
自分の健康は自分で守る時代、サプリメントはますます身近な存在になりつつあります。いつも元気で若々しく充実した毎日を送るためにも、これからは自分に合うサプリメントは自分で選ぶ時代になったと言えるかも知れません。そのためにはまず、サプリメントとは何か、その役割や目的、薬品との違いなどを正しく理解して、必要なものを見きわめることが大切になってきます。この項では、サプリメントを賢く選ぶために必要な基礎知識についてお話ししたいと思います。
知っておきたいサプリメントの基礎知識
サプリメントとは
サプリメント(Supplement)という英語には、「補助するもの」「補充するもの」の意味があります。それが転じて、毎日の食事だけでは不足しがちな栄養素を補うための食品、また人の体に本来備わっている免疫力や自然治癒力を活性化し、病気になりにくい体質づくりをサポートする食品の総称として使われ、栄養補助食品や健康補助食品とも呼ばれています。
サプリメントの本分はあくまでも「補う」ことにあり、大量に摂取したからといって病気が治ったり、急激に健康効果が現れるというようなものではありません。必要な栄養素は基本的に食事で摂り、足りない分をサプリメントで補って、心身の健康づくりを心がけましょう。
高品質な商品を見分ける目が大切
誰もが知っているサプリメントという言葉ですが、実はこの言葉に行政的な定義はありません。日本の法律では人が口から摂取するもののうち、医薬品以外はすべて食品に分類され、一部科学的根拠があると認められたもの以外は、薬事法により効能や効果について表記することが制限されています。そのため生薬やハーブのように、民間に伝わる健康法として長い歴史や実績があるものでも、その効果を消費者に伝えることができないのが現状です。また食品衛生法によってのみ管理されているため、優良な商品から悪質な商品までが混在し、品質の劣るものでも容易に流通できてしまうという弱点もあります。(財)日本健康・栄養食品協会では、安全や衛生面、表示内容について審査を行い、基準に達した製品に対して認定マークの表示を許可していますので、ひとつの目安にすると良いでしょう。
アメリカ・EUでの定義
サプリメント先進国アメリカでは・・・
1970年代にサプリメントの研究が始められ、日本より20年以上先行しています。その背景には医療費が高額で健康に対する国民の関心が高く、通院したり薬品を買うより安価なサプリメントが早くから普及したという事情があります。また〝健康は自己責任″の考えから、食品の効能の表示を求める運動がさかんなこともあげられます。
アメリカでは「栄養補助食品健康教育法」に基づき、サプリメントを「ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸などの栄養成分を1種類以上含み、通常の食事を補うためのあらゆる製品」とし、医薬品と食品の中間的存在として明確に定義づけられています。また食品医薬品局(FDA)によってサプリメントはきびしく治験審査され、製造物責任法による責任も重いのが日本とは違うところです。
EU諸国では・・・
フードサプリメント制度があり、サプリメントを「通常の食事を補うため、栄養的・生理学的作用のある1つ以上の栄養素・食品成分を含む錠剤、カプセル、粉末、液状アンプルなど」と定義し、品質に基準が設けられています。また伝統療法として伝わっているハーブについては、ハーバルメディスンとして医薬品の区分で使用されている国も多くあります。
*例えば「イチョウ葉」のように、日本発祥でありながらヨーロッパで研究が進み、医療現場に導入されるなど医薬品として使われているものもある。
サプリメントの歴史
サプリメントの概念はアメリカで誕生し、日本に伝えられました
1975年、マクガバン上院議員から「アメリカ人の不健康の原因は栄養不足にある」という報告書が上院議会に提出され、これを機にサプリメントの研究が始まりました。1994年には栄養補助食品健康教育法が成立し、サプリメントはさらに広く流通するようになりました。
日本での歴史
【1990年頃】 国民の健康意識が高まるとともに、国による予防医学政策のPR活動が功を奏し、サプリメントへの意識が広まりました。
【1991年】 「保険機能食品制度」が発足し、国が定めた規格や基準を満たす食品は保険機能を表示することができるようになりました。
【1996年】 アメリカからの強い要望により規制緩和が行われ、国内でサプリメント販売が可能になりました。
【1997年】 13種類のビタミンが食品として販売可能になりました。
【1998年】 168種類のハーブ類が食品として販売が可能になりました。
【1999年】 12種類のミネラルが食品として販売可能になりました。
【2000年】 海外で栄養補助食品として流通しているものが、医薬品として規制されることなく食品として販売可能になりました。
【2001年】 アミノ酸23種類が食品として販売できるようになりました。また医薬品と紛らわしいという理由で販売が禁止されていた、錠剤・カプセル・粉末状のものの基準が緩和され、食品であることを明記すれば販売できるようになりました。
【2006年】 消費者にとって分かりやすいサプリメント情報の提供をめざし、国立健康・栄養研究所のデータベースの整備が進められることになりました。
【2015年】 これまで2種類しかなかった保健機能食品の規制が緩和され、「機能性表示食品」が加えられました。
法整備が待たれる日本のサプリメント事情
日本ではまだ、サプリメントについて明確な定義がなく「単なる食品」として分類されており、欧米諸国に比べて発展途上にあると言えます。現在規制緩和や基準の見直しが検討されている段階で、今後さらに法整備が進み、消費者にとってより多くの選択肢の中から安心して間違いのないサプリメント選びができる市場が形成されていくことが期待されています。
いま、なぜサプリメントが必要なのか?
