ビタミンB1とは
ビタミンB1は水溶性のビタミンであり、糖質がエネルギーに変わる回路の補酵素として働きます。
豚肉,うなぎの蒲焼,納豆,小麦胚芽,玄米などの食品に多く含んでいます。
米を主食とする日本人は曾てビタミンB1不足で生じる脚気にかかることが多く、ビタミンB1は抗脚気因子として1,900年初めに発見されました。
スポーツ選手や肉体労働によりエネルギー消費量が増える人、糖質を多く摂る人ほどビタミンB1の必要量は増えます。
目次
ビタミンB1を多く含む食べもの
ビタミンB1は次のような食品に多く含まれています。
- 豚肉 もも赤身 100g薄切り3~4枚 :0.96mg
- 豚肉 ロース肉 とんかつ 100g 3/4枚 :0.63mg
- うなぎ蒲焼 100g:0.75mg
- 玄米 180g 1膳:0.28mg
- 胚芽米180g 1膳:0.14mg
- 雑穀米180g 1膳:0.11mg
- そば 200g 1玉:0.10mg
- 木綿豆腐 100g1/3丁:0.07mg
- 納豆 50g1パック:0.04mg
- ごま 炒り 3g 小さじ1:0.01mg
ビタミンB1は水溶性で体内に溜めておくことができないため、毎日補うことが必要です。
食事で十分に摂取できないときや、栄養バランスが偏るときは、サプリメントを活用しましょう。
ビタミンB1の生理作用・メカニズム
ビタミンB1はチアミンと3種類のリン酸化合物(チアミン一リン酸,チアミン二リン酸,チアミン三リン酸)が存在します。
チアミン二リン酸(TDP)は補酵素として働き、チアミン一リン酸(TMP)とチアミン三リン酸(TTP)にはその作用はありません。
ビタミンB1は体内に入ると消化管内のホスファターゼの作用によりチアミンになり、十二指腸から吸収されます。
チアミン二リン酸の機能(TDP):
チアミン二リン酸(TDP)は酵素タンパク質と結合した状態で存在しています。食品の調理、加工の過程と胃酸下で酵素タンパク質が遊離してチアミンとなり、空腸と回腸で吸収されます。
チアミン二リン酸(TDP)は補酵素として働き、糖代謝と分岐アミノ酸代謝に関与します。
チアミン一リン酸の機能(TMP):
チアミン一リン酸(TMP)はチアミン二リン酸(TDP)の生合成中間体、または加水分解物として存在すると考えられています。
チアミン三リン酸(TTP)の生体内での機能はまだ研究段階ですが、神経機能をもつこと、補酵素として働くチアミン二リン酸(TDP)を調整する機能が報告されています。
ビタミンB1の効果・効能
ビタミンB1には次のような効果・効能があります。
- 糖質代謝の促進
- 疲労回復促進
- 自律神経を整える
- 消化液の分泌を促進
ビタミンB1が不足すると生じる症状
ビタミンB1は不足すると、
- 集中力の低下
- 倦怠感
- 睡眠障害
- 自律神経の乱れ
などの症状があらわれます。
重度になると
- ウェルニッケ脳症(※1)
が起きます。
食事の栄養バランスが偏るときはサプリメントを利用してみましょう。
潜在性欠乏症・欠乏症とは?
潜在性欠乏症とは、慢性的にミネラルが欠乏している状態です。
「なんとなく体調が悪い」という症状が続き、この状態が長く続くと、生活習慣病にかかるリスクが高くなります。
欠乏症とは体内のミネラル分が欠乏している状態です。
よくおこる症状としては、ヨウ素欠乏による甲状腺腫や鉄欠乏による貧血、カルシウム不足による骨粗鬆症、亜鉛不足による味覚障害、カリウム不足による循環器疾患です。
ビタミンB1の推奨量と摂取量・上限量
厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015年版)にて以下の表が公開されています。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
年齢等 | 推定 平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 推定 平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 |
0~5(月) | ― | ― | 0.1 | ― | ― | 0.1 |
6~11(月) | ― | ― | 0.2 | ― | ― | 0.2 |
1~2(歳) | 0.4 | 0.5 | ― | 0.4 | 0.5 | ― |
3~5(歳) | 0.6 | 0.7 | ― | 0.6 | 0.7 | ― |
6~7(歳) | 0.7 | 0.8 | ― | 0.7 | 0.8 | ― |
8~9(歳) | 0.8 | 1.0 | ― | 0.8 | 0.9 | ― |
10~11(歳) | 1.0 | 1.2 | ― | 0.9 | 1.1 | ― |
12~14(歳) | 1.2 | 1.4 | ― | 1.1 | 1.3 | ― |
15~17(歳) | 1.3 | 1.5 | ― | 1.0 | 1.2 | ― |
