ビタミンB6とは
ビタミンB6はビタミンB群の一つであり、アミノ酸の分解や合成・神経伝達物質の合成・皮膚や粘膜の健康維持に関与します。
酸に対しては安定していますが、中性・アルカリ性に対しては不安定な性質をあらわし、光により分解されます。
ビタミンB6はカツオ・マグロ・鶏・バナナ・アボガド・玄米などの食品から摂取できます。
動物性食品に多く含み、植物食品に含まれるビタミンB6は体内での利用効率が低下します。
ビタミンB6 はアミノ酸代謝での補酵素として働き、不足すると皮膚炎や湿疹、貧血を引きおこす要因となります。
目次
ビタミンB6を多く含む食べもの
ビタミンB6は次のような食品に多く含まれています。
- ミナミマグロ(生50g):0.54mg
- カツオ(生50g):0.38mg
- 鶏ひき肉(生50g):0.34mg
- 鶏ささ身(生40g):0.33mg
- 卵(1個 約60g):0.60mg
- アボガド(1個 250g):0.80mg
- さつまいも(1本 200g):0.70mg
- バナナ(1本150g):0.57mg
- 玄米ご飯(1膳150g):0.27mg
- にんにく(生 10g):0.15mg
ビタミンB6は食品中に比較的、多く含まれているので、通常の食事で適量に摂取できます。
腸内細菌からも生成されるため、欠乏することはあまりありません。
偏食や外食が続いて、栄養バランスがくずれるときは、サプリメントや栄養ドリンクを活用して効率よく摂取しましょう。
ビタミンB6の生理作用・メカニズム
ビタミンB6の活性を有する化合物にはピリドキシン(PN),ピリドキサール(PL),ピリドキサミン(PM)があります。
酸に対して安定し、中性、アルカリ性に対しては弱い性質です。
生細胞中のビタミンB6はリン酸化体であるピリドキサール5’-リン酸(PLP)やピリドキサミン5’-リン酸(PMP)として存在します。
消化の段階でPLP、PMPは消化管内酵素のホスファターゼにより加水分解され、ピリドキサール(PL)、ピリドキサミン(PM)となった後、小腸で吸収されます。
植物の生細胞中にはピリドキシン5’β-グルコシド(PNG)が存在し、消化管内で加水分解を受けたのち、ピリドキシン(PN)となり、小腸から吸収されます。
PNGの相対生体利用率は50%程度に低下します。
体内に吸収されると再びリン酸化され、血中ではアルブミンと結合して、PLP-アルブミンの形で存在します。
ビタミンB6の代謝は肝臓で活発に行われ、ピリドキシン(PN)・ピリドキサール(PL)・ピリドキサミン(PM)の間で転換が行われています。
生体内濃度はほぼ一定に保たれ、過剰分は尿中へ排泄されます。
ビタミンB6の効果・効能
ビタミンB6には次のような効果・効能があります。
- アミノ酸の代謝
- 神経伝達物質の合成
- ホルモン作用の調整
- 動脈硬化の予防
- 脂肪肝の予防
- 肌荒れ予防
ビタミンB6が不足すると生じる症状
ビタミンB6は不足すると、次のような症状を生じます。
- 皮膚炎
- 舌炎
- 口角症
- リンパ球減少症
成人ではさらに、
- うつ
- 痙攣発作
などの症状があらわれます。
潜在性欠乏症・欠乏症とは?
潜在性欠乏症とは、慢性的にミネラルが欠乏している状態です。
「なんとなく体調が悪い」という症状が続き、この状態が長く続くと、生活習慣病にかかるリスクが高くなります。
欠乏症とは体内のミネラル分が欠乏している状態です。
よくおこる症状としては、ヨウ素欠乏による甲状腺腫や鉄欠乏による貧血、カルシウム不足による骨粗鬆症、亜鉛不足による味覚障害、カリウム不足による循環器疾患です。
ビタミンB6の推奨量と摂取量,上限量
厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015年版)にて以下の表が公開されています。
ビタミンB6の食事摂取基準(mg/日) ※1
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
年齢等 | 推定 平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 ※2 |
推定 平均 必要量 |
推奨量 | 目安量 | 耐容 上限量 ※2 |
0~5(月) | – | – | 0.2 | – | – | – | 0.2 | – |
6~11(月) | – | – | 0.3 | – | – | – | 0.3 | – |
1~2(歳) | 0.4 | 0.5 | – | 10 | 0.4 | 0.5 | – | 10 |
3~5(歳) | 0.5 | 0.6 | – | 15 | 0.5 | 0.6 | – | 15 |
6~7(歳) | 0.7 | 0.8 | – | 20 | 0.6 | 0.7 | – | 20 |
8~9(歳) | 0.8 | 0.9 | – | 25 | 0.8 | 0.9 | – | 25 |
10~11(歳) | 1.0 | 1.2 | – | 30 | 1.0 | 1.2 | – | 30 |
12~14(歳) | 1.2 | 1.4 | – | 40 | 1.1 | 1.3 | – | 40 |
