ナイアシンとは
ナイアシンは水溶性のビタミンであり、ビタミンB群の一つです。
糖質代謝,脂質代謝,アルコール代謝など、酸化還元反応の補酵素として働きます。ATP産生、抗酸化系、脂肪酸の合成、ステロイドホルモンの生合成などの反応に関与しています。
肉(豚レバー,鶏ささみ),魚(まぐろ,カツオ,サバ)などの動物性食品や米ぬか,乾燥酵母に多く含んでいます。
ナイアシンはビタミンB群の中で最も必要量が多く、ビタミン全種類の中ではビタミンCに次いで多いビタミンです。
不足すると皮膚炎,下痢,精神神経障害などのペラグラを引き起こします。
目次
ナイアシンを多く含む食べもの
ナイアシンは次のような食品に多く含まれています。
- カツオ 1人前 80g:15.2mg
- サバ 1人前 100g :10.4mg
- 豚レバー 1人前80g:11.2mg
- 鶏ささみ 1人前2本:9.4mg
- まいたけ 半パック:4.5mg
- そば 乾燥 1人前80g:2.5mg
- ピーナッツ 15粒:0.2mg
ナイアシンは体内にも多く存在し、通常の食事で不足することはありません。
しかし、慢性的に偏食の方やアルコールの常用者は欠乏することがあります。
サプリメントを活用するときは、一日の用量守り、活用してください。
ナイアシンの生理作用・メカニズム
ナイアシン活性を有する化合物は主にニコチン酸とニコチンアミドの二種類です。
生細胞中のナイアシンはビリジンヌクレオチドとして存在しています。食品中のビリジンヌクレオチドは、動物性食品ではニコチンアミド、植物性食品ではニコチン酸に分解され、小腸から吸収されます。
ニコチン酸は細胞内でニコチンアミドに変換されて、両化合物は同様のビタミン作用を有します。
ニコチン酸とニコチンアミドは酵素反応を受けて、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD),ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)となり、酸化還元反応の補酵素として働きます。
ナイアシンは体内で必須アミノ酸のトリプトファンからも合成されています。
ナイアシンの代謝
ニコチン酸とニコチンアミドが小腸で取り込まれる
↓
酵素反応を受けて補酵素型に変換される
(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD),ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP))
↓
酸化還元反応の補酵素として働く
(解糖系,TCAサイクル,アルコール発酵などのエネルギー生産系)
(光合成,アミノ酸などの生合成)
ナイアシンの効果・効能
ナイアシンには次のような効果・効能があります。
- 脂質代謝の促進
- 皮膚・粘膜の保護作用
- 二日酔いの防止
- 血行促進
ナイアシンが不足すると生じる症状
ナイアシンが不足すると、
- 皮膚炎
- 吐き気
- 下痢
- 不眠
- うつ状態
などの症状があらわれます。
潜在性欠乏症・欠乏症とは?
潜在性欠乏症とは、慢性的にミネラルが欠乏している状態です。
「なんとなく体調が悪い」という症状が続き、この状態が長く続くと、生活習慣病にかかるリスクが高くなります。
欠乏症とは体内のミネラル分が欠乏している状態です。
よくおこる症状としては、ヨウ素欠乏による甲状腺腫や、鉄欠乏による貧血、カルシウム不足による骨粗鬆症,亜鉛不足による味覚障害,カリウム不足による循環器疾患です。
ナイアシンの推奨量と摂取量・上限量
男性のナイアシンの食事摂取基準(mgNE/日)※1
年齢等 | 推定平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量※2 |
---|---|---|---|---|
0~5(月)※3 | – | – | 2 | – |
6~11(月) | – | – | 3 | – |
1~2(歳) | 5 | 5 | – | 60(15) |
3~5(歳) | 6 | 7 | – | 80(20) |
6~7(歳) | 7 | 9 | – | 100(30) |
8~9(歳) | 9 | 11 | – | 150(35) |
10~11(歳) | 11 | 13 | – | 200(45) |
12~14(歳) | 12 | 15 | – | 250(60) |
15~17(歳) | 14 | 16 | – | 300(75) |
18~29(歳) | 13 | 15 | – | 300(80) |
30~49(歳) | 13 | 15 | – | 350(85) |
50~69(歳) | 12 | 14 | – | 350(80) |
70以上(歳) | 11 | 13 | – | 300(75) |
女性のナイアシンの食事摂取基準(mgNE/日)※1
年齢等 | 推定平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量※2 |
---|---|---|---|---|
0~5(月)※3 | – | – | 2 | – |
6~11(月) | – | – | 3 | – |
1~2(歳) | 4 | 5 | – | 60(15) |
3~5(歳) | 6 | 7 | – | 80(20) |
6~7(歳) | 7 | 8 | – | 100(25) |
8~9(歳) | 8 | 10 | – | 150(35) |
