カルシウムとは
カルシウムは人体の中で最も多いミネラルで、全体重の1.5%~2.0%程度を占めます。
体重60kgの人だと約900g~1,200g程度がカルシウムです。そのうちの99%は骨や歯の成分として炭酸塩やリン酸塩として存在しています。
残りの1%は血液中や筋肉,神経に存在しています。骨や歯の構成成分になっているカルシウムを「貯蔵カルシウム」、血中などに存在するカルシウムを「機能カルシウム」と呼びます。
カルシウムは骨や歯の構成要素として身長の伸び・成長にかかわるだけではなく、体の生理機能を調整し心を安定させる働きがあります。
血中に存在する機能カルシウムの働きは筋肉の収縮をコントロールし、こむら返りを予防する,神経伝達物質を放出し興奮や緊張の緩和,血液凝固や高血圧の予防,イライラを鎮める、大腸がんのリスクを下げるなどさまざまな生理作用があります。
2016年12月20日に放送されたテレビ番組「たけしの健康エンターテインメント みんなの家庭の医学」でもカルシウムの持つストレス解消、高血圧予防、大腸がん予防効果が取り上げられ、カルシウムの健康効果が注目されています。
目次
カルシウムを多く含む食べ物
カルシウムを多く含む食品は、牛乳やヨーグルト,チーズなどの乳製品,ワカメ,ひじきなどの海草類,煮干し,鰯の丸干しなどの小魚,ごま,切り干しダイコン,緑黄色野菜などです。
食べ物から摂取したカルシウムの吸収率は25%~50%程度とあまり高くありません。カルシウムは活性型のビタミンDが存在しないと腸から吸収されません。
ビタミンDは紫外線(日光)に当たると体内で作られ、肝臓と腎臓で活性化されます。またカルシウムは炭水化物(ご飯や麺類)と一緒に食べると吸収率がアップします。
牛乳に含まれるカルシウムは吸収率が高いのですが、牛乳には摂りすぎるとカルシウムの吸収を阻害するリンが含まれているので、牛乳だけに頼るのではなく、いろいろな食品,食材をバランスよく食べてカルシウムを摂ることが大切です。
乳製品が苦手だったり、体質に合わない方、食品からの摂取量に自信がない,ダイエット中などの人は、カルシウムサプリメントを利用すると安心です。
カルシウムの効果・効能
骨粗しょう症の予防
カルシウムは全体の99%が骨に、残り1%が血中・筋肉・神経に存在し脳や神経の働きをスムーズにしたり、ホルモン分泌,血液凝固など重要な生理作用に関係しています。この1%のカルシウムを機能カルシウムと呼びます。カルシウムの摂取不足により機能カルシウムが不足すると、生命を守るために副甲状腺ホルモンが働き骨からカルシウムを取り出して血中に放出します。この状態が長く続くと次第に骨がスカスカになる骨粗しょう症になってしまいます。
高血圧の予防
カルシウム不足が続くと、骨を溶かして血中に移動したカルシウムが血管の細胞内に取り入れられ蓄積してしまう「カルシウムパラドックス」が起きてしまいます。蓄積したカルシウムは動脈を硬くしてしまい、高血圧の原因になります。カルシウムパラドックスを避けるためには、カルシウムを必要量しっかりと摂ることが大切です。
イライラを解消する
カルシウムには神経を安定させイライラを解消する効果があります。カルシウムが神経を静める効果は、血中のカルシウムとマグネシウムのバランスが大切です。カルシウムとマグネシウムのバランスは2:1の割合が理想的です。カルシウムと同時にマグネシウムも摂るようにしてバランスを保つ必要があります。
大腸がんの発症リスクを下げる
国立がん研究センターによる研究の結果、カルシウムを多く摂取すると大腸がんのリスクが低下することがわかりました。1日のカルシウムの摂取量が300mg未満のグループに比べ、700mg以上摂取しているグループでは、大腸がんのリスクが40%近く低いそうです。この効果は、男性において確認され、女性では関連が見られませんでした。30歳以上の男性のカルシウム摂取目標量は1日あたり600mgですが、大腸がんのリスクが心配な男性は、1日に700mgの摂取を目指すとよいでしょう。
参照:国立がん研究センター「カルシウム、ビタミンD摂取と大腸がん罹患との関連について」
カルシウムの欠乏症について