18~29(歳) | 1.2 | 1.4 | ― | 0.9 | 1.1 | ― |
30~49(歳) | 1.2 | 1.4 | ― | 0.9 | 1.1 | ― |
50~69(歳) | 1.1 | 1.3 | ― | 0.9 | 1.0 | ― |
70以上(歳) | 1.0 | 1.2 | ― | 0.8 | 0.9 | ― |
妊婦(付加量) | ― | ― | ― | +0.2 | +0.2 | ― |
授乳婦(付加量) | ― | ― | ― | +0.2 | +0.2 | ― |
過剰症、上限量は設定されていません。
ビタミンB1の効果的な摂り方
ビタミンB1の効果をアップさせる摂り方を紹介します。
効果・吸収率をアップさせる摂り方
ネギ,にんにく,にら,玉ねぎなどの香りの高い野菜に多く含まれるアリシンはビタミンB1の吸収を高めます。
納豆や豆腐に薬味として添えるネギ、豚肉とにらの炒め物など、香味野菜を活用してみてください。
ビタミンB1とあわせて摂りたいビタミン・ミネラル
ビタミンB2・ビタミンB6は三大栄養素(糖質,脂質,タンパク質)の代謝に関与するので、ビタミンB1とあわせて摂りたい栄養素です。
ビタミンB2:糖質,脂質,アミノ酸の代謝を促進
ビタミンB6:アミノ酸の代謝を促進
・ビタミンB2の効果と効能 脂質代謝の促進,皮膚・粘膜の保護作用,成長ホルモンの合成,生活習慣病の予防
・ビタミンB6の効果と効能 アミノ酸代謝,神経伝達物質の合成,ホルモン作用の調整,肌荒れ予防
ビタミンB1の作用を邪魔するビタミン・ミネラル
特にありません。
摂取期間の目安
ビタミンB1は水溶性ビタミンのため体に溜めておくことができません。継続的に摂っていくことが必要です。
ビタミンB1摂取の注意点
ビタミンB1摂取の際は次の点にご注意ください。
ビタミンB1の副作用
ビタミンB1は水溶性のため、過剰に取りすぎた分は、尿として排泄されます。
通常の食事では、過剰摂取による健康障害が起こることはありません。
ビタミンB1を摂ってはいけない人・注意を要する人
特にありません。
一緒に摂ってはいけない成分・食品・薬など
特にありません。
ビタミンB1のよくある疑問Q&A
ビタミンB1は神経伝達に関与しています。脳は主な栄養を糖質から確保し、ビタミンB1は糖質の代謝を助けています。糖質が不足すると、脳に栄養が十分に供給されず、自律神経が乱れて気分の落ち込み、うつ、睡眠障害などを引き起こしやすくなります。
ビタミンB1の摂取量を増やすおすすめの摂り方は、主食の選び方を工夫することです。
白米を玄米,胚芽米,雑穀米,麦飯などに変える。
白ご飯 | 0.04mg |
---|---|
玄米 | 0.28mg |
胚芽米 | 0.14mg |
雑穀米 | 0.11mg |
麦飯 | 0.06mg |
パンは胚芽,ライ麦,全粒粉などが入っている種類を選ぶ。
フランスパン 2切れ 50g | 0.04mg |
---|---|
胚芽入りパン 1個 60g | 0.16mg |
ライ麦入りパン 1切れ 100g | 0.16mg |
全粒粉入りパン 1個 50g | 0.12mg |
麺類はパスタ,蕎麦などを摂る。
うどん 1玉(ゆで 200g) | 0.04mg |
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パスタ 1人前(乾燥80g) | 0.15mg |
蕎麦1玉(ゆで 200g) | 0.10mg |
ビタミンB1は糖質の代謝を助けています。TCA回路(エネルギー産生の回路)の回転が促進されると、エネルギー産生が効率よく行われ、体に疲れがたまりにくくなります。
食事は運動の2時間ほど前に済ませておくとよいです。
雑穀入りおにぎり,納豆巻き,胚芽パン,そば, ココア,豆乳,抹茶,などの食品を選ぶと良いでしょう。
ビタミンは他の栄養素と相乗的に働き、体内での様々な代謝機能は円滑に行われます。ビタミン,ミネラルを複合しているサプリメントをベースとした上で、ビタミンB1不足による症状が続くときは、単体の成分に絞ったサプリメントを加えてみましょう。
ビタミンB1のまとめ
ビタミンB1は水溶性のビタミンであり、糖質代謝に関与しています。
脳は糖質から主にエネルギーを確保しているため、ビタミンB1が不足すると、糖質のエネルギー代謝の効率が低下し、集中力や判断力の鈍り,疲労感などを招き、ひどくなると手足のしびれやむくみ,動悸などの症状があらわれます。
ビタミンは他の栄養素と相乗的に働いて機能を発揮するので、栄養バランスの良い食事を摂ることが大切です。
食事で十分摂れない時は、サプリメントを利用して体調管理に役立ててください。
米国にて高等教育終了後帰国し、食物栄養学部を卒業。大学研究室にて秘書、翻訳を経験後、現在管理栄養士として栄養関連記事の執筆、栄養指導、英日・日英翻訳に従事。
「シンプルな食スタイルで元気になりたい」こんな思いを伝えていきたいと、日々探求しています。