高カロリーなのに低栄養になりがちな食生活
食の欧米化が進むにつれ伝統的な日本食のバランスが失われ、現代人の食生活は動物性たんぱく質や脂質の摂りすぎ、野菜不足の傾向にあります。またコンビニやファーストフードでの簡便な食事、加工食品の普及などにより、食事で摂取できるビタミンやミネラル、食物繊維の量も減少。結果〝高カロリーでありながら低栄養″という状況に陥りがちです。さらに加工食品やインスタント食品には、食品添加物の心配も加わってきます。
食材自体の栄養価低下も深刻
化学肥料や農薬、成長促進剤などの使用により、野菜自体の栄養価も昔に比べて減っています。また魚介類や野菜は旬のものを食べるのが栄養的にも一番なのですが、その習慣が失われつつある現代では、同じものを食べても昔のような栄養価は期待できません。
ストレスも栄養バランスをくずす原因に
食生活の問題が深刻になる一方、日々の生活で受けるストレスはますます増大しています。ストレスは多量のビタミンを消費するだけでなく、生活習慣病を引き起こす原因にもなってしまいます。
こうした問題点を改善するためには、まず食生活を見直し栄養バランスをととのえることが大切です。その上で積極的に摂った方が良い栄養素や、不足しがちな栄養素の補給に、サプリメントは大きな力になってくれます。
サプリメントのメリット&デメリット
上手に取り入れれば多くのメリットが期待できるサプリメントですが、もちろんデメリットもあります。サプリメントを活用するときは、その両方を理解したうえで賢く付き合っていきたいものです。
サプリメントのメリット
- 普段の食事だけでは不足しがちな栄養素を、手軽にしかも確実に補うことができる。
- 食品に含まれる栄養素の量を計算するのは難しい。その点サプリメントなら健康維持のため推奨されている量を、必要な分だけ確実に摂取することができる。
- 外食の増加、加工食品・インスタント食品の普及により慢性的に不足している栄養素や、普段の食事では摂るのがむつかしい希少な栄養素も、しっかりと補うことができる。
- 不足した栄養素を食品で摂ろうとすると、カロリーオーバーになることも多い。サプリメントなら摂取カロリーをふやすことなく、栄養素だけを効率よく摂ることができる。
- 薬品に比べ副作用がほとんどないので、安心して長く続けることができる。
- 携帯に便利なので、水さえあれば外出先や旅行中などどこでも手軽に摂取できる。
サプリメントのデメリット
- 薬品に比べて即効性がないため、短期間で効果を実感しにくい。
- 手軽に栄養素を摂取できる反面、サプリメントさえ摂っておけば大丈夫と肝心の食生活をおろそかにするケースもある。
- 食事には栄養を摂る以外にも、食材を通じて季節を感じ、彩りや食感を味わいながら家庭の味を子供たちに伝えていくという教育的な意味もあるので、サプリメント万能と思い込むのは本末転倒となる。
- 特定の栄養素を多量に摂ることにより、場合によっては過剰摂取で健康に悪影響が出ることもあるので注意が必要。
- 法的な整備が不充分なため、品質の良いものと悪いものが入り混じった状態にある。中には品質や安全性について、疑わしいものが交じっている場合もあるので注意が必要。
サプリメントと医薬品の違い
サプリメントと医薬品は形状が似ているため混同されがちですが、その目的や働きにははっきりとした違いがあります。また法的にもさまざまな規制がありますので、しっかり理解しておきましょう。
医薬品 | サプリメント | |
法的分類 | 薬事法上、特定の病気や症状に対す る予防や治療効果が認められている もの。成分内容、効果効能や副作 用、安全性などについて調査を行 い、厚生労働大臣または都道府県知 事の認可を受ける必要がある。 |
厚生労働省が定める「食薬区分」に より、左の医薬品に属さないサプリ メントは「食品」に分類される。 |
目的 | 体の特定の部位の、特定の病気を治 療したり症状をやわらげるためのも ので、薬理効果を持つ。 |
体が持つ免疫力や自然治癒力をアッ プさせ、健康維持や病気予防に役立 てるためのもので、病気を治すもの ではない。 |
働き | 体の特定の病気や症状に直接働きか け、対症療法で治療を行う。例えば 血圧降下剤は血圧を下げるために合 成されたもので、血圧を上げること はない。 |
体が持つ回復機能をサポートし、体 の不調を本来の姿に戻すよう整え る。血圧を例にとると、高ければ低 くし低ければ高くするというよう 定に保とうとする性質)に働きか |
成分内容 | 有効成分を化学的に合成してつくら れる。 |
自然界にある天然物から抽出してつ くられる。 |
即効性 | ある | ない |
効果効能・ 用法用量 の表記 |