カルシウムが不足すると骨を溶かして血中に放出して不足分をカバーするので、骨がスカスカになるまで欠乏症は表面化しません。現代日本人の食生活では潜在的にカルシウムは不足していて、約60%がカルシウム不足の状態です。特に20~30代のカルシウム不足が目立ちます。カルシウムは不足した時に症状としてでるのではなく、何十年か後に骨粗鬆症として表面化するので、若いうちから過不足なく摂る必要があります。
各年齢の所要量を100%とした割合

上のカルシウム充足率の表では100より少ないところがカルシウム不足です。特に20~40代にかけては男女関係なくカルシウム不足が目立ちます。
カルシウムの摂取量と推奨量
厚生労働省が発表したカルシウムの摂取基準は以下のようになります。耐用上限量は18歳以上の成人男女とも1日2,500mgです。日本人ではカルシウムが潜在的に不足している人が多いため、食べ物や食品からの摂取を基本として、足りない場合はカルシウムサプリメントの使用も効果的です。ただし上限量には気をつけてください。サプリメントなどで長期間上限量を超えた摂取を続けると、腎結石のリスクが高まります。
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
年齢等 | 推定 平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
推定 平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 |
0-5(月) | – | – | 200 | – | – | – | 200 | – | 6-11(月) | – | – | 250 | – | – | – | 250 | – |
1-2(歳) | 350 | 450 | – | – | 350 | 400 | – | – |
3-5(歳) | 500 | 600 | – | – | 450 | 550 | – | – |
6-7(歳) | 500 | 600 | – | – | 450 | 550 | – | – |
8-9(歳) | 550 | 650 | – | – | 600 | 750 | – | – |
10-11(歳) | 600 | 700 | – | – | 600 | 750 | – | – |
12-14(歳) | 850 | 1000 | – | – | 700 | 800 | – | – |
15-17(歳) | 650 | 800 | – | – | 550 | 650 | – | – |
18-29(歳) | 650 | 800 | – | 2500 | 550 | 650 | – | 2500 |
30-49(歳) | 550 | 650 | – | 2500 | 550 | 650 | – | 2500 |
50-69(歳) | 600 | 700 | – | 2500 | 550 | 650 | – | 2500 |
70以上(歳) | 600 | 700 | – | 2500 | 500 | 650 | – | 2500 |
妊婦 | – | – | – | – | – | – | – | – |
授乳婦 | – | – | – | – | – | – | – | – |
カルシウムの副作用と過剰症、高カルシウム血症に注意
サプリメントからカルシウムを摂りすぎてしまった場合、血中のカルシウム濃度が高くなりすぎてしまう高カルシウム血症に注意が必要です。特にチアジド系利尿薬とカルシウムサプリでの相互作用が報告されています。
副作用の症状は通常は吐き気,便秘,腹痛,頻尿などの軽い物がほとんどです。しかし、重傷になると意識不明などもあるので薬を服用している場合は注意が必要です。
その他ジギタリス(強心薬)やテトラサイクリン,キノロン(抗生物質)との相互作用があります。
一般的には特に問題となる副作用はありません。上限量を長期間にわたり超えてしまった場合腎結石の発生リスクが高まります。
マグネシウムを同時に摂るとカルシウムの異所性沈着を抑制します。
カルシウムをサプリメントで摂る場合は、カルシウムとマグネシウムの割合が2:1で配合されたサプリメントを選ぶようにしてください。
米国にて高等教育終了後帰国し、食物栄養学部を卒業。大学研究室にて秘書、翻訳を経験後、現在管理栄養士として栄養関連記事の執筆、栄養指導、英日・日英翻訳に従事。
「シンプルな食スタイルで元気になりたい」こんな思いを伝えていきたいと、日々探求しています。