10~11(歳) | 10 | 12 | – | 200(45) |
12~14(歳) | 12 | 14 | – | 250(60) |
15~17(歳) | 11 | 13 | – | 250(65) |
18~29(歳) | 9 | 11 | – | 250(65) |
30~49(歳) | 10 | 12 | – | 250(65) |
50~69(歳) | 9 | 11 | – | 250(65) |
70以上(歳) | 8 | 10 | – | 250(60) |
妊婦(付加量) | – | – | – | – |
授乳婦(付加量) | +3 | +3 | – | – |
ナイアシンの効果的な摂り方
ナイアシンの効果をアップさせる摂り方について紹介します。
効果・吸収率をアップさせる摂り方
ナイアシンは熱に強く、調理の過程で壊れにくいため、加熱調理に向いています。
しかし、水に溶けやすく、煮込み調理では煮汁に漏出します。
煮汁ごと食べられる、スープやあんかけなどの調理法がおすすめです。
ナイアシンとあわせて摂りたいビタミン・ミネラル
ナイアシンは三大栄養素(糖質,脂質,タンパク質)の代謝に関与しています。同様の働きがあるビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB6はあわせて摂りたい栄養素です。
- ビタミンB1:糖質代謝の補酵素として働く
- ビタミンB2:三大栄養素の補酵素として働く
- ビタミンB6:タンパク質の代謝の補酵素として働く
ナイアシンの作用を邪魔するビタミン・ミネラル
特にありません。
摂取期間の目安
ビタミンは相乗的に働いています。他のビタミン群が欠けると、ナイアシンの合成も低下するので、継続的に摂っていくことが必要です。
ナイアシン摂取の注意点
ナイアシン摂取の際は次の点にご注意ください。
ナイアシンの副作用
通常の食事では、過剰摂取による健康障害は報告されていません。ニコチン酸の摂取により皮膚が赤くなることがありますが、一過性のもので、健康には有害ではありません。
ナイアシンを摂ってはいけない人・注意を要する人
1型糖尿病に対してニコチンアミド、脂質異常症に対してニコチン酸を多量投与すると消化器系や肝臓に障害が生じる例が報告されています。
一緒に摂ってはいけない成分・食品・薬など
ナイアシンは高脂血症薬の「メバロチン」の副作用を増強する可能性があります。症状として、脱力感,筋肉痛,横紋筋融解症が挙げられています。長期間にわたっての併用はご注意ください。
ナイアシンのよくある疑問Q&A
ナイアシンには名称が多くあり、一般的にはニコチン酸とニコチンアミドの総称を示します。
ビタミンB群は発見された順にB1,B2,B3,B4,・・・と番号がつけられ、全部で8種類あります。
ビタミン名:化学物質名
ビタミンB1:チアミン
ビタミンB2:リボフラビン
ビタミンB3:ナイアシン(ニコチン酸,ニコチンアミド )
ビタミンB6:ピリドキシン
ビタミンB12:シアノコバラミン
ビタミンB4,ビタミンB7,他:現在ではビタミンでないことがわかり、消去。
ナイアシンは3番目に発見され、アメリカではビタミンB3の名前も使われています。日本では化学物質名が一般的に使われています。
ニコチン酸やニコチンアミドの欠乏による症状(ペラグラ)の一つに神経精神障害があります。栄養の欠乏により中枢神経に障害が起こり、倦怠感,不眠,うつ状態があらわれます。進行すると認知機能低下,見当識障害が伴うこともあります。
そのため、ナイアシンは不安の鎮静に役立つと言われています。
アメリカで使われている一般名です。
ナイアシンは狭義ではニコチン酸を示し、広義ではニコチン酸とニコチンアミドの総称を示します。日本では一般にニコチン酸とニコチンアミドの総称をナイアシンと呼んでいます。アメリカでは狭義が多く使用されています。
栄養学の分野ではニコチン酸とニコチンアミドのビタミン作用は似ているため、総称してナイアシンと呼ぶことが一般的です。しかし、生化学的作用や薬理作用は異なるため、専門分野では明確に区別する必要がでています。
ニコチン酸:一般名
二コチンアミド:一般名
ナイアシンアミド:一般名。アメリカで使われる名称。
ニコチン酸アミド:医学関係で使われる名称。
ビタミンB3:ニコチン酸とニコチンアミドの総称。日本では使われず、アメリカでは使われている名称。
ナイアシンのまとめ
ナイアシンはビタミンB群の一つです。糖質代謝,脂質代謝,アルコール代謝など酸化還元反応の補酵素として働きます。ATP産生,抗酸化系,脂肪酸の合成,ステロイドホルモンの生合成などの反応に関与しています。
カツオ,サバ,ブリなどの魚、豚レバー,鶏肉などの動物性食品に多く含まれています。
現代の日本人の食事ではナイアシンは不足することはありませんが、慢性的な偏食やアルコールの常用により欠乏して、ペラグラの症状を引き起こします。
ビタミンは相乗的に働くため、他のビタミンとバランスよく摂取することで、ナイアシンの効能が高まります。
食事の栄養バランスを整え、偏食が続く時や食事が十分に摂れない時は、サプリメントを活用して体調管理に役立ててください。
米国にて高等教育終了後帰国し、食物栄養学部を卒業。大学研究室にて秘書、翻訳を経験後、現在管理栄養士として栄養関連記事の執筆、栄養指導、英日・日英翻訳に従事。
「シンプルな食スタイルで元気になりたい」こんな思いを伝えていきたいと、日々探求しています。