カリウムとは
カリウムは多量ミネラル(※1)に分類されるミネラルの1つです。細胞の浸透圧の調整や、酸とアルカリの平衡維持、筋肉の収縮、神経細胞の刺激伝達に関与しています。
カリウムはナトリウムと相互に働き、過剰に摂取したナトリウムを体外へ排泄する作用があります。
日本人の食生活は、諸外国に比べてナトリウムの摂取量が多いため、カリウムの摂取は重要と考えられています。
カリウムの生理作用・メカニズム
カリウムとナトリウムは互いに協力して働いています。体内に摂り入れたカリウムは小腸で吸収された後、全身の組織に運ばれて細胞内に取り込まれます。カリウムは細胞内液に多く存在し、細胞内液の容量を調整して、体液浸透圧や酸とアルカリ平衡の維持を行っています。
一方、ナトリウムは細胞外液に多く存在し、カリウムと同じように、体液浸透圧や酸とアルカリ平衡の維持を行っています。カリウムとナトリウムは細胞の内外で同じ役割を担い、濃度差を一定に保ち、体の生理機能を調整しています。
カリウムとナトリウムは2対1の割合で保たれ、必要以上のカリウムとナトリウムは腎臓や副腎の働きで汗や尿として排出されます。
カリウムの効果・効能
カリウムの効果・効能は以下です。
- むくみの解消
- 高血圧の予防・改善
- 利尿作用
- 筋肉の弛緩を調整
- 神経細胞の刺激伝達
カリウム不足をセルフチェック
不足はしていないが、多めに摂った方がいい人
- よく汗をかく
- 加工食品やインスタント食品を好んで食べる
カリウムは尿の他に汗としても多く体外へ排泄されます。運動により多量に汗をかいた後は、スポーツ飲料や野菜ジュースなどでミネラル分を補給しておくとよいです。
加工食品やインスタント食品、ファーストフードには食塩が多く使われています。カリウムは摂りすぎた塩分を体外へ排泄し、体内の水分バランスを調整しています。これらの食品を食べる機会が多い場合、カリウムを積極的に摂取しておきましょう。
カリウムがやや不足していると生じる症状(潜在性欠乏症)
- 血圧が高め
- むくみ
カリウムが不足したり、ナトリウムを過剰に摂取したりすると、むくみや高血圧の原因となります。カリウムとナトリウムは2:1の比率で、体内の水分濃度を正常に保っています。このバランスが崩れると、血管内のナトリウム濃度を下げるために水をとりいれ、血液の量が増大します。その結果、血管の壁にかかる圧力が増え、血圧が高くなります。
高血圧とともに血流が悪化すると、血液によって運ばれ、腎臓で尿として排泄されるはずの水分が、血管周辺の細胞に溜まります。血管外部の細胞間にたまった水分が、むくみの症状としてあらわれます。
カリウムが完全に不足していると生じる症状(欠乏症)
現在の日本人の食生活ではカリウムが不足することはあまりありませんが、偏食や栄養失調が長期に続くと、体内のカリウムが欠乏してきます。
- 脱力感
- 食欲不振
だるさを感じやすかったり、食欲がわかない日が長く続いたりする場合は、カリウムを多く含む食材をとるようにしましょう。
おすすめは季節の野菜を多く使った味噌汁です。野菜にはビタミン・ミネラルが豊富にふくまれ、体の調子を整える作用があります。味噌は塩分が多い調味料ですが、野菜に含まれるカリウムが余分なナトリウムの吸収を抑制してくれます。
潜在性欠乏症・欠乏症とは?
潜在性欠乏症とは、慢性的にミネラルが欠乏している状態です。「なんとなく体調が悪い」という症状が続き、この状態が長く続くと、生活習慣病にかかるリスクが高くなります。
欠乏症とは体内のミネラル分が欠乏している状態です。よくおこる症状としては、ヨウ素欠乏による甲状腺腫や鉄欠乏による貧血、カルシウム不足による骨粗鬆症、亜鉛不足による味覚障害、カリウム不足による循環器疾患です。
カリウムの推奨量と摂取量
厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015年版)にて以下の表が公開されています。
年齢 | 推奨量 (男性) |
推奨量 (女性) |
目安量 (男性) |
目安量 (女性) |
上限量 |
12~14歳 | ― | ― | 2,400mg | 2,200mg | ― |
15~17歳 | ― | ― | 2,800mg | 2,100mg | ― |
18~29歳 | ― | ― | 2,500mg | 2,000mg | ― |
30~49歳 | ― | ― | 2,500mg | 2,000mg | ― |
「日本人の食事摂取基準 2015年版」によるとカリウムの推奨量・上限量は定められていません。
通常の食生活では、カリウムの欠乏症や過剰症はおこりませんが、嘔吐、下痢、緩下剤乱用、降圧利尿薬などにより、欠乏することもあります。
カリウムの効果的な摂り方
カリウムを多く含む食べもの
- アボガド 100g(約3/4個)中:720mg
- 鯛 100g(焼魚1切れ)中:510mg
- ほうれん草 100g(お浸し1皿程度)中:490mg
- さわら 65g(焼魚1切れ)中:384mg
- 豆乳 200ml(コップ1杯)中:380mg
- バナナ100g(約1本)中:360mg
- じゃがいも100g(約1個)中:340mg
- 納豆 50g(1パック)中:330mg
- 甘栗 50g(10個程度) 中:280mg
- 焼き芋100g(約1/2本)中:260mg
カリウムは普段の食事で十分に摂取できるミネラルですが、偏食や、野菜不足の日が続くときは、サプリメントや栄養ドリンクを利用しましょう。
