歳) | 6 | 7 | - | - |
12-14(歳) | 7 | 8 | - | - |
15-17(歳) | 6 | 8 | - | - |
18-29(歳) | 6 | 8 | - | 35 |
30-49(歳) | 6 | 8 | - | 35 |
50-69(歳) | 6 | 8 | - | 35 |
70以上(歳) | 6 | 7 | - | 35 |
亜鉛は代謝や成長などさまざまなことに必要になる栄養素ですが、不足しやすい栄養素でもあります。
特に成長期の子供は所要量が多くなるため、亜鉛を多く含む食材を積極的に食べさせるとよいでしょう。亜鉛は魚介や肉、豆類などに多く含まれています。
<亜鉛の多い食品一覧>
牡蠣100g | 大きめ5個 | 13.2mg |
---|---|---|
タラバガニ100g | 足1本 | 4.2mg |
豚レバー100g | カット5-6枚 | 6.9mg |
牛肉100g | シチュー用肉5-6個 | 4.6mg |
チーズ100g | スライスチーズ5枚 | 3.2mg |
油揚げ100g | 2枚 | 2.4mg |
通常の食生活ではなかなか摂取基準を十分に満たすことが難しいので、サプリメントを利用するのも一つの手です。
ただし亜鉛は大量に摂取すると急性中毒を発症する可能性のある栄養素です。上記の亜鉛の摂取基準の表にある許容上限量は超えないように気を付けてください。成長期の子供に使用する場合は用法用量を親の責任のもとしっかりと守りましょう。
アルギニン
アルギニンは非必須アミノ酸の一種です。ただし成長に深く関与するため、必要量が多い成長期の子どもは食事からも摂取することが必要です。
アルギニンは成長ホルモンの分泌を促す作用があるため、成長期に身長を伸ばしたい場合におすすめのアミノ酸です。
成長ホルモンは、乳幼児期から思春期の終了まで、骨の成長と身長の伸び、体格の形成に大きく関わります。
生後1年の間に人間は最も身長が伸び、その後4歳くらいまでは1年に7-10cmほど身長が伸び続けます。小児期は1年で4-6cmほどずつ身長が伸びていき、思春期が近づくと1度身長の伸びは鈍化します。しかし思春期のはじまりから終わりにかけてまた再び急激な身長の伸びが見られます。
成長ホルモンは骨の成長を促すIGF-Iという物質を作り出し、成長ホルモン自体も骨に働きかけ成長を促すため、身長を伸ばすには非常に重要な役割を果たします。同時に筋肉の合成にも関わるため、強く健康的な体格の形成に役立ちます。
アルギニンは鳥や豚といった肉類や、大豆などの豆類に多く含まれています。アルギニンの摂取量は明確な基準があるわけではないので、肉や魚、豆類といったものをバランスよく食べることが重要です。
サプリメントなどでの摂取も有効ですが、もちろんアルギニンのみで成長が促進されるのではなく、身長の伸びにとってはタンパク質・カルシウム・亜鉛などさまざまな栄養素が必要なので、アルギニンサプリメントを摂取する際は単一の成分のみに注目するのではなく、さまざまな栄養素がバランスよく含有されているものを選ぶとよいでしょう。
タンパク質
タンパク質は筋肉や代謝に関わる酵素などの構成成分となる物質です。タンパク質はアミノ酸同士が結合して構成されています。
食事から摂取したタンパク質は消化酵素によってアミノ酸に分解され、人体に必要な形に再合成されていきます。アミノ酸は人体では合成することのできない必須アミノ酸と、人体で合成することのできる非必須アミノ酸に分かれます。
必須アミノ酸は食事からの摂取が必要不可欠になります。
<ヒトのタンパク質を構成する20種類のアミノ酸>
【必須アミノ酸】
バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、ヒスチジン
【非必須アミノ酸】
アルギニン(小児においては必須アミノ酸)、グリシン、アラニン、セリン、チロシン、システイン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、プロリン、グルタミン酸
タンパク質は、筋肉を構成し体格の形成にとって必要不可欠な成分であるだけでなく、骨の成長にも関わっています。
骨は両端部にある骨のつなぎ目の骨端線(こったんせん)という軟骨を起点として細胞分裂をして成長していきます。軟骨の構成成分にはタンパク質が含まれているため、骨の成長と身長の伸びのためには十分な量のタンパク質も必要です。タンパク質の食事摂取基準は以下になります。