15~17(歳) | 1.2 | 1.5 | – | 50 | 1.1 | 1.3 | – | 45 |
18~29(歳) | 1.2 | 1.4 | – | 55 | 1.0 | 1.2 | – | 45 |
30~49(歳) | 1.2 | 1.4 | – | 60 | 1.0 | 1.2 | – | 45 |
50~69(歳) | 1.2 | 1.4 | – | 55 | 1.0 | 1.2 | – | 45 |
70以上(歳) | 1.2 | 1.4 | – | 50 | 1.0 | 1.2 | – | 40 |
妊婦(付加量) | – | – | – | – | +0.2 | +0.2 | – | – |
授乳婦(付加量) | – | – | – | – | +0.3 | +0.3 | – | – |
※2 食事性ビタミンB6の量ではなく、ピリドキシンとしての量である。
ビタミンB6の効果的な摂り方
ビタミンB6の効果をアップさせる摂り方を紹介します。
効果・吸収率をアップさせる摂り方
ビタミンB群は相互に関わりあっていますので、B群が含まれる食材と合わせて摂ると、吸収率を上げます。
また、ビタミンB6は水溶性のため、加工、調理の際、煮汁に溶け出します。
スープや煮物など出し汁ごと食べられる調理法が良いです。
ビタミンB6とあわせて摂りたいビタミン・ミネラル
ビタミンB6と似た作用をもつビタミンB2・ビタミンB12・葉酸はあわせて摂りたい栄養素です。
- ビタミンB2:糖質,脂質,アミノ酸の代謝に関与。ビタミンB6が補酵素に変換するときに必要。
- ビタミンB12:アミノ酸代謝に関与。中枢神経の機能維持。造血作用。
- 葉酸:アミノ酸代謝に関与。造血作用。
ビタミンB6の作用を邪魔するビタミン・ミネラル
特にありません。
摂取期間の目安
食品のため継続的に摂取することが必要です。
ビタミンB6摂取の注意点
ビタミンB6の摂取の際は次の点にご注意ください。
ビタミンB6の副作用
通常の食事により過剰に摂取した場合は、尿に排泄されるため、過剰症による健康障害はありません。
サプリメントや栄養ドリンクなどを併用して摂りすぎた場合、腎臓結石や感覚神経障害を引き起こす要因となります。
ビタミンB6は耐容上限量が設定されていますので、1日の摂取量には注意してください。
ビタミンB6を積極的に摂取した方がよい人
経口避妊薬や抗生物質を長期服用している方、妊婦の方はビタミンB6が不足しやすくなるので、積極的な摂取を心がけましょう。
一緒に摂ってはいけない成分,食品,薬など
結核の治療薬(イソニコチン酸ヒドラジオ)や抗生物質はビタミンB6と拮抗するため、長期間併用する場合は、ご注意ください。
アルコールの分解産物のアセトアルデヒドはピリドキサール5’-リン酸(PLP)の脱リン酸を促進するため、多量に飲酒するとビタミンB6代謝に影響を与えます。
ビタミンB6のよくある疑問Q&A
ビタミンB6はアミノ酸の分解や合成、神経伝達物質の合成に関与します。神経伝達物質はアミノ酸から作られ、GABA,セロトニン,ドーパミン,アドレナリン,ノルアドレナリンなどが挙げられます。これらは自律神経を整え、精神のバランスをとることに効果的とされています。
栄養素は他の栄養素と相乗的に働く中で、体内での代謝機能が円滑に行われています。サプリメントを摂る際は、マルチビタミン・ミネラルをベースにし、体調に合わせてビタミンB群のサプリメントを加えてみましょう。ビタミンB群は水溶性であり、過剰に摂取した場合、体内で必要量のみ利用されて、不用分は尿として排泄されます。摂りすぎても健康に有害ではありませんが、無駄になりますので、1日の用量を守り、摂取しましょう。
ビタミンB群のサプリメント
エネルギー消費の多い人,疲労やストレスがとれない人,肌のトラブルに困っている人
マルチビタミン・ミネラルのサプリメント
食事全体の栄養バランスが崩れやすい人,野菜不足の人,加工食品・インスタント食品を多く摂る人,飲酒量が多い人
現在、悪阻とビタミンB6の関係はまだ明確にされていません。妊娠期には胎盤や胎児の成長に、体タンパク質の蓄積が必要となり、タンパク質の必要量が増します。ビタミンB6はアミノ酸の代謝に関与し、タンパク質の摂取量が増えると、ビタミンB6の必要量も増えます。
ビタミンB6のまとめ
ビタミンB6はビタミンB群の一つであり、アミノ酸の分解や合成,神経伝達物質の合成,皮膚や粘膜の健康維持に関与します。
アミノ酸代謝での補酵素として働き、タンパク質の摂取量が多い人ほど、ビタミンB6の必要量が増えます。
ビタミンB6は肉・魚など動物性食品、豆類,野菜,穀物など植物性食品の両方に含まれますが、体内での利用効率は動物性食品の方が適しています。
不足すると皮膚炎や湿疹、貧血を引きおこす要因となり、また精神バランスを崩すこともあります。
ビタミンは他の栄養素と相乗的に働いて、その効果、効能が発揮されます。
食事の栄養バランスが偏る時は、サプリメントを補助として利用し、健康づくりに役立ててください。
米国にて高等教育終了後帰国し、食物栄養学部を卒業。大学研究室にて秘書、翻訳を経験後、現在管理栄養士として栄養関連記事の執筆、栄養指導、英日・日英翻訳に従事。
「シンプルな食スタイルで元気になりたい」こんな思いを伝えていきたいと、日々探求しています。