カリウムの食品からの吸収率
熱と水に弱く、調理により損失して吸収率が低下しますので、調理法に工夫が必要です。
カリウムをサプリメントで補うには
栄養バランスの整った食事よりカリウムを摂ることが大切ですが、栄養の偏りや野菜不足を感じる時は、サプリメントを利用してカリウムを補給しましょう。商品ごとの用法・用量に従い、過剰摂取には気をつけてください。
効果をアップさせる摂り方
必須ミネラルのため、毎日の食生活で継続的にとっておくことが大切です。
吸収率をアップさせる摂り方
カリウムは熱や水に弱い性質のため、加熱調理により30%近く損失されてしまいます。煮物やスープなど食材と煮汁を一緒に摂れるメニューがおすすめです。
カリウムとあわせて摂りたいビタミン・ミネラル
特にありません。
カリウムの作用を邪魔するビタミン・ミネラル
ミネラルは適量を超えて摂取すると、他のミネラル類の吸収を妨げたり、体外に排出を促したりします。そのため、単一のミネラルだけが過剰になると、体内のミネラルバランスがくずれ、健康を害する恐れがあります。
摂取期間の目安
体の機能を調節する必須ミネラルのため、毎日継続して摂取することが大切です。サプリメントや栄養ドリンクを利用する場合、3ヶ月程継続して摂取し、体調の変化を確認して、増量又は減量するか調整しましょう。
カリウム摂取の注意点
カリウムを摂取する上で、次のことに注意してください。
カリウムの副作用
カリウムの副作用は特に心配はありません。しかし、過剰に摂取すると、腎臓でカリウムが正常に排泄されず、高カリウム血症を引き起こします。
高カリウム血症は血漿カリウム濃度が5.5mEqlを上回る状態です。体内のカリウム濃度があがりすぎると、細胞の働きが低下し、腎不全や四肢の麻痺などを生じることがあります。
カリウムを摂ってはいけない人・注意を要する人
妊娠中や腎臓病、糖尿病など病気療養中の方はカリウムの過剰摂取は注意が必要です。
必ずかかりつけの医師にご相談ください。
一緒に摂ってはいけない成分・食品・薬など
抗アルドステロン薬(カリウム保持性降圧利尿薬)、ACE阻害薬、A2拮抗薬、β-遮断薬、消炎鎮痛薬(NSAID)、シクロスポリン(ネオーラル)、ジゴキシン(ジゴシン)、抗コリン薬などはカリウムとの飲み合わせが悪いため、服用中の方は医師にご相談ください。
カリウムのよくある疑問Q&A
高カリウム血症とは肝臓や腎臓の本来の機能が働かず、カリウムが尿として体外へ排泄されないため、血中のカリウムの濃度があがる症状です。その結果、四肢の麻痺、不整脈、筋力低下など体に悪影響を及ぼすことがあります。
一方、カリウムの濃度が下がる症状が低カリウム血症です。カリウムの摂取量が減ったり、腎臓からのカリウムの排泄が増えたりすると起こります。高血圧、疲労、筋力低下、神経機能の低下などの症状をともなうことがあります。
過剰に摂取すると、腎臓でのカリウムを処理する能力が限界を超えて、血中のカリウムの濃度があがってしまいます。その結果、腎不全や四肢の麻痺などを生じることがあります。
カリウムは利尿作用や血行促進に効果的な成分と一緒にとると、むくみの解消や高血圧の改善に効果的だからだと思われます。探しにくいですが、以下のようなカリウム単体のサプリメントも販売はされています。
- Puritan’s Pride カリウム キレート 99mg
- Natural Factors, Potassium Citrate, 99 mg, 90 Tablets(製造元 Natural Factors)
- Life Enhancement, カリウム・ベーシック、240カプセル(製造元 Life Enhancement)
血液の流れが悪化していることも考えられます。カリウムが多く含まれる食材をとることと、ウォーキングなど軽い全身運動を行い、血液循環を良好にすることも改善策の一つです。むくみが長期に続くときは、何らかの疾患も考えられますので、医師にご相談するようにしてください。むくみの解消方法はこちらの記事で詳しく解説しています。
もっと詳しく:原因別むくみ解消法~顔・足などの浮腫をとるサプリメント・食べ物・マッサージ
過剰摂取は体内のカリウムとナトリウムのバランスがくずれて、むくみの解消にはつながりません。用量を守って、摂取することが大切です。
カリウムは肉類や魚、海藻、野菜、果物などさまざまな食材に含まれています。するめ、鶏ささみ、ひじき、納豆、枝豆、ほうれん草、春菊、パセリなどはカロリー・糖質・脂質の量が少なく、カリウムが豊富に含まれる食材です。こういった食材は、ダイエット中に適していますのでおすすめです。
カリウムのまとめ
カリウムはナトリウムと相互に働き、細胞の浸透圧の維持・酸とアルカリ平衡の維持・神経伝達など体の生理機能を調整している多量ミネラルです。
過剰なナトリウムが腎臓で再吸収されるのを抑制し、尿として排泄する機能があり、むくみの解消や高血圧の予防・改善に利用されています。
普段の食事から摂取しておくことが大切ですが、継続的に摂りにくいときはサプリメントを利用して、補給していきましょう。

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米国にて高等教育終了後帰国し、食物栄養学部を卒業。大学研究室にて秘書、翻訳を経験後、現在管理栄養士として栄養関連記事の執筆、栄養指導、英日・日英翻訳に従事。
「シンプルな食スタイルで元気になりたい」こんな思いを伝えていきたいと、日々探求しています。