<年齢・男性の1日のタンパク質の必要量(単位:g)>
必要量 | 推奨量 | 目安量 | |
---|---|---|---|
0-5(月) | - | - | 10 |
6-8(月) | - | - | 15 |
9-11(月) | - | - | 25 |
1-2(歳) | 15 | 20 | - |
3-5(歳) | 20 | 25 | - |
6-7(歳) | 25 | 35 | - |
8-9(歳) | 35 | 40 | - |
10-11(歳) | 40 | 50 | - |
12-14(歳) | 50 | 60 | - |
15-17(歳) | 50 | 65 | - |
18-29(歳) | 50 | 60 | - |
30-49(歳) | 50 | 60 | - |
50-69(歳) | 50 | 60 | - |
70以上(歳) | 50 | 60 | - |
<年齢・女性の1日のタンパク質の必要量(単位:g)>
必要量 | 推奨量 | 目安量 | |
---|---|---|---|
0-5(月) | - | - | 10 |
6-8(月) | - | - | 15 |
9-11(月) | - | - | 25 |
1-2(歳) | 15 | 20 | - |
3-5(歳) | 20 | 25 | - |
6-7(歳) | 25 | 30 | - |
8-9(歳) | 30 | 40 | - |
10-11(歳) | 40 | 50 | - |
12-14(歳) | 45 | 55 | - |
15-17(歳) | 45 | 55 | - |
18-29(歳) | 40 | 50 | - |
30-49(歳) | 40 | 50 | - |
50-69(歳) | 40 | 50 | - |
70以上(歳) | 40 | 50 | - |
タンパク質は通常の食生活を送る分ならば不足することはありません。
<日ごろよく食べる食品のタンパク質含有量>
ご飯160g | 1膳 | 4g |
---|---|---|
卵60g | Mサイズ1個 | 6g |
牛乳200ml | コップ1杯 | 6g |
豆腐150g | 半丁 | 15-20g |
肉類100g | 種類による | 約20g |
魚介類100g | 種類による | 約20g |
例えば朝食にご飯1膳と卵1個、牛乳1杯と豆腐50gを食べた場合は21gのタンパク質の摂取量となります。成長期の男子でも1日の推奨量は60-65gほどなので、昼食と夕食のことを考えると十分に摂取推奨量をクリアできるでしょう。ただしスポーツをする子どもの場合は+10-15gほどを考えるとよいでしょう。
ビタミン類
各種ビタミン類も成長のためには必要不可欠です。
ビタミンA
ビタミンAは、レバーやウナギといった食品や、βカロテンとして人参やカボチャなどに含まれるビタミンです。
成長期にビタミンAの摂取が十分でないと骨が成長障害を起こし、体格の形成に悪影響が及びます。また神経の成長障害や目の機能の低下の可能性も考えられます。
ビタミンAは脂に溶ける性質を持つ脂溶性ビタミンであるため、体内に蓄積されます。レバーやウナギなどに含まれる動物性のビタミンAは、過剰摂取が続くと頭痛や吐き気、成長障害などを引き起こします。
植物からβカロテンとして摂取すれば体内でビタミンAに変換され、余剰分は皮膚に蓄えられ抗酸化物質として働きます。そのため、ビタミンAの摂取には人参やカボチャをはじめとする緑黄色野菜を中心にすることをおすすめします。
ビタミンB群
ビタミンB群はB1、B2、ナイアシン、B6、葉酸、B12、ビオチン、パントテン酸から構成される水溶性ビタミン群です。
体内での働きとしては糖質、脂質、タンパク質の違いはあれどエネルギー源の代謝を担います。人間が成長するためにはエネルギーが必要です。食事として摂取した炭水化物や脂質は体内で酵素やビタミンB群の力で化学変化を起こしエネルギーとして利用されます。
またビタミンB群はタンパク質の消化やアミノ酸からタンパク質への再合成などの役割も果たします。以下にビタミンB群各種の働きと多く含まれる食品を紹介します。
ビタミンB1
糖質がエネルギーに変換されるのをサポートする。玄米や大豆製品、豚ヒレ肉などに多く含まれる。
ビタミンB2