認定された病気の予防や治療効果が あることを表記することができ る。また用法用量、特に服用時期や 服用間隔について詳細に定められて いる。 |
食品であるため、効果効能を表記す ることはできない。また用法用量に ついても、適当量を一応の目安とし て示すにとどめ、明確に飲む量や回 数、タイミングを指定して表記する ことはできない。 |
用法 | 病気の人が服用するもので、健康体 にとっては害になることもある。ま た医師から処方されたものを自己判 断で止めてしまうのもいけないの で、用法用量を守ることが重要。 |
求める効果を実感するためには、食 事と同じように長く継続していくこ とが大切。一時的に大量に摂取して も体内にプールすることができない ので、少しずつでも毎日摂りつづけ ることが肝心。 |
副作用 | 効き目が強い分、副作用がおこる こともある。 |
食品なので副作用はほとんどない。 ※ただし多量摂取などは副作用が起 きる場合もあります。商品に記載さ れている摂取目安量や使用上の注意 点などは守るようにしましょう。 |
サプリメントと医薬品の併用は注意が必要
サプリメントの成分によっては、医薬品と併用することでその吸収を妨げたり、逆に効果が強くなり過ぎることがあります。例えば血液を固まりにくくし血栓を予防する「ワーファリン」を常用している人が、納豆・青汁・クロレラなどのサプリメントを摂ると、含まれているビタミンKがワーファリンの効果を妨げ、血液が固まりやすくなってしまうので併用は厳禁です。病院で処方された治療薬を飲んでいる人がサプリメントを摂りたいときは、必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
サプリメントの位置づけ
現在の日本では健康づくりに役立つものとして、サプリメント以外にも健康食品、栄養補助食品、健康補助食品などさまざまな名称が使われています。サプリメントの中でも国の認可を受け、効果や機能性の表示が認められているものとそうでないものがあり、紛らわしいという人のために、分かりやすく一覧表にしましたのでご覧ください。
*健康食品とサプリメントの違いとしては、健康食品は「健康の保持増進に役立つ食品全般」の意味に使われ、その中でサプリメントは「特定成分が濃縮された、錠剤やカプセルの形をした製品」を指し、健康食品の一つです。両者に厳密な使い分けはなく、どちらも法的には食品に分類されます。
サプリメント一覧表
一般食品 | *一般的なサプリメント、健康食品はここに分類される。 *効果効能や機能性を謳うことはできない。 |
|
健康補助食品 | ![]() に適するものとして、(財)日本健康・栄養食品協会が推奨 している食品。 *成分や安全性について、同協会の審査と認定が必要。 *基準に適した商品のみ、認定マークの表示が許される。 |
|
特別用途食品 | ![]() 医学・栄養学的な配慮が必要な人を対象に、発育や健康維持 ・回復に適しているという「特別の用途」の表示が許可され た食品。 *消費者庁の審査と消費者庁長官の許可が必要。 *特別用途食品に認められるとマークを表示でき、特定の効果効能・機能性を 謳うことができる。 |
|
保健機能食品 | 特定保健用食品 (トクホ) |
![]() 健康にある一定の作用や効果が認めら れた食品。 *効能や安全性について、食品ごとに 消費者庁の審査と消費者庁長官の許可 が必要。 *「特保」に認められるとトクホマークを表示することが 許され、特定の効果効能・機能性を謳うことがでる。 |
栄養機能食品 | 12種類のビタミンと5種類のミネラルなど、すでに科学的 根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品。 *消費者庁の規格・表示基準を満たしていれば、審査や届 け出は不要。 *栄養成分の表示ができる。(マークはない) |
|
機能性表示 食品 |
平成27年4月から導入された新制度。 特定保健用食品でなくても、食品の含有成分や機能性に関 する科学的根拠を消費者庁に届け出ることにより、機能性 を表示できる食品。 *特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可 を受けたものではない。 *特定の効果効能、機能性を謳うことができる。 |
サプリメントをキチンと理解して健康になろう!
サプリメントは薬ではありません。でも「薬とは違うアプローチから健康づくりに欠かせないものである」ということを理解していただけたでしょうか。大切なのはまず食事。食生活を見直し改善したうえで、自分に不足している栄養素をサプリメントで補い、元気な毎日を送りましょう。