糖質、脂質、タンパク質の三大栄養素すべての代謝をサポートする。発育促進の作用もある。レバー、青魚、乳製品に多く含まれる。
ナイアシン
糖質、脂質、タンパク質の代謝をサポートする。魚卵やカツオ、マグロなどの赤身に多く含まれる。
ビタミンB6
体内でタンパク質が分解されてできたアミノ酸の再合成を助ける。肉、魚に多く含まれる。
葉酸
造血と細胞分裂に関わる。菜の花やホウレンソウなどの青葉野菜や牛レバーに多く含まれる。
ビタミンB12
タンパク質や核酸の合成に関わる。脳や神経の正常な働きの維持にも関わる。レバー類や青魚、貝類に多く含まれる。
ビオチン
糖質、脂質、タンパク質の代謝に関わる。卵、レバー、豆類に多く含まれる。
パントテン酸
エネルギー産生を円滑にする。レバー、魚、魚卵、卵などに多く含まれる。
ビタミンB群はすべて水溶性ビタミンなので、過剰摂取の心配はありません。またビタミンB群は単独で働くのではなく、お互いがお互いをサポートし合います。そのため単一で摂取するより、さまざまな食品を食べてバランスよく摂取することが重要です。
ビタミンC
ビタミンCは、緑黄色野菜や緑茶などに多く含まれるビタミンです。コラーゲンの合成や活性酸素の除去などに働きます。
骨の両端にある骨端線の軟骨部分はコラーゲンからできているので、円滑な働きのためにはビタミンCが必要になります。
またビタミンCはカルシウムの吸収を効率よくする作用もあります。通常は不足する栄養素ではありませんが、熱や光に不安定なため調理によって失われます。生野菜や果物などを摂取するとよいでしょう。
ビタミンD
ビタミンDはカルシウムの骨への沈着を促進させるビタミンです。乳幼児期から思春期にかけての成長や、骨量の維持、老年期の骨粗しょう症の予防などに働きます。
ビタミンDはアンコウの肝や青魚、きくらげに多く含まれています。またしいたけをはじめとするキノコ類は紫外線によってビタミンDへと変換されるビタミンDの前駆体を含みます。そのため天日干しされた乾燥しいたけなどもビタミンDを豊富に含みます。
ビタミンK
ビタミンKは血液の凝固やカルシウムの骨への沈着に働くビタミンです。植物の光合成によってつくられるビタミンで、色の濃い緑黄色野菜に豊富に含まれます。また微生物の発酵でも作られるため、納豆や味噌などにも多く含まれます。
骨の成長や身長の伸びにはカルシウムが重要であることは非常によく知られていますが、カルシウムだけでは背を伸ばすことはできません。色々な栄養素を摂取し、さまざまな影響を及ぼし合うことで骨の成長が促されます。
身長を伸ばす運動
骨の成長、身長の伸び、体格の形成には適度な運動が必要不可欠です。骨の成長には骨端線への刺激が必要です。
特に歩く、走る、跳ねるなどの縦方向への刺激を与えることで骨の成長を促すことができます。
幼少期ならば鬼ごっこ、かくれんぼ、だるまさんが転んだ、けんけんぱなどの遊びや、ジャングルジム、木に登る、滑り台(上る・着地する)、トランポリンなどの遊具の使用が骨へ縦の刺激を与えることができます。
小学校入学から卒業くらいまでならば、体育の授業や運動会などのイベント、犬の散歩やプール、スキーなどのウィンタースポーツなどが当てはまるでしょう。
中学~高校卒業くらいまでならば部活動なども本格的に始まるため、運動による刺激は事欠かないと思われます。
おおよそのスポーツで骨への刺激を与えることができます。そのために重要なことは、スポーツに対する忌避感・苦手意識を抱かないように、強制せず、興味をもったことをやらせることです。
なお、思春期が始まる頃までは、ダンベルを用いた筋力トレーニングやハードなマラソンなどの負担の大きい運動は避けたほうがよいでしょう。
負担の大きい運動は性ホルモンの分泌を促進します。性ホルモンは身長の伸びに関わるホルモンですが、身長が伸びる時期の終わりにも関わるホルモンです。性ホルモンの分泌が早いうちから促進されることで、成長期が早く終わる可能性もあります。
身長を伸ばす睡眠の取り方
規則正しい生活による十分な睡眠時間の確保は、骨の成長と身長の伸びに役立ちます。身長を伸ばす働きをする成長ホルモンは、睡眠時に大量に分泌されます。特に22:00~2:00の間に最も多く分泌されるため、成長期は規則正しい生活を送り、この時間帯は就寝していることが重要です。
理想的な睡眠時間は
- 小学生:9時間
- 中学生:8-9時間
- 高校生:8時間
です。睡眠時間を確保しつつ質の良い眠りを実現するポイントは以下の3点です。
1:成長ホルモンは就寝後2時間くらいから最も多く分泌される
成長ホルモンは就寝してから2時間ほど経ち、脳が休息をしているノンレム睡眠時に多く分泌されます。就寝後2時間が22:00~2:00の最も成長ホルモンが多く分泌される時間帯にあたるように寝るとよいでしょう。
特に小学校低学年のうちは20時くらいには就寝をすると身体の成長にとってよい影響を及ぼします。
2:寝るのは食後2時間経ってから
食後2時間は消化のために交感神経が活発になっています。交感神経が興奮や活動を司る神経なので、活発になっていると眠りが浅くなってしまいます。
食後すぐに寝るのではなく、しばらくおいてから就寝をしましょう。理想的には、18時台に夕食をとり、20時台に寝るのがベストです。
3:しっかりとくらい部屋で寝て、朝は太陽の光を
人間の体内時計を切り替えるのは太陽の光です。明るい部屋で寝たり、朝しっかりと太陽の光を浴びなかったりすると、体内時計が狂い、睡眠にスムーズに移行できなくなります。
夜はしっかりと暗い部屋で寝て、朝は太陽の光を浴びることが、体内時計を調整して質の良い眠りを実現するポイントです。
身長を伸ばす生活は
- バランスのよい食生活
- 規則正しい生活と早寝早起き
- 適度な運動による刺激
に集約されます。どれも当たり前のことですがいざ実現しようと思ってもなかなかできないかもしれません。まずはどれか一つでもはじめてみましょう。
身長の伸ばし方にまつわるQ&A
確実ではありません。遺伝による身長への影響は20%ほどと言われています。一般的に欧米人は日本人より身長が高いですが日本人の平均身長より背が低い人もいますし、逆に日本人でも欧米人の平均身長より高い人もいます。80%は食生活や生活習慣、運動習慣によって影響される部分なので身長が伸びることを諦める必要はありません。
ホルモン異常などでない場合は基本的に成長ホルモン療法を行うことはできません。また行ったとしてもホルモンに異常がないならば成長ホルモンを投与しても効果は薄いと思われます。しかし整形外科的なアプローチとして手術的療法によって身長が低いことを改善できる可能性はあります。ただし保険を適用することはできず治療費が高額になるうえに賛否のある方法でもあります。興味のある場合は一度医師に相談するとよいでしょう。
骨の成長は骨の両端部にある軟骨部である骨端線(こったんせん)を起点にします。骨端線に適度な縦方向の刺激を与えることで細胞分裂が活性化し身長の伸びに影響を与えます。ただし縄跳びやトランポリンなどだけではなく歩く、走る、泳ぐなどといった動作でも骨端線に刺激を与えることは可能なためジャンプ系の運動に固執する必要はありません。
高校生から大学1年生くらいまでならば思春期の終了時期の個人差で身長が伸びることはあり得ます。しかしそれを過ぎてから急激に伸びることは可能性がないとは言い切れませんが非常に考えづらいです。仮に1-2cm程度の軽微な変化ではなく数cm以上の伸びが見られた場合、一番可能性として考えやすいのはO脚や猫背などの改善です。
O脚や猫背は根本的に身長が伸びるわけではありませんが整形外科での治療が可能なため成長期終了後は一つの可能性として考えてもいいかもしれません。
低身長自体は、身長が低いことを本人が気にした場合のみ、それがデメリットになります。しかし低身長の裏にはホルモンの分泌不足や骨の異常、内臓疾患などが隠れている可能性があるため、身長が低いことを気にしない場合でも、身長の値や身長の伸び率が平均を下回ることが続いた場合は一度医療機関へ受診するとよいでしょう。
身長を伸ばす方法まとめ
身長は骨が成長することで伸びていきます。骨の成長には成長ホルモン、甲状腺ホルモン、性ホルモンの3つのホルモンが大きな役割を果たしています。同様にタンパク質やカルシウム、亜鉛、ビタミン類などの栄養素や質の良い眠りも重要なファクターになっています。
遺伝の身長に対する影響は全体の20%ほどなので、身長を伸ばしたい場合はまず生活習慣の改善から始めましょう。
帝京大学医学部卒業。麻酔科標榜医、麻酔科認定医、サプリメントアドバイザー。 日本麻酔科学会、日本抗加齢医学学会(アンチエイジング学会)会員、生活習慣病アドバイザー。
「治療」よりも「予防」を重視して診療にあたる現役医師。麻酔科医として勤務するだけではなく、加齢による身心の衰えや疾患に対するアドバイスを行う。